ミニ・レビュー
正体は謎に包まれながら、実は誰もがみんな知っている、某ピアニストにそっくりなH ZETT Mのセカンド・アルバム。一筋縄ではいかない展開を持つナンバーがたっぷり、ポップの掌の上で、ジャズ、ロック、サンバ、現代音楽などをちりばめた唯一無二のサウンド。
ガイドコメント
ピアノでロックンロールを奏でるH ZETT Mの2ndアルバム。メロディアスなアッパー・チューンや、しっとりしたデュエット、メタルやジャズなどの要素を交えた作品など、多彩なサウンドを茶目っ気たっぷりのピアノの音色で表現している。
収録曲
01SLOW DAYS
CARIBAと平田智美のトリオ編成によるアルバム『PIANOHEAD』のオープニング。美しいアコースティック・ピアノの4つ打ちのイントロから始まるが、本編は倍のテンポで、ドラムはさらに倍のテンポで進むオルタネイティヴ・ナンバー。
02ID CHECK (feat.DJ Mass)
DJ MASSをフィーチャリング、スクラッチを大胆に投入したミディアム・8ビート・チューン。まるで歌っているかのようなスクラッチとH ZETT Mのアコースティック・ピアノのトラックに、ラップやセリフが乗る異色のジャジィなヒップホップ・トラック。
03ダイキライ (feat.HIRO:N)
80年代ディスコ風のダンス・トラックをHIRO:Nとデュエットで歌う。意図的にサウンドを増幅させたり、ディスコらしからぬ音を使用したりと、一筋縄ではいかないフレンチ・ハウス風ダンス・ミュージックになっている。
04ワルツ
ピアノ・ソロによるインストゥルメンタル・ナンバー。ワルツとはいってもスウィングしていて、ジャズ・ワルツのような雰囲気。イントロでは緊張感の漂うサウンドが垣間見られるが、全体的にやわらかいタッチのメロディだ。
05夕陽
6/8のリズムを持ったセンチメンタルなナンバー。リズム・ボックスのようなチープなビートをバックに、歌伴奏に徹したアコースティック・ピアノが静かに響く。間奏ではジャジィな雰囲気のソロで、また別の世界のよう。
06顔をつかまえる
ピアノ・ロックともいえる激しいピアノとCARIBAの歪みまくったギターによる激しいナンバー。ヴァース・パートはラップというよりもしゃべりで、ピアノ同様に激しく畳み掛けてくる。独特のヴォーカルも唯一無二。
07ニュースのじかん
H ZETT Mが一人で作り上げたオルタネイティヴなインストゥルメンタル。スケール・アウトしたピアノのメロディ、コラージュされたニュースの音声、ハイテンションで叩きまくるドラムスに、壮大なストリングス……。まるで別次元にいるようだ。
08脳天気犯値
イントロのリズム・ボックスのようなビートから一転、ストレートなロックンロールへとチェンジ。2つのコードのみのシンプルなロックンロールだ。“てんカスのうてんきパンち”のリフレインがクセになる、一筋縄ではいかない“脳天気”さが魅力。
09チョコレイトイズマイライフ
ピアノとディストーション・ギターをフィーチャーした8ビート・ロックから、後半にはピアノ8分打ちのミディアム・バラードへと大展開。ラストは倍速テンポでのジャズへと変貌。“完璧茄子 ごぼう……”の奇怪な詞が踊る、変態的なナンバーだ。
10BUSTER
H ZETT Mが一人で作り上げたオルタネイティヴ・ナンバー。4/4ながらシンコペーションの位置が微妙で、変拍子のようにも聴こえるトリッキーなリズムだ。リズムはほぼループしており意外にもシンプルな構成だが、先が読めない構成は彼ならではだ。
11Theme of PIANOHEAD
ラウンジ・スタイルのムードたっぷりのピアノから一転、高速サンバに。中間部には拍子のマジックがあり、気分はエルメート・パスコアル。ストリングスも加わり、アルバム『PIANOHEAD』のエンディングを飾るにふさわしいゴージャスな内容だ。