ミニ・レビュー
2004年に横浜で結成の4人組のセカンド・フル。ミッシェル・ガン・エレファント以降の日本のロックが根にありそうだが、ゴス、ブラック・メタル、サイコビリー、メタルコアの要素も感じさせ、メッセージ性高い詞を歌う甘いヴォーカルとの絡みは面白い。
ガイドコメント
着実に人気を上げている9mm Parabellum Bulletの2ndアルバム。チャットモンチーのプロデュースやSuperfly「愛を込めて花束を」の歌詞提供などで知られる、いしわたり淳治が前作に引き続きプロデュースを担当している。
収録曲
01Wanderland
「Supernova」との両A面として発表された2枚目のシングル。日本テレビ系アニメ『RD 潜脳調査室』のオープニング・テーマのための書き下ろし曲で、スピードに乗った3拍子のリズムに乗せ、歴史に縛られた世界からの解放を独特のセンスで綴っている。
02Vampiregirl
インパクトのあるギターの掛け合いで始まるキャッチーな歌謡ロック。気だるそうにつぶやくセリフ・パートから一気に爆発するサビが気持ちいい。日本テレビ系ドラマ『妄想姉妹〜文學という名のもとに〜』主題歌。
03Trigger
攻撃的でありながらどこかセンチメンタルな詞とドラムの激しさが際立つロック・ナンバー。メロディアスなサビからマシンガンで打ち抜かれるように激しいギターとスネアの応酬へと、メリハリのある展開をみせている。
04Keyword
菅原と滝のハーモニーから始まるストレートなロック・チューン。間奏の速弾きや後半のトレモロでは、ギター・テクニックの高さがうかがえる。疾走感あふれるメロディに恋愛の駆け引きを歌った詞がきれいにまとまった、キャッチーな曲に仕上がっている。
05Hide&Seek
BPM280という規格外の速さで一心不乱に弾きまくり、突っ走る一曲。ハイテンションで駆け抜ける中、ベースの中村のシャウトが響きわたる。サウンドの激しさが際立っているが、“かくれんぼ”の真意を深読みしてみたくなる詞にも注目。
06The Revenge of Surf Queen
リズミカルで自然と体が揺れてしまう、夏の雰囲気が漂う彼ら初のインスト曲。ベンチャーズからインスパイアされたといわれるだけあって、ギターの“テケテケ”が多用されるなど、どこか懐かしさを感じさせるサウンドが広がっている。
07Supernova
「Wanderland」との両A面として発表された2枚目のシングル。へヴィな作風ながらもあえて軽い音作りをしたというツイン・リードのギター・リフが印象的。壮大な宇宙を背景にした歌謡風の情緒が垣間見られる詞も魅力的だ。
08Faust
彼らにしては珍しい、5分超のナンバー。ポップだが重めのサウンドに美しいハーモニーが絡んだ、じっくりと聴かせる一曲。“変わらないよ”という諦観と“歩き続ける”だけという信念を綴った詞には、混迷の時代に生きる彼らの心情を表わしているようだ。
09悪いクスリ
ユルいリズムに乗った菅原の歌声が心地よく響くナンバー。“まわる まわる まわり続ける”という詞のとおりに、現実世界からトリップしてしまいそうな感覚に陥る、ダサかっこいいポップなメロディに酔える一曲。
10We are Innocent
“トムとジェリー”を彷彿とさせる、哲学的だが分かりやすいという詞世界が魅力。アナログ録音によって荒々しさを強調させ、独特の歌謡曲的な“9mmサウンド”を炸裂させている。アルバム『VAMPIRE』の中でも1、2を争うスピードで駆け抜ける、とにかく激しい曲。
11次の駅まで
マンネリ化した恋人たちの心情を綴った、メロウなミディアム・ナンバー。全体的にアンニュイな雰囲気で作られているが、ラストのサビでのコーラスが絶妙で、鬱屈した空気が一気に晴れやかになるような聴後感が素晴らしい。
12Living Dying Message
裏打ちのハイハットとギターのカッティングが小気味よくリズムを刻む、9mm得意の歌謡ロック・ナンバー。中村の爽快なシャウトで幕を下ろす、アルバム『VAMPIRE』のラストにふさわしい一曲。メッセージ性の高い詞がストレートに心に響く。