ミニ・レビュー
幻の公演となった“THIS IS IT”を、リハーサル映像で明らかになった曲順どおりに既存のオリジナル音源で構成。つまりはマイケルが「これで最後」と公言したツアーでみんなに聴かせようとした自選ベスト的内容だ。最後に2ヴァージョン収録されたタイトル曲は79年の未発表曲。
ガイドコメント
2009年10月28日発表のアルバム。マイケルがロンドンで予定していた公演のリハーサル模様を映画化した『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』のタイトル曲に加え、本編に登場する彼の数々のヒット曲や未発表音源などを収録。
収録曲
01WANNA BE STARTIN' SOMETHIN'
金字塔アルバム『スリラー』の冒頭を飾る、性急なビートで迫るアップ。ドゥドゥッドゥッという重厚なボトムと高らかなホーンが対照的に顔を合わす、ステージでも不可欠な曲だ。“ママセ・ママサ・ママクサ”のコーラスをバックに高みへと昇る歌唱は神々しくさえある。
02JAM
アルバム『デンジャラス』収録のダンス・チューン。マイケルの直情的なビートに、シンセを多用したニュージャックスウィングとヒップホップの要素を組み込んだテディ・ライリーの作風がマッチ。中盤から顔を出すヘヴィ・Dが、ラップで曲をいっそうクールに引き締めている。
03THEY DON'T CARE ABOUT US
アルバム『ヒストリー』収録のシリアスなナンバー。“スキンヘッド、能なし、誰もが悪くなった……”と始まる過激な詞や暴力的なPVが問題にもなったが、無論マイケルの主張は真逆で、暴力や差別へのアンチテーゼを込めたものだ。
04HUMAN NATURE
名盤『スリラー』からの第5弾シングル。クインシー・ジョーンズ作品のなかでも白眉のバラードだ。僕の行動を不思議がるけど、人間ってそんなもの……好奇の目で見る人たちをやんわりと諭す“ホワイ、ホワイ”という幻想的なコーラスは、いつ聴いても美しい。
05SMOOTH CRIMINAL
映画『ムーンウォーカー』でのゼロ・グラヴィティのパフォーマンス時に流れるアルバム『バッド』収録曲。“アニー、大丈夫?”と繰り返しながら犯罪の真相へと迫る詞とスリリングなサウンドで、ラストまで緊張が途絶えない。
06THE WAY YOU MAKE ME FEEL
ピンと張り詰めた曲が多いアルバム『バッド』のなかで唯一といえる、陽気な音色で展開するミディアム・ポップ。君が最高の恋人とメロメロな気持ちを叫ぶラヴ・ソングだ。心地よいシャッフルビートに、マイケルも上機嫌に歌う。
07SHAKE YOUR BODY (DOWN TO THE GROUND)
ジャクソンズ『デスティニー』収録のファンキー・ディスコ。ジャクソンズとしての自作曲だが、マイケルの『オフ・ザ・ウォール』の音色が随所にうかがえる。高らかなホーンが映える、ご機嫌なパーティ・チューンだ。
08I JUST CAN'T STOP LOVING YOU
ブラン・ニュー・ヘヴィーズ「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」のヴォーカリストとしても知られるサイーダ・ギャレットとのラヴリーなデュエット。原曲では控えめでサイーダに添うように歌うマイケルだが、映画『ディス・イズ・イット』ではジュディス・ヒルをリードし和ませる場面も。
09THRILLER
常識を覆したモンスター・アルバムの表題曲。メイクやダンスといったPVの視覚的効果の影響も絶大で、単純なコードの繰り返しもPV同様鮮やかなアレンジでホラーの世界観を創出。ヴィンセント・プライスのストーリーテラー風アウトロも話題をさらった。
10BEAT IT
アルバム『スリラー』からのシングル第3弾。ミュージカル映画『ウエストサイド物語』の世界観をブラック・ミュージックで描いたら……というようなファンキー・ロック。エディ・ヴァン・ヘイレンのギター・ソロを組み込んだ、斬新なナンバーだ。
11BLACK OR WHITE
モーションピクチャーやマコーレ・カルキン出演のPV、スラッシュ(元ガンズ・アンド・ローゼズ)によるギター・イントロなどが話題に。シンプルなギター・リフを軸に展開するファンキー・ロックに乗せ、サラリと人種差別を揶揄するところが見事だ。
12EARTH SONG
アルバム『ヒストリー』収録のシングル曲。地球に惨状をもたらした人間への嘆きを、デヴィッド・フォスターが制作に参加した美しい旋律で届ける。差し迫る“我々はどうなる?”のリフレインや悲しげな声色で歌う“アアア……”のフレーズが切ない、社会派バラード。
13BILLIE JEAN
これほど著名で盛り上がるイントロを持つ曲があっただろうかと言っても過言ではない、名盤『スリラー』収録のディスコ・ファンク。シンプルで不安をかき立てる楽曲をバックに、“ビリー・ジーンは僕の恋人なんかじゃない!”と叫ぶシリアスなナンバーだ。
14MAN IN THE MIRROR
ホープフルなサウンドと力強いゴスペル風コーラスが特色のミッド。世界を良くするなら、まず自分を良く変えることだと、真摯なメッセージを伝えている。「キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」共演のサイーダ・ギャレットが共同制作とヴォーカルに参加。
15THIS IS IT
マイケルの死後に発表された最後の新曲。発表後、サファイヤに提供した「I Never Heard」に酷似だとか、ポール・アンカとの共作やらと物議を醸した。清爽としたミディアム・バラードで、恋人と巡り逢えた驚きと喜びを歌いあげている。
16THIS IS IT
「ワン・モア・チャンス」より6年の歳月を経て発表された、没後の新曲のオーケストラ版。ポール・アンカとの共作(が認められた)曲にジャクソンズがコーラスをプラス、美しい旋律がオーケストラによっていっそう引き立っている。