ミニ・レビュー
1年4ヵ月ぶりとなる16作目。タイトルはOut Of Place Artifactsの略で、“時代にそぐわない遺物”という意味。逆説的な意味合いだとは思うが、デビュー21年目を迎えて、なおも新鮮というのは驚異的だ。近年のハイ・テンションなギター・ロック路線ではなく、全体的にオルタナな仕上がり。 瑞々しく濃厚。★
ガイドコメント
結成20周年イヤーを経てさらにスケール・アップした、the pillowsの2009年10月14日発表のアルバム。“俺たちはやりたいことをやり続ける!”というバンドのスローガンを改めて提示した、滲み出る高揚感が満載のロック作だ。
収録曲
01ダンス・ウィズ・ゴッド
“時代にそぐわない遺物”という意味の16thアルバム『OOPARTS』のオープニングを飾るナンバー。アンニュイなサウンドに乗せて、時を超えても変わらないものについて歌う。最後の“Dance with god”というシャウトが印象的。
02ユア・オーダー
自分の好きなように生きればいいと歌うロック・ナンバー。冒頭のノスタルジックに響くメロディとは打って変わって、人生を勢いよく突き進むような躍動感に満ちたサウンドが展開する。ポップさの中にもきちんとオルタナ感が出ている一曲。
03メロディー
ミドル・テンポの陽気なサウンドに乗せて、キミへの想いを柔らかく軽やかな声で歌う。弱気な一面を見せる歌詞からは、辛いことや困難なことも楽しめるという開き直りにも似た前向きさが感じられる。
04レモン・ドロップス
ガールズ・ロック・バンド、noodlesとの出会いを全英語詞で綴ったロック・ナンバー。彼女たちのライヴで衝撃を受け、オルタナに夢中になった山中の熱い想いをストレートに描いている。止められない衝動とリンクする爽快なサウンドが清々しい。
05フォクシーズ
曲全体がオルタナ感に満ちた、全英語詩で綴られたナンバー。自分は駄目な人間だという虚無感を、抑揚のハスキーな声で淡々とハスキーな声で歌う。気だるそうなギターのメロディに、ホーンやシンセのアクセントが効いた遊び心満載の一曲。
06ビヨンド・ザ・ムーン
すぐに太陽の方を向いてしまう向日葵に恋をしている、三日月の切ない気持ちを綴ったファンタジックな一曲。悲しさと温かさが入り混じるメロディとセンチメンタルな詞の世界観に聴き入ってしまう。山中の表現の豊かさに脱帽。
07ジョニー・ストロボ
偶然出会ったキミを運命の人だと感じた瞬間の衝撃を綴る。落ち着いたギターが奏でる耳なじみのよいメロディが、サビでは芯のある強い輝きを放ち、一瞬にしてキミに引き込まれた喜びを表現している。
08雨上がりに見た幻
20年間の想いを詰め込んだ一曲。彼らの代表曲「ハイブリッド レインボウ」を投影し、自分たちの音楽性を信じて思い描いてきた未来が幻想ではなかったことを力強く歌い上げる。着実な一歩を重ねてきた彼らの想いが心に深く染み渡る。
09ライフ・サイズ・ライフ (ザ・バッグ・イズ・スモール、アンド・アイ・ドント・エンター)
耳なじみのよいキャッチーなロック・ナンバー。明るく楽しげなサウンドとは対照的に、全英語で綴られた詞は、山中が気に入らない某アーティストのことを皮肉った内容になっている。ここまでストレートに嫌味を言われると逆に清々しい。
10プライマー・ビート
アップ・テンポでゴキゲンなロックンロール・ナンバー。歪んだファズ・ベースが軽快に動くジャズのテイストを取り入れたサウンドに、体が自然とリズムを刻んでしまう。山中の弾むような歌声も心地良い。