ミニ・レビュー
オリジナル・アルバム6作目。表題曲はじめ新曲は3曲のみで、さまざまなTV番組や映画、そしてCMソングになった曲が詰まっている。それは人気の証でもあるが、自身出演もしたドラマ『風のガーデン』の、歌の深みを聴かせた主題歌の静かにして強い輝きは特別だ。
ガイドコメント
平原綾香の2008年12月発表のアルバム。TVドラマ『風のガーデン』や映画『マリと子犬の物語』といった話題作の主題歌などを収めた豪華な一枚で、彼女の伸びやかなヴォーカルをたっぷりと味わえる。
収録曲
01Path of Independence
通算6枚目のアルバム『パス・オブ・インディペンデンス』のオープニングを飾る、アコースティック・カラーのバラード。キーボードの音色でゆったりと幕を開け、やがてストリングスやアコギ、エレキ、ベースが清らかなポップスを紡いでいく。aikaがバック・コーラスを担当。
02ノクターン
ショパンのピアノ曲「ノクターン第20番」をモチーフにしたリード・トラック。万感の想いを込めて愛を歌う平原の歌声を引き立てるため、アレンジが立ち過ぎないように仕上げられている。フジテレビ開局50周年記念ドラマ『風のガーデン』主題歌。
03星つむぎの歌
スペースシャトル“エンデバー号”に搭乗した土井隆雄飛行士に贈られたスロー・ナンバー。JAXAによるプロジェクト“宇宙連詩”の一貫として制作され、財津和夫が作曲を担当。宇宙空間を描くようなシンセの音色と悠久の時の流れを刻むかのように鳴るコンガが印象的。
04孤独の向こう
孤独を知ったからこそ揺るぎなく歩いていくのだと歌うミディアム・ナンバー。素朴なコードを選びながらも耳なじみの良いメロディ・ラインを持つ楽曲は、シンガー・ソングライターの川江美奈子によるもの。口ずさむうちに優しい気持ちになれそう。
05空に涙を返したら
ヴィブラフォン、グロッケン、ハモンドオルガン、チェンバロなどの多彩な音色を盛り込んだ、表情豊かな曲。泣いて過ごした昨夜が過ぎて、前向きになれた朝の瞬間を切り取ったマーチだ。雨上がりの澄んだ空を映したような、清々しい空気をまとっている。
06さよなら私の夏
ノスタルジーを感じさせる歌謡曲風な切り口の詞と、平原のフラットなアプローチによるヴォーカルのマッチングが新鮮なミディアム・ナンバー。リヴァーブを排除したマットなサウンドで、もったりとさせずに夏の恋を描写することに成功している。
07今・ここ・私
冬を舞台にした、“今の私”を見据える清い雰囲気のミッド・ナンバー。ギターを中心としたバンド・サウンドの動きは控えめだが、ヴォーカルはアップ・ダウンが激しい構成に。音域が広い平原の歌唱力を活かした技巧的な曲だ。
08朱音 あかね
NHK『日本巡礼〜心に響く100の場所〜』テーマ曲で、谷村新司による作詞曲のバラード。演歌調の節回しやラウンジ調のピアノ・アレンジなどが効いた奥深いサウンドをバックに、“朱音(あかね)”色の夕日のもとで吐露される女心が綴られていく。
09天使の梯子
どこか無理していた自分を脱ぎ捨てて、夢に向かって自由に生きようという解放ソング。アコギのストロークやエレキのカッティングに加え、楽しげなタンバリンが心地良いリズムを刻むことで、平原の伸びのある歌声も推進力を増している。
10一番星
諦めきれない夢を信じさせてくれた、大切だった人への想いを告白する壮大なアレンジのナンバー。息の長いストリングスによる伸びやかさとシンセサイザーの小刻みなサウンドによる爽快感が、うまい具合に一体化している。ヴォーカルのエフェクトも効果的。
11今、風の中で
感動の実話を基にした映画『マリと子犬の物語』の主題歌となった、平原自身の作詞と久石譲作曲による優しいバラード。幼い兄妹が愛しい子犬へ語りかけるようなピュアな歌詞が、壮大なストリングスや瑞々しいピアノのサウンドに乗せて綴られている。
12雨のささやき
平原の歌声の繊細さを活かした、宮川彬良作曲によるマイナー調バラード。ピアノ、ストリングス、アコギなどにプラスされたオーボエの音色が、切なさや孤独感と雨の湿り気までもを感じさせる。日本テレビ開局55周年記念特番『女たちの中国』テーマ曲。
13カンパニュラの恋 (Acoustic Version)
ショパンのピアノ曲をモチーフにした「ノクターン」の日本語歌詞版。フジテレビ系ドラマ『風のガーデン』の劇中歌として使用されたアコースティック・ヴァージョンで、同ドラマに出演も果たした平原が去り逝く最愛の人への想いを歌い上げている。
14To be free
アルバム『パス・オブ・インディペンデンス』のラスト・トラック。“夢をつかむために、思いのまま羽ばたこう”という壮大なバラードで、ストリングスとピアノが主体のサウンドに平原の伸びやかなヴォーカルが響きわたる。今剛によるエレキの音色も輝かしい。