ミニ・レビュー
2年半ぶりのオリジナル・アルバムは、メジャー・ファースト・アルバム。“東京”をテーマに13のさまざまなエピソードの物語を描く。2本のギターによる計算されたアレンジによるサウンドは、キーボードレスでありながらもカラフルでオリジナリティたっぷり。
ガイドコメント
椿屋四重奏の3rdオリジナル・アルバム。前作から約2年半ぶりとなるが、その間に培われたであろう音の進化が力強く作品に表われている。重厚かつ濃厚に深化を遂げたサウンドが広がる。
収録曲
01OUT OF THE WORLD
SEのようなキーボードの導入から激しいパワー・コードでスタートする、アルバム『TOKYO CITY RHAPSODY』のオープニング・チューン。2本のギターが混沌と絡み合い、日本語にすると差別用語になってしまいそうな鋭いメッセージを投げかける。
02トーキョー・イミテーション
サウンドが左右に行き交う、ディレイをかけたストレンジなギターが浮遊する8ビート・ナンバー。ソロも含め、シンコペーションを大胆に導入したフレーズがおもしろい。アルバム『TOKYO CITY RHAPSODY』のメイン・テーマ“東京”を写実的に描いている。
03恋わずらい
ゲストのYANCYのピアノを大胆にフィーチャーしたミディアム・シャッフル・チューン。独特のバウンスを見せるギターとリズム隊。そして出るところは出て、押さえるところは押さえる歌伴奏のお手本のような鍵盤。これぞ理想の演奏だ。
04I SHADOW
激しいキメのリフからスタートする16ビート・ナンバー。シングル・ノートのギター、隙間たっぷりのベース・ライン。いわばこれは椿屋四重奏流ブラック・ミュージック。決して跳ねず無機質に16ビートを刻むドラムスがユニーク。
05LOVE 2 HATE
16ビートのハイハットと休符を交互に出す意表をつくイントロをはじめとして、アレンジの練り具合がすごい。8ビートのミディアム・チューンながら、跳ね具合は「I SHADOW」以上にファンクネス。愛の冷たさ、厳しさを哀しげに歌う。
06マイ・レボリューション
パンキッシュなイントロでありながらも、シングル・ノートのリフをバックにしたヴァースが斬新。ほかの部分はパンクに通じそうなストレートで激しさを感じるサウンド。シンプルなアレンジゆえにメッセージが伝わりやすい。
07playroom
アコギとエレキの2本が自然に絡み合い、70年代のフォーク・ロックのような、激しくもあり温かくもある独特なサウンドを醸し出している。シンプルながら泣きを感じさせるギター・ソロは、安高拓郎のセンスのたまもの。
08パニック
ドラムスをバックにSEのようなサイケデリックなイントロ、そしてベースとギターのユニゾンによるダークなリフレイン。スタイルはもろに70年代初期のハード・ロックながらも、中田裕二のクールなヴォーカルがそれを感じさせない。
09moonlight
ピアノやシンセをフィーチャーしたアレンジが『TOKYO CITY RHAPSODY』の中では異色のサウンドを漂わせている。タイトルどおり、月明かりの下で歌っているかのようなクールでナイーヴな雰囲気が漂うナンバーだ。
10LOVER
静かなエレキ・ギターのアルペジオから一転、オープン・コードによる激しいロック・サウンドへと展開。静と動を上手く活かしたアレンジを持つミディアム・8ビート・ナンバーだ。恋人への切ない思いを感情たっぷりに歌っている。
11ランブル
2本のギターにより1つのサウンドを生み出す、練り込まれたアレンジによるロックンロール・ナンバー。2ndヴァースでの意表を突いた展開は独特で、彼らのサウンド・ワークの類まれなセンスが光っている。
12ジャーニー
大きなノリを持ったミディアム・8ビート・ナンバー。2拍4拍ではないドラムスやアルペジオとオープン・コードのアンサンブルによるサウンドで、椿屋四重奏流の独特のサウンドを生み出している。弦を指で引っ掛けたプリングを多様したソロもスムース。
13不時着
ギターの4つ打ちに近いスタイルを持ったミディアム・バラード。アルバム『TOKYO CITY RHAPSODY』のクロージングにふさわしい壮大なイメージを持っており、4人の見事なアンサンブルでオリジナリティたっぷりのギター・サウンドを生み出している。