ミニ・レビュー
沖縄発のロック・バンド、ORANGE RANGE。楽曲の瞬発力は5枚目になってもまったく衰えていない。一枚通してポップでスウィートな作品ではないため、爆発的なセールスは望めないかもしれないが、このやんちゃなごった煮サウンドは実は彼らの真骨頂。
ガイドコメント
約1年7ヵ月ぶりとなるアルバムは、「イカSUMMER」「イケナイ太陽」「O2」など4作のシングル曲を含む充実の一枚だ。アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュR2』のエンディング・テーマとして知られる「シアワセネイロ」も楽しめる。
収録曲
01Beat it
マイケル・ジャクソンの同名曲とは真逆のベクトルの、レンジ得意の変態的な展開が特色のアッパー・ロック。言いたいことは“さぁ、みんなで踊ろうぜ”ということだけだが、シンプルなフレーズとサウンドゆえに説得力がある。
02イケナイ太陽
17thシングルは、フジテレビ系ドラマ『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』オープニング曲。熱いパッションと背中合わせの下心や、若くて青い衝動などをサラリと歌った歌謡曲風ギター・ロックで、この暑苦しさが最高の真夏のナンバーだ。
03世界ワールドウチナーンチュ紀行〜シーミー編〜
彼らの出身である沖縄の方言を採り入れた“ウチナー”ロック。沖縄の県民性が垣間見られるような詞とミクスチャー・サウンドの融合が新鮮。ちなみに、詞にある“先祖にウートートーさ”は“先祖に祈りましょう”の意味。
04君 station
フジテレビ系ドラマ『ロス:タイム:ライフ』主題歌となった18thシングル。戸惑いながらも未来という終わりなき旅へと向かう若者の心持ちを真摯に歌う。懸命にやればきっと何かが起こるという希望を持たせてくれる曲だ。
05ソイソースVSペチュニアロックス feat.ORANGE RANGE
ポップ・ロックで幕を開け、スタジアム・ロック風の中盤から爽やかなポップへと展開する、変態的な進行が特色のナンバー。掴みどころのない脱力系の詞と歌唱にあっけに取られる間に終わってしまうが、それも彼らの魅力だ。
06Sunny Stripe
TBS系プロ野球中継『ザ・プロ野球』テーマ・ソングとなったミクスチャー・ロック・ナンバー。タイアップにリンクしたスポーツの爽快さと清々しさが感じられるサウンドと、詞や歯切れの良いヴォーカルが心地よく響く。
07現実逃避
ヴァイオリンの明朗な音色が現実逃避した世界へと導いてくれるミディアム・チューン。童謡「おもちゃのチャチャチャ」のオレンジレンジ版といったような詞世界が展開され、つい微笑んでしまうようなコミカルさが楽しい。
08シアワセネイロ
みんなへの感謝の気持ちを綴った青春ソング。照りのあるホーンをフィーチャーしたイントロが、良き思い出の回想を紐解く端緒となるような効果的なアクセントとなっている。NTTコミュニケーションズ「MUSICO」CM曲。
095
冒頭で“1+2+3+4”と気の抜けたヴォーカルを披露した後は、ハードなサウンドの上を沖縄的な悠久なメロディが流れるといったごった煮ナンバー。その後も関西弁のセリフやレゲエ調ヘヴィ・ロックなど、めまぐるしく展開していく。
10O2
TBS系アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュR2』オープニング・テーマとなる19thシングル。YAMATOがリード・ヴォーカルを務めるスピード感ある王道ロック・ナンバーで、守るべき相手のために戦い続ける姿を歌っている。
11イカSUMMER
十八番の打ち込み&ブラス・ホーン・アレンジを凝らした、疾走感あふれる夏限定“キラメキ”ポップ・チューン。トゥーマッチなリリックとなんでもアリなお騒がせサウンドは、いかにも彼ららしい。カネボウ化粧品「ALLIE」CMソング。
12太陽と向日葵、周りなんか気にせずに…夏。
タイトルに哀愁を感じさせるも、そこは彼らのこと。チープなガールズ・コーラスとウキウキ感が炸裂した、ノリノリな青春ラヴリィ・チューンとなっている。奇をてらっていないサマー・ロック・サウンドに好感。
13冬美
陰鬱としたムードで展開していく昭和歌謡風ミディアム・ロック。寂しさと悲哀が募る切なく辛い心境を冬の厳しい寒さになぞらえた詞が興味深い。タイトルも含め、真面目なのか狙っているのかも謎の、微妙なさじ加減がたまらない。
14ドレミファShip
軽快に弾けるビートが心地よい、パンキッシュなタテノリ・ナンバー。クヨクヨと悩んでいるよりとにかく前へ走り続けようぜと、逆境に打ち克つためのメッセージをストレートに伝えている。爽快な聴後感がグッド。
15Happy Birthday Yeah!Yeah!Wow!Wow!
オレンジレンジ流のジョイフルなハッピー・バースデイ・ソング。ゴージャズに飾るブラス・サウンドが大きな役割を果たしているが、クライマックスへ向けてヴォルテージを上げていくサビのメロディの良さも光る。