ミニ・レビュー
どの曲もポップで勢いがあり、アーティストとしての充実が見える4枚目のアルバム。歌がうまいだけで情感を感じさせない女性ヴォーカリストが多い中、彼女の声には非常に繊細な表現力があるように思う。初回盤にはPVとケータイ音楽ドラマが収録されたDVDが付く。★
ガイドコメント
2009年7月リリースの加藤ミリヤの4thアルバム。清水翔太とのコラボレーション・シングル「Love Forever」を含むヒット曲を収録した豪華な内容。女性の気持ちを代弁する歌詞が魅力だ。
収録曲
01SAYONARAベイベー
恋人同士の会話スタイルで展開する13thシングル。恋に落ちてからすれ違っていく経過をダンサブルなトラックに投影する。“あなたの携帯いつもロック”などリアリティある詞のセンスは、少女と大人の狭間にいるミリヤならでは。
02Aitai
村山晋一郎制作の鍵盤をメインにしたミディアム・スローに乗せて、かなわない恋にのめり込む女性の気持ちを吐露していく。“会いたい”を連呼するフックに耳を引かれるが、思い詰める風でなく健気に待ちわびる、添い遂げるようにやわらかく歌う感じがイイ。
03Love Forever (加藤ミリヤ×清水翔太)
清水翔太とのデュエットによる15thシングル。一度は距離を置こうとするも、やはり君から離れられないと永遠の愛を誓うラヴ・ソング。同世代同士の邂逅は新鮮で、クラブ調トラックも彼らを後押しするように爽やか。3rd Productions制作曲。
04Breathe Again
艶やかなのギター・リフと息継ぎをアクセントにした3rd Productions制作曲。大切な人と一緒に生きていきたいという思いを、開放感のあるアップ・ビートのトラック上で歌う。終盤の突き抜けるフェイクが、爽快な夏の季節感を醸し出している。
05Love for you
繊細で美しい鍵盤のメロディを軸にしたダンサブルなクラブ・チューン。恋愛至上主義のミリヤが、孤独の虚しさと寂しさを感じながら、本物の愛を求めたいという胸の内を吐露する。“LOVE LOVE…”のリフレインが切なく響く、女子共感度の高い曲だ。
06ありがとう、
気鋭のプロデュース・チーム、THE COMPANY制作のミディアム・バラード。愛し合った日々を振り返って感謝を告げる別れの歌で、“笑ってサヨナラ、愛してた”と過去形で表現した辛い思いを絶妙な声色で描く。ミリヤ流ラヴ・ソングの真骨頂だ。
07この街のどこかで
過去の恋に踏ん切りをつけられずやり直したいと願う女心を描いた、ほのかに切なさが感じられる村山晋一郎プロデュースのミッド。淡々と過ぎゆく日常の風景のようなシンプルなギターに追いすがる、熱い息で歌いかけるミリヤの巧みな表現力がうかがえる。
08Dance tonight
ホーンを配したゴージャスかつ爽やかなアレンジが印象的なダンス・チューン。嫌なことを忘れて今夜は踊ろうと誘うストレス発散ソングだが、「これからはうちらの時代」と大人に啖呵を切っていたミリヤが、“大人って割といいもんだ”と成長を見せている。
0920-CRY-
二十歳だからこそ解かる孤独感と苦しさをリアルに映し出したミディアム・バラード。少女から大人への不安と葛藤を赤裸々に綴るのがミリヤらしい。“私はここだよ”という哀切な歌唱と悲壮に満ちたギターが、若さゆえの苦悩を絶妙に描写する14thシングル。
10Time is Money
松澤友和制作の軽快なギターをアクセントとしたクラブ風アップ。寂しさにさいなまれながら、あっという間に過ぎる時間に乗り遅れられないと一念発起する自身を歌う。美味しい果実はすぐに熟して気付けばおばさん……と二十歳の彼女の自戒を込めた詞が印象的。
11あなたが欲しい
R&Bテイストを強調した3rd Productions制作によるミディアム・チューン。恋愛感をさらけ出す詞が出色のミリヤによるストレートな恋慕ソングで、“あなたが欲しい”という肉感のしたたりさえも感じられる歌唱にドキリとさせられる。
12Love me、hold me
フィリップ・ウーが制作と鍵盤で参加したメロウなミディアム・スロー。スムースでジャジィなグルーヴが漂うなかで、許されない恋愛に陥ってしまった苦悩を吐露する。不倫を思わせる世界観を描く、アダルトでドラマティックなアレンジが極めて秀逸。
13Happy Celebration
同世代の女性へ向けて二十歳の誕生日を祝う、ミリヤ流バースデイ・ソング。“いつまでも友達だよ”“おばあちゃんになっても笑い合いたい”というメッセージを、微笑ましく包み込むように歌う。有坂美香&YURIのコーラスが盛り上げに一役買っている。
14This is Love
田中ロウマの鍵盤サポートでも知られるMANABOON制作のミッド・スロー。目が合った日から恋に落ちた一途な女心を痛々しいほどの感情で歌い上げ、艶めかしい世界観を構築。ほどよいクラブ風の味付けを添えた鍵盤アレンジが特出のラヴ・バラード。
15People
大人へと成長したからこそ知り得たミリヤの人生観を綴ったメッセージ曲。みんな不器用に生きるただの人だから手をつなぎ寄り添っていこうという真摯な思いを、“We're just people”と表現。大らかで温かみのあるサウンドが心を和ませる。