ミニ・レビュー
デビュー36年で35枚目のアルバム。ビートルズの「イン・マイ・ライフ」をユーミン流に発展させたような内容で、郷愁と未来が絶妙に手を取り合って踊る。“時間”とか“人生”、“旅行〜移動”などがキーワードと言え、同世代への優しい励ましのようにも思える。
ガイドコメント
約3年ぶり、35枚目となるアルバム。NHK『探検ロマン世界遺産』テーマ・ソング「Flying Messenger」や加藤和彦がプロデュースとヴォーカルで参加した「黄色いロールスロイス」などを収録。ミックスはアル・シュミットが手がけている。
収録曲
01ピカデリー・サーカス
80年発表のアルバム『時のないホテル』を彷彿とさせるような、重みのあるミディアム・ナンバー。波風の音色を交えた、どこか懐かしいメロディが曲全体を包み込む。35thアルバム『そしてもう一度夢見るだろう』のテーマである“旅”のイメージにふさわしい一曲。
02まずはどこへ行こう
“ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009”応援イメージ・ソング。川沿いの風景を青春の1コマとして描いた爽やかな曲で、春風に吹かれながら自転車のペダルを漕ぐ様子が目の前いっぱいに広がるようだ。優しいヴォーカルと穏やかな春模様が聴き手の五感に訴えるようだ。
03ハートの落書き
学生時代の淡い恋心を描いた夏のラヴ・ソング。思い出の詰まった教室や放課後の出来事を想起させる詞と情感豊かな声が、温かくノスタルジックな気持ちにさせてくれる。“夢の途中”とくり返すフレーズが、ポップなメロディと相まって甘く切なく響く曲だ。
04Flying Messenger
NHK『探検ロマン世界遺産』テーマ・ソング。イスラム教の聖典『コーラン』を思わせるようなコーラスで始まる、エキゾチックなミディアム・ナンバー。うたかたの人生を漂うように儚く歌う、ロートーンで落ち着いたヴォーカルが心地良い一曲。
05黄色いロールスロイス (松任谷由実&加藤和彦)
スピーディに走るロールス・ロイスを想起させるようなアッパー・ロック・チューン。加藤和彦がデュエットで参加し、加藤率いるバンド、VITAMIN-Qが演奏も担当している。渋さをまとったヴォーカルとはじけるサウンドが、かっこいい大人をイメージさせる一曲。
06Bueno Adios
タンゴ調のノスタルジックなミディアム・ナンバー。眩しい陽射しが照りつける夏を舞台に、かつての恋人への熱い想いを低く艶やかな歌声でセンチメンタルに歌い上げている。哀愁に満ちた雰囲気たっぷりのアコーディオンにも注目してほしい。
07Judas Kiss
遠い国の砂漠を舞台に恋に落ちるヒロインを描く。“ハートのダイヤ盗みとられた”という情熱的な詞がなんともドラマティック。危険が迫りくるような雰囲気と異国の香りが漂う、ゴージャスかつサスペンスフルなナンバー。
08Dangerous tonight
異性をダイレクトに誘う言葉がセクシーなソウル・ナンバー。“いろは歌”を巧みに盛り込んだ歌詞が印象的。艶のあるヴォーカルとリリック、身体が自然と揺れるサウンド、そしてタイトルまでもが、90年代前半を思わせるバブリーなテイストに仕上がっている。
09夜空でつながっている
ハウス食品「プライム」CMソング。亡くなってしまった愛する人へ捧げるミディアム・バラード。“ありがとう こんなに寂しい想いがあるなんて”という素朴な詞が胸を打う。哀しみを包み込み、抱きしめるように優しく歌っている。
10人魚姫の夢 (Album Version)
“YUMING SPECTACLE SHANGRILA III”のテーマ曲であり、WOWOW連続ドラマW『ママは昔パパだった』の主題歌。淋しさと不安に満ちたバラードだが、その中に潜む一筋の光に焦点を当ててじっくり味わうように聴いてほしい。