ミニ・レビュー
キャリア17年、14作目にしてセルフ・プロデュース体制を大きく崩し、ほとんどの曲が他者制作で作りが若返った。だがメロディと歌声にはケリー節がくっきりと表われ揺るぎないアイデンティティを発揮。相変わらずの性愛路線なれど、若返りのせいか妙に可愛らしくて和んだりする。
ガイドコメント
2009年10月発表の通算14作目のアルバム。才色兼備のシンガー、ケリ・ヒルソンを迎えた「ナンバーワン」ほか、“リアル・キング・オブR&B”の名にふさわしいナンバーばかりを揃えた一作だ。
収録曲
01CRAZY NIGHT
兄弟デュオのロックシティがR・シティと名を改め参加したカリビアンなホット・ラガ。リル・ロニーとの共作で、R・ケリーの“ウェイヨー”のオートチューン・コーラスとワイルドなディージェイの掛け合いが肝。酒飲んでナンパして……クレイジーな夜を謳歌する。
02EXIT
ジャジー・フェイとの共作。金、名誉、プレイボーイぶりを駆使して“君と一緒にクラブを脱け出したい”と口説くナンパものだが、ドドンと響くスネアの上を軽やかに跳ねる鍵盤のアレンジが楽しく、危険なアヴァンチュールに聞こえさせないテクは見事の一言。
03ECHO
R・ケリーが“ヨロレイ、フー”とヨーデルをかますミディアムR&B。コロコロ転がる楽しげな鍵盤フレーズを繰り返しながら歌うのは、彼女を欠勤させての一日中のメイク・ラヴ。エコーは当然その時こだまする声のことだ。インフィニティとDJキャンパーとの共作。
04BANGIN' THE HEADBOARD
ダリル“DJ”キャンパーとインフィニティとの共作によるミディアム・スローR&B。吐息を耳へかけるような甘ったるい歌唱で、ベッドをギシギシいわせようとかますメイク・ラヴ・ソングだ。ドンッと響くスネアも腰を直撃し、ドエロ・シンガーの面目躍如。
05GO LOW
ベッドで服を脱がせて下(半身)へ行きたいと懇願するド直球なエロ・チューン。“12プレイ”をしてあげると彼のスタイルをほのめかしながら、未熟な男たちへ圧倒的な性の伝道師ぶりを披露。溶けるようなスウィート・ソウルに包まれた妖艶な世界観は、追随を許さない。
06WHOLE LOTTA KISSES
ありったけのキスをキミの身体中にしてあげたいのさと臆面もなく言い切るメイク・ラヴァー。水滴音やワウ・ギターなどが奏でる濃厚な音世界だけでも充分なのに、ウィスパー・ヴォイスやあくまでも優しく突き上げるシャウトも駆使した、90年代ブラコン風だ。
07LIKE I DO
L.O.S.ダ・マエストロ(カルロス・マッキニー)との共作となったエレクトロなR&Bチューン。僕は万能じゃないからできないことがたくさんあるけど、音楽とボディ・テクニックだけは誰にも負けないのさ……と赤裸々に語れるのは、エロの帝王ゆえの貫禄か。
08NUMBER ONE
ケリー・ヒルソンを迎えたアルバム『アンタイトルド』の先行シングル。最高な“ケリー”同士が交わるんだから、ベッドでのメイク・ラヴも当然ナンバー・ワンさとデュエット。ロイとラファエルのハミルトン兄弟によるゆったりとした腰にくるトラックが、艶めかしさを増長。
09I LOVE THE DJ
00年代を席巻したクラブ・エレクトロ調コンテンポラリーR&Bトラックに乗せ、クラブDJに恋した男の心境を歌う。詞は通常よりエロ度は高くないが、シルキーな歌唱でセクシーに心を揺さぶってくるのはさすが。ソウルショック&カーリンとの共作。
10SUPAMAN HIGH
OJ・ダ・ジュースマンを迎えて語るは、スーパーマンよろしく空を飛んで札束ばらまく……といったゴージャスな世界。クラップや“アイ、アイ”といった超裏声を駆使したクランク風バウンス・トラックは、ウィリー・ウィルとの共作。
11BE MY 2
ライズ「ジャスト・ハウ・スウィート・イズ・ユア・ラヴ」12インチ版を拝借したディスコ・チューン。高らかなホーンが懐古的に響く作風は、この手が得意なジャック・スプラッシュによるもの。僕の愛人(2番目)になってと堂々と言えるのは、エロ帝王Rだからこそ。
12TEXT ME
チュチュチュというバックコーラスが愛らしいが、歌っている内容はエッチなメールを送ってきたらそれに応えてあげるという“お誘い”について。ギャスとの共作による、スウィートなミディアム・スロー・バラードだ。
13RELIGIOUS
エリック・ドーキンズ、アントニオ・ディクソンとの共作で、ウォーレン・キャンベルも関与したオーソドックスなバラード。冒頭で神に感謝と言うが、純粋なゴスペルではなく、愛する人へ“君は神がかってる”と告げるラヴ・ソング。いつになく正統派なケリーだ。
14ELSEWHERE
鍵を置いて彼女は部屋から去るという切なく苦しい心境を綴ったスロー・バラード。彼女がいなくてもいつか平気になる……悲しげな“Someday”の歌唱や終盤でのため息には、胸が張り裂けそう。クリストファー“ディープ”ヘンダーソンとの共作曲。
15PREGNANT
プレイボーイな男たちが“君を妊娠させてあげる”と愛人以上をほのめかす口説きソング。タイリース、ロビン・シック、ザ・ドリームがリレーしながら“愛し合おう”と超絶裏声で言い寄る姿は何とも圧巻。ベリス・ボルトンとの共作によるメロウ・ラヴ・バラードだ。
16FALLIN' FROM THE SKY
T・タウン・プロダクションとの共作によるクールなオートチューン・ナンバー。キザでエロ全開のケリーが、ここでは高所恐怖症の事実をナーヴァスに吐露。だが、空から落ちそうな状況でも“僕をキャッチしてくれよ”と相手へのアプローチを忘れないところはさすが。