ミニ・レビュー
スキマスイッチのヴォーカルのファースト・ソロ・アルバム。ソロ・プロジェクトのバックを務めるバンド名をタイトルにした。「はじまりの歌」に象徴されるように、生演奏を基調にして歌を生かした勢いとポップ感のある曲が並ぶ。ジャズやフォークの要素も採り入れた渾身の一枚。
ガイドコメント
「はじまりの歌」の別ヴァージョンや「SKY」などのシングル曲を含む、大橋卓弥の1stソロ・アルバム。第一線で活躍するミュージシャンによって構成されたDrunk Monkeysとともに、ポップなバンド・サウンドを繰り広げている。
収録曲
01はじまりの歌 (additional ver.)
颯爽と駆け抜けていくメロディと大橋のハイトーン・ヴォイスが交錯する、珠玉のポップ・チューン。軽やかなピアノの旋律とソフトなスキャットがキャッチーに響き、ときめきがいっぱいだ。ユーキャン2008キャンペーン・ソング。
02塊
小気味良いカントリー・タッチのサウンドが印象的なポップ・ナンバーだが、明るい曲調とは裏腹に歌詞は非常にシリアス。自分自身の存在意義を問う内容に、聴いているこちらまで思わず背筋が伸びてしまう。
03Magic Gril
平凡な日常に現れた愛しい女性の存在をひまわりに例えた心温まるラヴ・ソング。キラキラと輝くようなサウンドが2人の明るい未来を予感させ、大橋の飾らない歌声からは主人公の一途な想いが伝わってくる。
04ブルース
不気味なベースの音で幕を開けるスロー・ナンバー。アルバム『Drunk Monkeys』の中ではかなり異色のナンバーだが、ヴォーカリストとしての凄みが出るのはこういった曲か。極端に歌詞を崩した歌唱法は、桑田佳祐や桜井和寿のそれを彷彿とさせる。
05SKY
飛び込み競技にかける少年たちの青春を描いた映画『ダイブ!!』の主題歌。自分の可能性を解き放って広い世界へ飛び出していく、そんな10代ならではの瑞々しい感情を歌った疾走感あふれるナンバーだ。
06記憶
リリカルなピアノを中心とした演奏に乗せ、破局を迎えた彼女への想いを歌うバラード。別れを受け入れようとしながらもつい後悔や未練を口にしてしまう主人公の姿が実に切ない。DRUNK MONKEYSによる慈愛に満ちたコーラスも涙を誘う。
07冷たい世界
遅く目を覚ました昼下がり、怠惰な時間にふと自分の存在に想いを巡らす。そんな歌詞の世界観とスキマを生かした演奏が絶妙にマッチしているミディアム・ポップ・ナンバー。女々しい歌詞を優しく包み込むような、柔らかなサウンドが心地いい。
08帰り道
2本のアコースティック・ギターをバックに歌われるミディアム・ポップ・ナンバー。恋人と手をつないで歩く並木道。そんな幸せいっぱいの風景が目に浮かび、思わず顔がほころんでしまう。過度な装飾を排したようなシンプルな歌詞も印象的だ。
09恋愛マスター
恋愛に臆病になってしまった自分に、「あたって砕けろ!」と発破をかけるダンサブルなナンバー。意中の人への告白をためらっている人はもちろん、さまざまな人生の壁に直面している人にとっても格好のカンフル剤となりそうな一曲だ。
10Spiral
軽快にドライヴするエレキ・ギターのイントロがかっこいい、疾走感に満ちたナンバー。恋人のことを想いながらもどこか不安を隠せない主人公の葛藤が、歌詞の端々から伝わってくる。切なさと苛立ちが同居したような、大橋のヴォーカルも素晴らしい。
11ありがとう
今まで苦労をかけてきた親への感謝の気持ちを歌ったミディアム・バラード。夢を追って故郷を後にした日、親に対してつらく当たった日……。ひとつひとつの思い出を手紙のように綴った、素直な歌詞が深い感動を呼ぶ。NHK土曜ドラマ『刑事の現場』主題歌。
12温かい世界
アルバム『Drunk Monkeys』の中で、「冷たい世界」と対をなすミディアム・バラード。「冷たい世界」が怠惰でどこか虚無的な雰囲気を漂わせていたのに対し、こちらは部屋のソファで恋人と愛し合う幸せなひとときを描いている。