ミニ・レビュー
前作から1年4ヵ月ぶりとなるサード・アルバムは、既発シングル「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」「染まるよ」「風吹けば恋」「Last Love Letter」をちりばめ、圧倒的なクオリティを誇るバンド・アンサンブルの魅力を中心に聴かす会心作。阿波踊りのビートを取り入れるなど、リズムがより多彩になっているのも自信と余裕の表われだろう。
ガイドコメント
女性3人組ロック・バンド、チャットモンチーの3rdアルバム。3人がヴォーカルを務める曲や阿波踊りのビートを取り入れた曲など、独特の遊び心にあふれた一枚となっている。
収録曲
018cmのピンヒール
過去の切ない恋愛を歌ったミディアム・ナンバー。“あなた”と歩幅を合わせるために“8cmのピンヒール”で歩く健気な想いや二人のすれ違う想いが綴られている。耳になじみやすい爽やかで軽やかなメロディに橋本の柔らかい歌声がよくマッチしている。
02ヒラヒラヒラク秘密ノ扉 (Album Mix)
映画『ガチボーイ』の主題歌となった7thシングル。テンポよく刻まれるリズミカルなドラムに弾むような橋本絵莉子の歌声が乗せられていく。狭い空間から一気に外へ飛びだしたような明るさを持つサビが清々しい。
03海から出た魚
東京事変のベーシストとして知られる亀田誠治のプロデュースによるメロディックなナンバー。イントロのドラムや間奏のギターが憂いを感じさせるが、繊細な橋本絵莉子の歌声とメランコリックな詞にはどこか強さが見える。
04染まるよ
日本テレビ系ドラマ『トンスラ』の主題歌となった9thシングル。自分よりも煙草が好きな彼と別れた彼女が、振ってしまったけど嫌われたくない、忘れないでいてほしいという苦しい胸の内を歌う。ゆったりとした温かくもノスタルジックなバラード。
05CAT WALK
弱さと強さを併せ持つ歌詞が魅力の一曲。ノスタルジックにはじまるも、子猫がテクテクと歩く様子を思い浮かべてしまうような可愛らしいメロディへと展開していく。後半にいくにつれて感情のこもる歌声は、生きる意味を必死に探しているようだ。
06余談
亀田誠治をプロデューサーに迎えた、心地よいメロディのナンバー。平凡な日々のなかでもちょっとしたことに楽しみを見つけられるという前向きな歌詞が、素朴で軽やかなリズムで流れるサウンドとよくあっている。
07ハイビスカスは冬に咲く
軽やかなテンポで進むが、途中で変則的なリズムになる不思議なナンバー。ころころと変わるリズムに対応していく高橋のドラミングのセンスのよさには脱帽。タイトルには“冬”がついているが、春のような明るさと温かさを持ったメロディが気持ちよい。
08あいまいな感情
静かなメロディと力の抜けた柔らかい歌声が印象的なスロー・ナンバー。“I my me mine”と“あいまい”をかけた詞と浮遊感のあるサウンドとコーラスとによって、曖昧な感情と記憶とを絶妙に描写している。
09長い目で見て
元スーパーカーのいしわたり淳治がプロデュースを手掛けたミディアム・ナンバー。高橋の明るい声、福岡の凛々しい声、橋本のキュートな声と、それぞれのヴォーカルが楽しめる。“長い目で見て”とタイトルを繰り返し歌うフレーズが耳に残る。
10LOVE is SOUP
フィンガー・スナップとコーラスが印象的な、温かく陽気なナンバー。甘く柔らかい橋本絵莉子の歌声がポップな詞をよりキュートにしている。終盤に阿波踊りのリズムを取り入れているのも特徴的だ。
11風吹けば恋
堀北真希が出演した資生堂「SEA BREEZE」のCMソングに起用された8thシングル。風を切って走る姿が目に浮かぶような爽やかなメロディが、気分を高めてくれる。夏を感じさせるアッパー・チューンだ。
12Last Love Letter (Album Ver.)
ベースの福岡が詞を手掛けた10thシングル。悩みや辛さを表わすような低くうなるベースとそれを切り裂くようなギターが映えるイントロが印象深い。沈んだ気持ちを励ますようなサビの詞が、人と人との繋がりの大切さや未来の希望を感じさせてくれる。
13やさしさ
イントロの不思議なサウンドが心地よいミディアム・スロー・ナンバー。“やさしさ”とは何かを考えさせられると同時に、ダメな自分を励ましてくれるような歌詞が心に響く。淡々と歌う橋本の声が次第に熱を帯びていくのが印象的だ。