ミニ・レビュー
前作での大人への脱皮、元カレのクリス・ブラウンとの修羅場を経て、もはや怖いものなしの肝の座ったアグレッシヴな歌声が圧巻の4作目。ビヨンセばりの重厚なパワフルさから、ファーギー的な媚びないキュートさまで、さまざまな顔をクルクルと出現させ、一介のアイドルが大化けした印象だ。
ガイドコメント
2009年11月11日発表の4thアルバム。ジャスティン・ティンバーレイクとチェイス&ステイタスという世界トップのプロデューサー陣を迎え、前作より少し大人になったリアーナの魅力を味わうことができる。
収録曲
01MAD HOUSE
プロデュース・ユニット、チェイス&ステイタス制作による約1分半のイントロダクション。サスペンス映画を思わせるダビーなトラックと物々しいナレーションをバックに、リアーナが“ようこそ狂気の館へ”と出迎える。アルバム『R指定』の世界の幕開けだ。
02WAIT YOUR TURN
スターゲイト制作によるダークなエレクトロ・ポップ。うねるトラックの上に流れるラガ風のメロディ・ラインに乗せ、レディへと成長を遂げた自身を誇りながら、私の仲間になりたいなら待ちなさいと説得する。アダルトな雰囲気に満ちたスリリングな曲だ。
03HARD
“私はハードな女”とハードを気取る奴らとのレヴェルの違いを誇示するアグレッシヴなクラブ・ラガ。客演のジージーも加担し、二人がハードの頂に君臨することを強烈に宣言。トリッキー・ステュワート&ザ・ドリームによるスリリングなナンバーだ。
04STUPID IN LOVE
瑞々しい鍵盤が隅々まで浸透するスターゲイトとニーヨによるシリアスなミッド・バラード。私はバカな女だったと卑下しながら、もうこのバカな恋愛は卒業よと男に三行半を突きつけるあたりは、クリス・ブラウンとの一件を想起させるに十分。悲痛な歌唱で迫る。
05ROCK STAR 101
トリッキー・ステュワート&ザ・ドリームのコンビが手掛けた、ロックスター宣言ソング。スラッシュ(元ガンズ・アンド・ローゼズ)の重厚なギターをフィーチャーした煩雑で混交したナンバーだ。危うさと野生味を兼ねた、新境地といえる歌唱が特色。
06RUSSIAN ROULETTE
陰影が漂うムードのなかで淡々と語られる決意が痛々しい。クリス・ブラウンとの一件を示唆した詞は悲哀とおびえに満ちて、銃声で終えるラストはあまりに衝撃的。クリセット・ミシェル「エピファニー」で知られるチャック・ハーモニーによるミッド・スローだ。
07FIRE BOMB
エッジーなギターが導くロッカ・バラード。火が回った車に乗った二人は爆発で飛ばされ私の半分が消えると、哀れな恋の終焉を歌うが、“マッチを擦ったのはあなた”とグサリ。クリス・ブラウンとの一件をほのめかした決別ソング。制作はブライアン・ケネディ。
08RUDE BOY
スターゲイトによるフューチャリスティックなエレクトロ・ミッド。ダンスホール的なメロディ・ラインを構築しながら、アダルトなムードを醸し出している。今すぐ欲しいからこっちに来てよと誘う、ド直球なメイク・ラヴ・ソングだ。
09PHOTOGRAPHS
二人の関係が終止符を打ち、“私にあるのは写真だけ”と過去の恋に未練する男女の心情を歌う。デュエット役は制作も手掛けたウィル・アイ・アム。哀感漂う比較的穏やかなミッドだが、ウィルのパートはしっかりうねっていて、彼の変態性を巧く組み込んでいる。
10G4L
チェイス&ステイタスによる、ダブの要素を取り込んだ近未来的なクラブ・ダンス・チューン。ガールたちをディスる連中に対して、一生ギャングスタを貫くと勇ましく宣言。闘い続けることを決した歌唱は鋼のように固く、ニュー・リアーナへと変貌したようだ。
11TE AMO
スターゲイト制作の哀愁系ミッド。EXILEの同名曲同様、愛し合う同士ながらハッピーエンドへたどり着けないラヴ・アフェアを歌う。クラブ風アレンジでほどよい無情さでまとまっているが、どちらにせよ、胸が引き裂かれんばかりの切なさが襲う曲だ。
12COLD CASE LOVE
曲名は“時効の過ぎた愛”の意。あなたの愛はルール違反、指紋・証拠写真・チョークの白線はまだ現場に残ってるといった痛切な詞が、諦観を示唆する歌唱でいっそう胸を締め付ける。Y's(J・ティンバーレイク&アンダードッグス)制作のダークなミッド。
13THE LAST SONG
ブライアン・ケネディによるドラマティックなミッド・スロー。同じ歌ばかり聴き飽きたと愚痴るあなたが聴く最後の曲だと、二人の恋の終焉を歌にたとえる。大切に愛し合えば完璧な曲になったはずという部分は、元恋人との私情も含むか。悲壮感が波打つバラードだ。