ミニ・レビュー
6年半のサウンド遍歴が詰まった楽曲を、これからの方向性を掲示した華麗な「Do Me More」とキラー・チューン「Sexy Girl」で挟み込む構成は意義深い。当時は冒険と受け取れた音楽とダンスを切り分けぬストイックな楽曲たちが、しっかり本作品に続く一本の軌跡になっていることにいまさら驚く。★
ガイドコメント
約6年ぶりのベスト・アルバム。2002年のシングル「Wishing On The Same Star」から、60、70、80年代のヒット曲をリメイクした各ナンバー、NHKドラマ『乙女のパンチ』主題歌など、全17曲を収録。
収録曲
01Do Me More
4作目のベスト盤『BEST FICTION』に新録の、Nao'ymt制作のクラブ・ミッド。『ヘンゼルとグレーテル』風のおとぎ話をモチーフに、妖しげな誘惑と欲望を歌う。ファンタジーとセクシーのギャップを絶妙に操るのは、安室ならではの芸当だ。
02Wishing On The Same Star
映画『命』主題歌となったミディアム・スロー・バラード。一つに結ばれたいと星空へ願う、ドラマティックな展開が魅力。美麗なポップスを数多く手掛けてきたダイアン・ウォーレンの才知がうかがえる、端整でドリーミーな一曲。
03shine more
ポール・タイラーら海外制作陣によるナッシュヴィル録音曲。レコード針のノイズ音やノスタルジックなストリングスといったレトロな雰囲気が全編を覆う、欧州の香りが漂うミディアムR&B。過去の愛に決別して、輝く未来へ進む意志の強さがうかがえる。
04Put'Em Up
ダラス・オースティン制作の刺激的なダンス・チューンで、ミチコが日本語詞を担当。“プルマッ”と聴こえるフックには可愛らしさもみえるが、浮気な男に対し「覚悟しなさいよ」と啖呵を切る女の怖さを歌っている。安室の鬼気迫るようなヴォーカルにも注目。
05So Crazy
恋に目覚めて止められない情熱を歌った、フル・フォース&ジェニファー“JJ”ジョンソンによるヒップホップ・ソウル調ミッド。織りなすコーラスの掛け合いと中盤でのクールなラップ・パートが、恋への高揚と自制心のせめぎあいを絶妙に描写している。
06ALARM
冷徹で重厚なボトムの上での一刻の狂いもないストイックな展開が、かえって刺激的に響くコンテンポラリーR&B。セクシーなディーヴァへと変身し、“今だけを確実に生きてく”という揺るぎない信念をクールに歌う。制作はMONK。
07ALL FOR YOU
フジテレビ系ドラマ『君が想い出になる前に』主題歌となったオーセンティックなラヴ・バラード。松本良喜によるぬくもりある旋律と安堵を感じる安室の歌唱が、心を和らげる。ソウルフルな展開をみせるブリッジが、楽曲に深みをもたらせている。
08GIRL TALK
T・クラ&ミチコによる、タイトルどおりのガールズ・トーク賛歌。男には解かりづらい女同士の友情を微笑ましく描く。サウンドの装飾も過不足なく、気ままなおしゃべりを模した自然体の歌唱が映えるミディアムR&Bだ。
09WANT ME、WANT ME
インパクトの強いバングラ・ビートが特色の、SUGI-V制作のバウンシーなアップ。ミチコが作詞と制作で参加し、安室のセクシーでミステリアスな部分を引き出すのに一役買っている。無機質なビートと官能的な民族調との融合が見事なメイク・ラヴ・ソング。
10White Light
30thシングルとなったNao'ymt制作のクリスマス・ソング。空から舞い降りる雪が手のなかで溶けるような、ぬくもりのある歌唱に心がほだされる。中盤で「ジングルベル」のメロディを彩るなど、恋人同士の聖夜にぴったりのミディアム・バラードだ。
11CAN'T SLEEP、CAN'T EAT、I'M SICK
高らかに笑うようなホーンをアクセントにした、T・クラ&ミチコ得意のにぎやかなファンキー・アップ。バック・ヴォーカルのサム・ソルターとミチコにはやし立てられながら、安室が恋に落ちて何も手に着かない女心を好演。
12Baby Don't Cry
代表曲のなかでも一際輝きを放つミッド。昔の恋人の隣の存在に気づき、ネガティヴな自分を励ますという詞だが、“Baby don't cry”のコーラスはリスナーにも勇気と安堵を与えてくれる。フジテレビ系ドラマ『ヒミツの花園』主題歌。
13FUNKY TOWN
「新リプトン リモーネ」CM曲となった、ミチコ、WarnerらT・クラ一派がそろったファンキー・チューン。全編に敷かれたクラップ・ビートの上で、コミカルな効果音を駆使して騒がしいパーティ・ナイトを演出。いかにもアメリカンなアウトロも粋だ。
14NEW LOOK
スプリームスの「ベイビー・ラヴ」(1964年)をT・クラ&ミチコがリメイク。60年代のレトロな香りとそれを古臭くさせないキャッチーなアレンジによって、いっそうファッショナブルでカラフルな曲に昇華。流行に敏感な乙女心をキュートに描いている。
15ROCK STEADY
MUROが斬新なアイディアでダンス・チューンに仕立てた、アレサ・フランクリンの同名曲(1971年)のリメイク。アレサの力強さを残しながら、安室のクール・ビューティな側面を強調している。ミチコが手掛けた詞のテーマは、ズバリ“駆け落ち”。
16WHAT A FEELING
アイリーン・キャラの映画『フラッシュダンス』主題歌(1983年)をリメイク。大沢伸一らしいボトムの厚いディープ・ハウス風クラブ・チューンとなった。ブリッジでケイデンス(軍隊訓練歌)を用いるなどアイディアも豊富。ミチコの詞との相性も抜群だ。
17Sexy Girl
NHKドラマ『乙女のパンチ』主題歌として主演・山崎静代(南海キャンディーズ)への応援も込めた書き下ろし曲。よくある応援歌とは印象を異にした、シンセ音がリードするエレクトロなクラブ調R&B。自分らしさを出していこう! と語る歌唱もホット。