ミニ・レビュー
心に染みる名曲たちをマイペースに発表し続ける三人組の4枚目のアルバム。ポップスの王道を行く、ストレートな歌詞と親しみやすいメロディ、出すぎず引っ込みすぎない心地よいアレンジ、そして吉岡聖恵のピュアな歌声。そんな彼らの魅力をみずみずしいままにパッケージした作品だ。
ガイドコメント
2009年12月23日発表の4thアルバム。江崎グリコ「ポッキーチョコレート」CMソング「じょいふる」、映画『なくもんか』主題歌の同名曲のほか、メンバー3人それぞれが交互にメイン・ヴォーカルを担当した楽曲も収録した充実作。
収録曲
01ハジマリノウタ〜遠い空澄んで〜
自分の未熟さを認めながらも、夢へ向かって歩みを進める心境を歌ったミディアム・ナンバー。どこか不安げなAメロと開放感に満ちたサビのコントラストが、詞の世界を見事に表現している。ストリングスを配した、さわやかなアレンジも感動的だ。
02夢見台
未来へ向かってがむしゃらに走って行こうと自らを叱咤激励する、元気いっぱいのアッパー・チューン。不安や恐れを振り払うかのように疾走するエレキ・ギターやパンチのあるヴォーカルなど、ポジティヴな空気が楽曲全体を包んでいる。
03じょいふる
江崎グリコ「ポッキーチョコレート」のCMソングに起用されたハッピーなアッパー・チューン。リズミカルなバンド・サウンドにホーンやシンセがアクセントを加え、思わず体が踊りだしてしまうノリノリのパーティ・ソングに仕上がっている。
04YELL
編曲に松任谷正隆を迎えた15枚目のシングルは、「NHK全国学校音楽コンクール」中学生の部の課題曲として制作された合唱曲のアレンジ・ヴァージョン。自分自身を探しながら夢へ向かって飛び立つ人へエールをおくる、切なくも力強いサウンドの応援歌だ。
05なくもんか
寂しさを隠して生きる自分を見つめなおした、繊細な歌詞が胸に迫るミディアム・バラード。優しく包み込むようなヴォーカルには、荘厳な雰囲気すら漂っている。阿部サダヲ主演のハートフル・コメディ映画『なくもんか』の主題歌。
06真昼の月
ピアノとストリングスを配したミステリアスなサウンドに乗せ、大人っぽく歌い上げるミディアム・バラード。“揺蘯(たゆとう)”“食(は)む”“数多(あまた)”など、古風な言葉をちりばめた歌詞が強く印象に残る。
07ホタルノヒカリ
テレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト疾風伝-』のオープニング・テーマとなった、元気いっぱいのポップ・ロック・チューン。不安や迷いを吹き飛ばしてくれるようなクリアかつエネルギッシュな歌声が、強く生きようという勇気を与えてくれる。
08秋桜
挑発的な言葉の数々にドキッとさせられる、危険な香り漂うラヴ・ソング。ドラマティックながらほの暗さを湛えた演奏、緊張感に満ちたヴォーカルなど、彼らのほかの楽曲とはひと味違った魅力が詰まっている。
09ふたり (Album version)
そばにいながらすれ違う歯がゆい想いを、ストリングスを配した痛切なメロディで描いたミディアム・バラード。“抱きしめても……”の吉岡の切ない歌唱に、胸がギュッと締め付けられるようだ。TBS系ドラマ『ぼくの妹』主題歌の13thシングル。
10てのひらの音
メンバー全員がヴォーカルをとるアップ・テンポなナンバー。各々の歌唱力の高さはもちろんのこと、3人の声が合わさったときの言い知れぬ高揚感も特筆もの。“今までもこれからもずっと…”という歌詞からは、バンドとしての強い結束力が感じられる。
11How to make it
BEAT CRUSADERSのヒダカトオル、マシータ、ケイタモが演奏に参加したアッパー・チューン。歌詞に登場する万華鏡を彷彿とさせる、カラフルできらびやかなキーボードの音色が印象的。編曲はヒダカが担当している。
12未来惑星
くやし涙や悲しい思いも、宇宙規模で考えれば些細なこと。そんな気分にさせられる、吉岡作詞・作曲のミディアム・バラード。悠久の時の流れを思わせる壮大なサウンドのなかで時折聴こえる電子音が、いい隠し味になっている。
13明日へ向かう帰り道
物思いにふけりながら街を歩く、夕暮れ時の情景を歌ったセンチメンタルなバラード。微妙な心の機微までが伝わってくるような歌詞、ストリングスとアコースティック・ギターを中心とした穏やかなサウンドが涙を誘う。