ミニ・レビュー
2007年末に出た5枚目のアルバムを70万枚も売ったバンドの初編集盤。内容はメジャー・デビュー以降に発表された11枚のシングル・カップリング曲をまとめたものだが、B面集とは思えない質の高いメロディの楽曲に、このバンドの力量をあらためて思い知らされる。
ガイドコメント
バンド初のシングル・カップリング集。メジャー・デビュー以降に発表された11枚のシングルにカップリング収録されていた楽曲を総ざらい。文学的な詞世界に胸を打つギター・サウンド……彼らの魅力が凝縮された隠れた名曲が満載だ。
収録曲
01ラフ・メイカー
部屋に閉じこもり泣きじゃくる主人公のところに、男が笑顔をもって訪ねてくる。4つ打ちドラムと澄んだアルペジオが見守る中、物語とリンクし沸き起こるバンド・エモーショナル。熱っぽい藤原の声も曲にジャスト。
02バイバイサンキュー
出世作となったシングル「天体観測」のカップリング曲。穏やかなビートに覆われたヴァースと一気に音圧を増すサビとの対比が鮮やかなミドル・チューンで、“ひとりきりでも大丈夫”と歌い上げるか細くも果敢なヴォーカルが胸を打つ。
03彼女と星の椅子
ベーシスト・直井が17歳の時に書いた英語詞の曲を、藤原と直井がリメイクしたロック・ナンバー。少年らしいまっすぐな視点と、瑞々しい感受性を迸らせてキラキラ瞬くサビが印象的な隠れた名曲。
04ホリデイ
ずっとまどろんでいたい……。朝の気だるさを夢うつつに歌った、ほのぼのとしたミドル・ナンバー。のんびりしたストロークやハンドクラップの間に、日常のささやかなひとこまを捉えて曲にしてしまう感性がキラリと光る。
05Ever lasting lie (Acoustic Version)
アルバム『THE LIVING DEAD』収録曲のアコースティック・ヴァージョン。夢を貫くことの大切さと儚さの狭間で揺れる胸中を、アコギによる穏やかで温かいサウンドに乗せて歌い上げている。藤原らしい文学性に富んだ詞が見事な仕上がりだ。
06睡眠時間
就寝前のひと時を描いた、子守唄風のやさしいナンバー。なかなか寝付けない時の焦燥感を綴ったヴォーカルと穏やかなアコギの音色が、心地良いノスタルジーを生み出している。シングル「オンリー ロンリー グローリー」にカップリング収録。
07夢の飼い主
“一度持った夢を大切にしてほしい”というメッセージが込められた、爽やかなミドル・チューン。“夢”をペットとして擬人化した、いかにも藤原らしいユニークなリリックが魅力だ。シングル「車輪の唄」のカップリング曲。
08スノースマイル (ringing version)
アルバム『ユグドラシル』収録曲にストリングスやベルなどを加え、クリスマス風にアレンジ。恋人とともに過ごした冬の情景をみずみずしく描いたバラードで、ドラマティックな展開とエモーショナルなヴォーカルが感動を誘う。
09銀河鉄道
シングル「プラネタリウム」にカップリング収録されたスロー・ナンバー。電車に乗った登場人物を介して、“孤独な人生の旅路”を描いたセンシティヴな歌詞と囁くようなヴォーカルの相性が抜群。曲に大きな説得力を与えている。
10真っ赤な空を見ただろうか
“夕焼け空”を巡る思いを綴った童謡のような歌詞が疾走するロックンロール・チューン。優しげなヴォーカルがノスタルジーをかきたてる一方で、サウンドは元気そのもの。特に間奏部分のギターは、一聴の価値アリのゴキゲンさだ。
11東京賛歌
上京後に忘れてしまった夢の行方を情感豊かに描きつつ、夢を取り返すことを促した応援歌風の一曲。フォーキーなサウンドに、珍しい藤原のハーモニカ演奏がよく映えている。シングル「花の名」にカップリング収録された。
12ガラスのブルース (28 years round)
アルバム『FLAME VEIN』収録曲のアコースティック・ヴァージョン。シンプルなアレンジゆえに、“1秒も無駄にしちゃいけないよ”と強く生きていく決意を高らかに歌い上げたヴォーカルの魅力がよりダイレクトに伝えられている。
13プレゼント
アルバム『THE LIVING DEAD』の「Opening」「Ending」両曲の元となっているナンバー。孤独に苛まれながら、自分の作った壁の中でもがく主人公に、“このままだっていいんだよ”“大丈夫”とやさしく語りかけるヴォーカルが印象的だ。