ミニ・レビュー
2008年の大ブレイク後の初アルバムとなる本作は、その技量をいかんなく発揮した作品に仕上がっている。愛をテーマに、ポップ、ソウル、ジャズ、どんな楽曲でも躊躇することなく、感情豊かな伸びやかなヴォーカルを聴かせてくれる。繊細さも加味され聴きごたえあり。
ガイドコメント
ニューヨーク在住の日本人女性シンガー・ソングライター、JUJUの2ndアルバム。日本やニューヨークでのさまざまな経験から生み出されたナンバーで、切なくも輝きを放つ彼女のヴォーカルが光っている。
収録曲
01What's Love?
ア・カペラ風のコーラスをバックにした光明な幕開けと鍵盤のループが印象的なミッド。愛へと駆けあがる瞬間の期待と不安が入り交じる微妙な心境を、アンニュイで艶めかしい歌唱で綴っている。切なく甘酸っぱい楽曲制作はJeff Miyahara。
02素直になれたら (JUJU feat.Spontania)
Spontaniaとコラボした「君のすべてに」の客演返しとなるアンサー・ソング。オルゴール調のイントロが印象的で、あふれ出す気持ちを抑えた心情を女性の細やかな視点で描写した歌唱が素晴らしい。哀感漂うサウンド制作はJeff Miyahara。
03U Got Me
DJ HIROnyc制作によるミディアム・チューン。ギターを効かせた穏やかなファンク調といった佇まいで、ファルセットを多用した微笑ましい歌唱や中盤で披露するラップとの相性は抜群。“いますぐに抱きしめて”というアプローチ・ソングだ。
04Missin'U
恋人を失った虚無感に打ちひしがれる心境を綴ったミディアム・スロー。物憂げではかない情景を歌わせるのにこれほど適した人もいないと思わせるほど、哀切なメロディに浸透するヴォーカルが白眉。制作はDJ HIROnyc。
05My Life
DJ HIROnycとE-3によるジャズ風のアプローチで構成されたミディアム・チューン。高揚感を煽るホーンや気品ある鍵盤などの生音によるサウンドが、アダルトでスタイリッシュな雰囲気をもたらせている。ため息と黄昏に暮れる女心がテーマ。
06I can be free (album version)
亀田誠治によるオーソドックスなロック・アレンジが特色のミッド。薄暗い空にだんだんとやわらかい光が満たされていく夜明けを想起させる曲で、詞世界も自分を信じていけば自由になれるというポジディヴなもの。フジテレビ系『めざにゅ〜』テーマ・ソング。
07sakura
ピアノとギターを軸とした清冽なアレンジが趣を生んでいる、DJ HIROnyc制作のミディアム・スロー。いつも変わらずに咲く桜の季節に君とやり直したいと願う気持ちを切なくも愛らしい歌唱で聴かせる、JUJUの細やかな表現力が秀逸なバラード。
08空
映画『しあわせのかおり』主題歌となるミディアム・スロー・バラード。夢を諦めた弱気な日々を捨て、ひたすら前へ進む決意を綴った詞にふさわしく、艶やかさよりも希望にあふれた歌唱を披露。ピアノとアコギとストリングスによるピュアなアレンジが涙腺を緩ませる。
09LOVE TOGETHER
鐘の音で幕を開ける、タイトなリズムと期待感ある音色のアレンジが特徴的なアップ。運命の人との出会いとその永遠に心弾む気持ちを、松尾“KC”潔が90年代風の陽気なグルーヴを巧みに用いてジョイフルに表現した、ハッピーなウエディング・ソングだ。
10君がいるから-My Best Friends-
河野伸の制作によるオーセンティックなミディアム・バラード。河野のピアノと金原千恵子のストリングスを軸とした流麗なアレンジが、大切な友との絆の深さや強さを描写するのにふさわしい存在感を示している。『にゃんこ THE MOVIE 3』主題歌。
11世界が終わる前に
スウィートなウィスパー・ヴォイスがキュートな世界観を創り出すピロートーク・ソング。i-depのナカムラヒロシによる制作曲らしい、ビートに鍵盤と弦を乗せたライトなハウス調アレンジによって、スタイリッシュなポップへと昇華している。
12やさしさで溢れるように
亀田誠治プロデュースのミディアム・バラード。鮮麗としたピアノやストリングスをバックに配しているが、意志の強いギターを際立たせた克明なアレンジが亀田らしい。“どんなときもそばにいる”と決意表明する、生命力あふれる歌唱は圧巻。
13愛 (かな)しい (JUJU+キヨサク (MONGOL800))
“モンパチ”のキヨサクを迎えたアコースティック調のスロー・ナンバー。素朴なキヨサクの歌唱がJUJUの柔和さを引き出しているかのようで、二人が生み出す安穏とした雰囲気がいい。“チクタク”という詞もあいまって、沖縄の悠久さを感じさせる。
14どんなに遠くても...
輝ける明日が遠くとも愛の連鎖で希望を見出せると歌う普遍的なラヴ・バラード。ストリングスの合間から顔を出す澄明なフルートがパッと咲く花のよう。気品を保ちながら清爽なポップへと仕上げた、CHOKKAKUのアレンジが秀美。