ミニ・レビュー
1年1ヵ月ぶりのサード・アルバムは、彼ららしいストレートなロック満載の全14曲。シンプルな8ビートのシングル曲で幕を開け、最新シングル曲「スピードとナイフ」など、気持ちのいいほど真っ直ぐなロックを展開。初回盤のDVDには“ここでしか観られない”貴重なライヴ映像を収録。
ガイドコメント
甲本ヒロト、真島昌利率いるザ・クロマニヨンズの通算3枚目となるフル・アルバム。「エイトビート」「スピードとナイフ」などを収めた、鋭くパワフルな楽曲が並んでいる。
収録曲
01エイトビート
同名の4thシングル曲の別テイクとなる、アルバム『ファイヤーエイジ』のオープニング・ナンバー。ハーモニカをフィーチャーした朗らかなサウンドに、“生きること”を高らかに歌い上げる清々しいヴォーカルが映えている。
02ゴーゴーゴー
エッジの効いたリズム・ギターや疾走感あるギター・ソロなど、真島昌利の爽快なプレイが精彩を放つ8ビート・チューン。“明日はなくても 今はあるだろう”など、タイトルどおりのポジティヴな歌詞が気分を高揚させてくれる。
03ぼうふら
怪しげなベース・ラインに先導される、ストレートなパンク・チューン。所詮嫌われ者の蚊にしか成長できない“ぼうふら”の惨めな存在に自分自身を投影しているかのような歌詞には、吐き出し口のない怒りが感じられる。
04独房暮らし
甲本ヒロト作詞・作曲による、疾走感あふれるロックンロール・チューン。含みを持たせた歌詞は、部屋に独りきりで引きこもっている状態を喩えた“独房暮らし”の中で、他者と接することの必然と恐怖に葛藤する心模様が描かれているようにも。
05自転車リンリンリン
バイトを終えて自転車で家に帰るという日常風景を、緊張感あふれるサウンドで包み込んだロック・チューン。“家賃10円になればいいのになあ”などのユニークな詞の間に、若者が持つ焦燥感が巧みに表現されている。
06ニャオニャオニャー
ノラネコたちによる会議を描写したユニークなミドル・ナンバー。“何をしようか、どうしようか”ととりとめもなく悩み、アルバイトの採用面接に落ちてしまうという猫たちの描写は、現代の若者たちに対する憤りにも感じられる。
07海はいい
南国のリゾートを思わせる、のどかなリズムが特徴的なスロー・テンポのナンバー。一語一語を噛み締めるような甲本ヒロトのヴォーカルは哀愁を帯びていて、それを助長するブルースハープの寂しげな音色とともに心に染み込んでいく。
08スピードとナイフ
キャッチーなベース・ラインが特徴的な、アルバム『ファイヤーエイジ』からの2ndシングル曲。“変わってしまったことへの感慨”を描いたセンチメンタルな詞を、朗らかなヴォーカルで聴かせるというギャップが面白い。
09ナントカドン
“怪獣になってすべてを破壊してしまいたい”という、恋にも夢にも破れた主人公の悲痛な想いが歌われる哀愁のロックンロール・ナンバー。真島昌利の叙情的なギター・プレイが作品のテーマをより深く刻み込んでいる。
10太陽さん
ポジティヴなオーラにあふれた、ミドル・ロック・チューン。あらゆるものを温かく包む太陽への感謝を綴った、壮大でもあり身近にも感じられる歌詞のユニークさが彼ららしい。あくまで爽快感をたたえたコーラス・ワークも印象的だ。
11まーだーまーだー
ビニール傘に描かれた、象やライオンなどアフリカに棲む動物のイラストを題材にしたミドル・テンポのロック・ナンバー。“ないよりも あればまだ 捨てられるのに”などの意味深長な言葉の真意を探っていくのも面白い。
12化石とミイラ
明るいメロディ・ラインと楽しそうなコーラスが印象的な、スロー・テンポのロック・ナンバー。“化石とミイラ こわれもの”“隕石が降っている 星がつもります”など、甲本ヒロトらしい観念的な詞作に惹きつけられる。
13ジェームス・ディーン
“人類はわりと最低だけど 人類はてんで最高なんだぜ”と歌われるサビが高揚感を与えるシンプルなロックンロール・チューン。緩急をつけた切れ味の鋭い演奏が、彼らのバンドとしての実力を最大限に伝えている。
14ドロドロ
ミステリアスでおどろおどろしいリフが印象的な、3rdアルバム『ファイヤーエイジ』のクロージング・ナンバー。“ドロドロ”という意味のない歌詞がテンポ良く何度も繰り返されると、だんだんと心地良くなれるから不思議だ。