ミニ・レビュー
メジャー・ファースト・アルバムには、楽曲のカラフルなレンジの広がりを感じてやまない。歌世界のリリシズムを縦糸に、流麗なロック・サウンド、遊び心あふれるラテンやシャッフル・ビート、切実なバラードなどを織り込んでいくさまには、新しい章を開いたバンドの自信さえ窺える。
ガイドコメント
2009年7月1日リリースのアルバム。メジャー・デビュー作「モノクロのキス」やMBS・TBS系アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』エンディング・テーマ「嘘」などのシングル曲を含む、独創性豊かな楽曲を収録。
収録曲
01落園
ギターのカッティングがもの悲しさを際立たせる、哀愁漂うミッド・ナンバー。孤独や苦悩のさなかにあっても、希望の歌を歌い続けるという強い意志を綴った内容で、体全体で叫ぶようなマオのヴォーカルが胸に刺さる一曲だ。
02妄想日記2
インディ時代のアルバム『憐哀-レンアイ-』収録曲「妄想日記」の続編ナンバー。キレのよい軽快なサウンドに対して、内容はストーカー気質の粘着質で女性が主人公のディープなものだ。相手の男性の彼女に“184の嵐”など、狂気じみたフレーズが印象的。
03嘘
哀愁感のあるメロディアスなサウンドが琴線に響く一曲。別々の道を歩き始めた男女の“いつかまたね”という、果たされないであろう約束が切ない。TBS系アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』エンディング・テーマ。
04サーカス
ラテン調の軽やかなリズムにマオの清涼感のあるヴォーカルが伸びやかに響く一曲。“日々が君色”と恋焦がれる片想いを綴ったラヴ・ソングだ。募る想いを“綱渡り”“空中ブランコ”といったサーカスになぞらえるユニークな表現がシドらしい。
05泣き出した女と虚無感
歯切れのよいアコギと鉄琴の音が絶妙なアクセントとなったジャジィなミッド・ナンバー。抑え気味なメロから感情的なサビへと展開するメリハリのあるヴォーカルは見事。官能的な大人の恋愛を、哀愁漂うサウンドにのせて情感たっぷりに歌い上げている。
06モノクロのキス
TBS系アニメ『黒執事』オープニング・テーマとなったシドの記念すべきメジャー・デビュー・シングル。トライバルでフォーキーなメロからキャッチーなサビへと疾走する涼しげなロック・チューンだ。ドラマティックなサウンドにマオの凛とした歌唱が映える一曲。
07罪木崩し
軽快なサルサのリズムが楽しい歌謡ロック・ナンバー。ピアノを軸にワウ・ギターやスラップを効かせた爽やかなサウンドにのせて、官能的な恋愛劇をさらりと歌った一曲。恋の駆け引きを楽しむ小悪魔的な女性を艶やかな歌唱で好演している。
082℃目の彼女
偶然再会した昔の恋人に永遠の愛を誓うストレートなラヴ・ソング。マオの清廉なヴォーカルが伸びやかに響き渡る一曲で、冬の空気を思わせる清涼感のあるスタイリッシュな仕上がりだ。楽曲全体で鳴らされるギターのブラッシングが小気味よい。
09capsule
浮遊感のあるゆったりとしたパートとアグレッシヴなロック・パートで構成されるメリハリのある一曲。物憂げな歌唱と荒々しい歌唱の使い分けも絶妙で、徐々に激しさを増していくヴォーカルが焦燥感を煽る。突き抜けるようなドライヴ感のあるサビが清々しい。
10ドラマ
さわやかなサウンドのキャッチーなロック・ナンバー。“思いっきりここで泣いて”と立ち止まる勇気をくれる内容で、希望あふれる言葉が満載の一曲だ。Wii用ソフト『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST-暁の王子-』テーマ・ソング。
11光
ストリングスが優雅に響く、ドラマティックで温かいロック・バラード。未来を見据え着実に歩みを進めていきたいと歌う内容は、彼ら自身の想いをそのまま映しているかのよう。感情を込めたひたむきなマオのヴォーカルも深みを帯びている。