ミニ・レビュー
通算7作目のアルバム。映像をバックに演奏する独自のスタイルでライヴ・バンドとしての揺るぎない地位を確立した感のある彼らだが、本作においても、静と動を表現する幅広いサウンド・プロダクションを駆使した映像的な世界にさらに磨きをかけている。
ガイドコメント
2009年7月29日発表の7thアルバム。壮大で力強いサウンドと生命をテーマにした世界観が魅力の「I stand free」をはじめ、「CARVE WITH THE SENSE」「Under the rain」といったシングル曲などを収録。
収録曲
01A beautiful greed (introduction)
約2分の短いイントロダクション。大木による繰り返されるピアノのはかないフレーズが、哀愁漂うストリングスと非常によく溶け合っている。後半から加わるスピード感と激しさをともなうドラムには、孤独におびえる感情を描くような切迫感がうかがえる。
02±0
ネクソン「カウンターストライクオンライン」CMソングに起用された、エモーショナルで疾走感あふれるナンバー。英詞で綴られた“彼”とは神ともとらえることができ、その神の創った世界に満足できない“私達”の愚かさを歌っている。
03CARVE WITH THE SENSE
メンバー全員での“Carve with the sense”というフレーズのチャントが印象的なロック・ナンバー。生きる意味を抱えて真実を追い求めるさまを描く。鼓動が高鳴るグルーヴィなサウンドが魅力だ。
04Who are you?
“君の事を教えてほしい”と懇願する僕の強い想いをすべて英詞で綴っている。徐々にアグレッシヴになっていくサウンドだが、ディレイのかかったギターがノスタルジックな一面を演出している。
05Under the rain
切なさを感じさせるギターから躍動していくナンバー。美しい思い出に浸りながら、貴方が消えてしまったことの哀しみを綴るが、一方で失われる哀しさがすべてではなく、すべては心の中に残るんだという想いを大切にすべきと問うている。
06ファンタジア
ディレイやコーラスの効果による、ファンタジーの世界に迷い込んだような錯覚に陥るサウンドが魅力。不思議な雰囲気を醸し出す詞の世界観と大木の穏やかで繊細な歌声が、曲とよくマッチしている。
07星のひとひら
軽快に刻まれるドラムとは対照的な、ディレイのかかった切なげなギターと繊細な歌声が美しく響く一曲。星のようにいつかは消えてしまうはかなさにあってもいま一度真実を思い出させてほしい、と哀願する心情を描く。
08HUM
私が消えても世界が続いていくことの美しさを、短い英語のフレーズで綴っている。哀愁漂う静かな始まりだが、解き放たれたような広がりから濃密なサウンドへと移り変わる展開と繊細に響くファルセットが秀逸。
09ucess (inst.)
3分足らずの短いインスト。リズミカルなドラムと繰り返されるギター・リフで構成されたミディアム・ナンバーで、不安や弱さを取り払ったように迷いなく堂々と奏でられるサウンドには強い生命力を感じる。飽きさせない変化に富んだメロディ・ラインが出色。
10Bright&Right
ほのかな爽やかさと懐かしさを感じさせるリズミカルなナンバー。時とともに忘れてしまう切なさを感じながら、移りゆく季節のなかでも記憶から消えてしまわないように君を描いていきたいという意志に、かすかな希望の光がうかがえる。
11I stand free
クリアに鳴り響くサウンドに乗せて綴られるハートウォームなナンバー。限りある生命のなかで、美しく自由な世界に生きられる喜びに染まれと歌っている。未来の希望を感じさせるかすかに憂いを帯びたアコギのイントロが印象的。
12OVER
アルバム『A beautiful greed』のラスト・トラック。光に照らされているような輝きのあるサウンドのなかで、悲しみで心に傷を負っても、焦らずに思い描いていた未来へ向けて歩み、夢を語り合った仲間と再び出会おうと誓う。