ガイドコメント
デビュー10周年を記念した企画アルバム。シングルのカップリング曲をはじめ、アルバム未収録のナンバーが集められた一枚だ。シングルA面曲にしても遜色の無いようなハイクオリティな楽曲が並んでいる。
収録曲
[Disc 1]
01すべりだい
デビュー・シングル「幸福論」のカップリング・チューン。マイナー調のメロディにのったヴォーカルは、ウェット感を持ちながらもフットワークのある身軽さを擁している。擦れた女性心理を描いた詞が独特の世界観を醸し出している。
02アンコンディショナル・ラブ
2ndシングル「歌舞伎町の女王」に収録されているシンディ・ローパーのカヴァー。ギミックのない、いつになくピュアに歌い上げているヴォーカルが新鮮。金原千恵子グループの生命感あふれるストリングスが、サウンドに力と光を掲げている。
03リモートコントローラー
イントロのハープシコードとドラムの性急さや低温の不穏なシンセが中世ヨーロッパの古城の佇まいを見せたかと思えば、昭和歌謡風なアプローチを展開。官能的な純文学を音で表わしたかのような目まぐるしいストーリー性ある楽曲は、彼女の真骨頂。
04眩暈
大ヒット・シングル「ここでキスして」のカップリング曲で、アルバム未収録ながらファンの人気が高い隠れた名曲。浮遊感のあるスローなメロディと、思いっきり切ないヴォーカルが聴き手のハートを直撃する。
05輪廻ハイライト
ウッド・ベース、ピアノ、ドラムそれぞれが自由にスウィングする、アダルトな雰囲気を醸し出しているジャジィなナンバー。ヴォーカルもいつもの毒気より妖艶さを強調し、上質な大人の空間を演出。英語風の日本語詞にも注目だ。
06あおぞら
陰湿さと毒々しさをさらりと言い切ってしまう彼女の特徴的な楽曲とは真逆の、のどけさを感じるミディアム・チューン。フリューゲルホルンが明るさと陽気さをもたらし、温かく包むようなヴォーカルは清々しささえ感じる。
07時が暴走する
デビュー・シングル「幸福論」がマキシ・シングルとして再リリース時に追加収録されたナンバー。雨音の効果音から美しくも切ないピアノが鳴らされるイントロ、憂鬱さがたち込め、それを振り払うようにうねる巻き舌調のヴォーカルが何とも痛々しい。
08Σ
5thシングル「ギブス」に収録のデジタル・ロック・チューン。全篇英詞で、シンセプログラミングを大胆にフィーチャー。サウンドは無機質的なロックだが、微かに人間臭さが垣間見られるヴォーカルとのバランスが絶妙だ。
09東京の女
沢田研二作曲、ザ・ピーナッツのカヴァー。GS風とも昭和歌謡ともいえるメロディ・ラインをそつなく歌いこなすヴォーカルは、あの手この手で奇を衒っているようで、実は日本人にしっくりくる旧き懐かしい歌謡に根ざしているのが分かる。
1017
シングル「罪と罰」のカップリング曲。高校生レベルのブロークンな英語歌詞でありながら、少しも陳腐に感じないのは彼女の放つ凄みのあるオーラというかカリスマというか、豪腕によるところが大きい。
11君ノ瞳ニ恋シテル
シングル「罪と罰」のカップリング曲で、ボーイズタウン・ギャングやシーナ・イーストンらのカヴァーで知られる名曲中の名曲を、林檎流に轟音ロックで味付け。従来のカヴァーとは違って、どことなく退廃的な雰囲気が漂う。
[Disc 2]
01メロウ
変則的な8cmシングル3枚組「絶頂集」に収録された、椎名林檎らしさが全開の退廃的ロック・ナンバー。キャッチーなサビが耳に残る楽曲で、ファンの間でも人気が高い。テルミンを使用したメロディにも注目。
02不幸自慢
尖ったギター・サウンドが走るヘヴィ・ロック・チューン。不幸自慢を「fuck off “g” men」と言ったり、「ファックオフ 死ね」などの詞が出たりと、かなり挑発的な楽曲が最後まで展開している。
03喪@CエNコ瑠ヲュWァ
「喪 興瑠怒(仮)」(=So Cold)を文字化けさせたタイトルがユニーク。疾走感あふれるギター・リフが傍若無人に暴れまわり、ビジュアル系サウンドを思わせるかのような、クールでエッジの効いたロックを展開している。
04愛妻家の朝食
シングル「真夜中は純潔」のカップリング曲。オシャレな曲調と笑える歌詞が面白い、遊び心にあふれた一曲。ちなみに歌詞の冒頭に登場するお昼のテレビ番組は『おもいっきりテレビ』が元ネタ、とのこと。
05シドと白昼夢
1stアルバム『無罪モラトリアム』収録曲。自らをジャニス・イアンと思い込むような、一風変わった白昼夢を抱く女性を歌い上げている。少女のような歌声がサビの部分で豹変する、狂気を孕んだヴォーカルに圧倒される。
06意識〜戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱〜
シングル「茎(STEM)〜大名遊ビ編〜」に収録された、笛やオルゴールの音色が懐かしさを感じさせる不思議な楽曲。子供じみたわがままな感情を自ら恥じる生々しい歌詞が胸に突き刺さる、林檎流自虐ソング。
07迷彩〜戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱〜
シングル「茎(STEM)〜大名遊ビ編〜」より。アンニュイかつポップという相容れないスタイルをバランス良く保つ不思議な楽曲。危ういヴァイオリンの音色が、レトロな雰囲気を増幅させている。
08la salle de bain
09カリソメ乙女 (HITOKUCHIZAKA ver.)
椎名林檎×斎藤ネコ+椎名純平名義で発表されたシングル「この世の限り」にカップリング収録されたインスト曲。斎藤ネコと太田恵資が織りなすヴァイオリンの響きが、情熱的かつ哀愁漂う世界を作り上げている。ギターは鬼怒無月が担当。
10錯乱 (ONKIO ver.)
ラテンやジャズの流れを汲んだ音に熱いパーカッションが響きわたるアッパー・チューン。英詞ヴォーカルがコブシの効いたジャジィなメロディの中に熱く横溢する。錯乱という表題どおり、うねり絡みつくような歌声が印象的だ。
11映日紅の花
お腹の中の我が子に対する複雑な想いを情緒豊かに綴ったナンバー。透き通るようなギターのアルペジオに乗せた、瑞々しくセンチメンタルなヴォーカルが胸に突き刺さる。ライヴDVD『賣笑エクスタシー』のボーナスCDに収録。