ミニ・レビュー
今やオーストラリアを代表する彼らがレーベル移籍、心機一転で放つサード・アルバムは、ロックの真髄を見せつけるソリッドな快作に仕上がった。先達の残したロックの美味しいところを凝縮した音づくりがとにかく痛快! シングルの「シーズ・ア・ジーニアス」ほか、全編で醍醐味をたっぷり味わえる。
ガイドコメント
EMI移籍第1弾にして、通算3枚目となるアルバム。ほぼセルフ・プロデュースによる“原点=シンプルで、メロディアスで、魂を揺さぶるロックンロール”に戻った、最高に突き抜けた作品となっている。
収録曲
01K.I.A. (KILLED IN ACTION)
レーベル移籍後初リリースとなる3rdアルバム『シャカ・ロック』のオープニング・ナンバー。荒さと正確さを兼ね備えたエフェクティヴなギターは、新たな境地への挑発的な態度を表わすようだ。“A-ha a-ha〜”というコーラスが印象的だ。
02BEAT ON REPEAT
彼ら曰く、この上ないほどオーストラリアっぽいという曲で、同じことを繰り返すだけの自分たちの生活や社会を笑い飛ばした内容。こじゃれたリズムではあるが、ほのかにアンニュイな雰囲気が漂うサウンドにも皮肉が表われているようだ。
03SHE'S A GENIUS
Right-on.「BACK NUMBER NEW SHINY CENIM」CMソングとなった、彼らの新たな代表曲ともいえる一曲。強靭なギター・リフが高揚感をもたらす、ドライヴ感全開の痛快なジェット節が炸裂したロックンロール・ナンバーだ。
04BLACK HEARTS (ON FIRE)
ハード・ロックの要素を取り入れた重厚なサウンドが胸を躍らせるナンバー。魅惑的な欲と権力に溺れ、自我を失っていく人間の様子が描かれる。激しくも芯のある歌声は、愚かさを認めることで生きていると実感する人間の性を表わしているよう。
05SEVENTEEN
17歳の繊細な心情と若さゆえの勢いをストレートに綴る。刻むように細かく鳴らされるピアノが印象的な耳なじみのよいメロディで青春の切なさと美しさを表現した、ジェット風パワー・ポップだ。
06LA DI DA
ガレージ風サウンドが力強く鳴らされる一曲。哀愁漂う情熱的なアコギ、不穏なファズ・ギター、焦燥感をあおるようなピアノ、それぞれのもつ緊張感が刺激的な音世界を生み出している。迷走しながら必死に生きるさまを綴った詞がそのまま音に表われているよう。
07GOODBYE HOLLYWOOD
自分の居場所が見つかったから潔くハリウッドを出て行こうと歌う物語性のあるナンバー。レーベルの移籍を経た彼らの心境を表すかのように、迷わず前進しろという前向きな想いが込められている。まっすぐでクリアな演奏に希望が感じられる一曲。
08WALK
社会への皮肉を歌ったロック・ナンバーだ。ニックの繊細な歌声と、静かなピアノが奏でる清涼感のあるイントロに対して、間奏では反発心や自信がにじみ出たアグレッシヴな演奏を披露。“Yah yah yah〜”と繰り返されるコーラスが特徴的だ。
09TIMES LIKE THIS
お前のロックンロールが必要なんだと大志を抱かせるナンバー。シンプルでリズミカルなサウンドは耳なじみのよいパワー・ポップだ。重たくなりすぎないベースと軽やかなヴォーカルが爽快感を与える。
10LET ME OUT
ノスタルジックな雰囲気を醸し出しながらもパワー・ポップ風のクリアなサウンドが心地よい一曲で、叙情的なピアノとギターは疲れた心に優しく響くよう。“ここから出してくれ”と懇願するニックの歌声が悲しくもあり美しくもある。
11START THE SHOW
“start the show”というごきげんな掛け声で始まるハード・ロック・ナンバー。ずっしりとしたベースが魅力のヘヴィなサウンドではあるが、リズミカルなアレンジで重さを感じさせないのがジェットらしい。ニックの陽気なシャウトも聴くことができる。
12SHE HOLDS A GRUDGE
キャメロンがリード・ヴォーカルをとるバラード。本当に大切だと気づいた彼女に対してごめんと謝る素直な様子が情けなくも優しい。ノスタルジックなスライド・ギターが作る柔らかい雰囲気に、ニックのコーラスが温もりを増している。
13DON'T BREAK ME DOWN
アコギとクラップが爽やかなナンバーで、ゆったりとしたサウンドと繊細で透明感のあるコーラスが心に沁みる。切なげに歌い出すも、ラストに感情が抑えられなくなったように“don't break me down”と熱くなる歌声が印象的。
14EVERYTHING WILL BE ALRIGHT
耳なじみのよいアコギと浮遊感のあるコーラスが混ざることで、夢を見ているかのような気分にさせる癒しの一曲。ディレイのかかった幻想的なギターが、元々のアコースティックな世界観を壊すことはなく見事に調和している。