ミニ・レビュー
メジャー移籍第1弾アルバム。金属的なハイ・トーン男女ツイン・ヴォーカルのすさまじい刺激と、メタル、ハードコア、オルタナとJ-POPを均等に並べる独特のセンスあふれるサウンドは、解読不能だが強力な吸引力を持つ。未知の刺激を求める方は一聴を。
ガイドコメント
男女ツイン・ヴォーカルの3ピース・バンド、凛として時雨の約1年9ヵ月ぶりの3rdアルバム。特色であるアグレッシヴなサウンドはもちろん、アート感漂う楽曲や初のインスト曲など、音楽的な幅を広げた感動の仕上がりだ。
収録曲
01ハカイヨノユメ
メジャー移籍第1弾アルバム『just A moment』のオープニングを飾るナンバー。破壊力を持った激しいサウンドから喪失感漂う冷たいサウンドへの展開は、もはやプログレ。TKの鋭いハイトーン・ヴォイスとシャウトが緊迫感を与えている。
02Hysteric phase show
メランコリックな雰囲気と熱い衝動が入り混じったエモーショナルなナンバー。低くうなるベースと変幻自在に動くギターのバランスが絶妙。柔らかく繊細なウィスパー・ヴォイスを多用しているが、いきなりシャウトするところが“時雨”らしい。
03Tremolo+A
エッジの効いたアコギが耳を引く叙情的な一曲。“ただ君を壊したくて”という相手への強い想いから生じた虚無感が切なさを与える。しっかりとリズムを刻みながらも主張し過ぎないドラムが秀逸で、サビのTKと345のハモリも見事。
04JPOP Xfile
マゾヒスティックなポップ・ミュージックというJ-POPに対する痛烈なメッセージを込めたアップ・ナンバー。シリアスでメロディックなギターを施したダイナミックなサウンドが高揚感を煽る。サビで“JPOP”と叫ぶフレーズが印象的。
05a 7days wonder
狂気と哀感を秘めた詞と淡々とした歌唱に虚しさを感じる一曲。歪んだサウンドの合間に加わる乾いたアコギや静かに響くピアノが、冷感を増幅させる。全体的にソリッドな印象だが、躍動感あふれる仕上がりになっている。
06a over die
エフェクトを効かせて奏でられるギターが印象的な、彼ら初のインスト・ナンバー。前半はシンプルなメロディだが、だんだんとアグレッシヴになっていく展開が圧巻。3人が創り出すサウンドのセンスのよさが感じられる一曲だ。
07Telecastic fake show
シャープで躍動感があふれる1stシングル。カオティックな詞世界と押し寄せる爆発的なサウンドが強烈な印象を与えている。彼らの持ち味である、TKと345によるハイトーンのツイン・ヴォーカルの掛け合いが刺激的。
08seacret cm
エコーを効かせたギターにさらに歪んだギターを乗せるなど、アート的な雰囲気が漂うサウンド・センスが抜群。哀情に包まれた抽象的な歌詞と浮遊感のある不思議な歌唱により、異空間へトリップした気分になる。彼らの新たな一面が見える一曲だ。
09moment A rhythm (short ver.)
16分にもおよぶ2ndシングルのショート・ヴァージョン。“回想”をイメージしたというナンバーで、静かでダウナーな雰囲気が漂うサウンドに深い悲しみを感じる。繊細な声で歌われる“12センチおきに君を刺すけど”というフレーズが印象的。
10mib126
始めは空虚で気だるいイメージを与えるが、“オマエタチガツクッタセカイニ”というフレーズから一気に爆発するサウンドと激情するTKのヴォーカルに圧倒される。めまぐるしく展開していく彼らの音楽センスに目を見張る一曲だ。