ミニ・レビュー
アコギをかき鳴らして歌うパワフルなロック・シンガーのイメージでデビューした彼女。このセカンドでは甘い囁きから強烈なシャウトまで、ロックからピコピコの打ち込みまで、せつない片思いからサラリーマン哀歌まで、一気に幅を広げて見せた。作詞作曲能力のレベルの高さに驚く力作。
ガイドコメント
2010年1月27日発表の2ndアルバム。両A面「伝えたいこと」「I wanna see you」をはじめ、ストレートな恋心を歌った「貴女の恋人になりたいのです」、「いつの日も」といったシングルほか、飾らない感情を綴った楽曲を収録。
収録曲
01未だ
アコギを主体とした抑圧されたヴァースから、感情が高ぶるようにサビへと展開していくロック・チューン。好きだった人との思い出を消せないでいる男の気持ちを叫ぶように歌いあげる。ガラスが割れるような音が傷ついた心を表わすようだ。
02I wanna see you
「カルピスウォーター」CMソングとなった1stシングル。好きな人に突然会いに行ってしまうという衝動的な行動に青春の甘酸っぱさを感じる。リズミカルなギターのカッティングにキャッチーなメロディをのせたロック・ナンバー。
03モンロー
マリリン・モンローみたいになれたらあなたもきっと私だけを見てくれるのに、という女の子の妄想を描いたキュートなエレクトロ・ポップ。アコースティックのイメージが強いだけに、オート・チューンを駆使したヴォーカルや4つ打ちのトラックが新鮮。
04貴方の恋人になりたいのです
叶わぬ恋と知りながら諦めきれない、辛い片想いを描いたミディアム・バラード。アコギ主体のロック・サウンドにストリングスが加わり、壮大なスケール感と繊細さを絶妙のバランスで表現している。高音での揺れやかすれる歌声が、いっそう切なさをかき立てる。
05伝えたいこと
ハスキーな声でパワフルな歌唱を聴かせる1stシングル。言いたいことがあるならちゃんと向き合わないとダメだと背中を押して、素直に“ありがとう”と伝えることの大切さを説く。ストレートで勢いのあるロック・チューンに仕上がっている。
06都合の良い女の唄
アコギ一本をバックにリヴァーブを効かせた歌唱が映える青春哀歌。“キープ的”な男の子を失って、その大切さに気付いて後悔する“都合の良い女”を描いている。あえてマイクから離れた“戻れるなら”というコーラスが胸を打つ。
0715の言葉
ビブラフォンの音色が可愛らしさを演出するポップ・ナンバー。手紙やメールでは恥ずかしくて伝えられない素直な愛のメッセージを、“貴方の耳と目に残る私の歌声で”残すというラヴ・ソングだ。映画『半分の月がのぼる空』主題歌。
08もうひとつのMY BABY
アルバム『ふりぃ』収録の「情けない男の唄」の流れをくんだ女版“長渕”ソング。好きな人がいる女性に片想いをしている男の苦悩を、アコギ一本で弾き語る。絞り出すような歌唱が、無邪気に恋の話をする女性を見つめる男の心の叫びのように響く。
09loving DARLING
陽気なハンド・クラップに誘われるように、心もウキウキとしてくるポップ・ロック。クールな彼に迫る積極的な彼女を描いたちょっとエロティックな歌詞を、甘い歌声でキュートに仕上げている。アウトロの笑い声からは、レコーディングの楽しさも伝わってくる。
10わかるの
ハードなギター・サウンドに憂いを帯びたハスキーな歌唱をのせたロック・チューン。うまくはぐらかしているつもりの男に“わからないとでも思ったの?”と鋭い言葉を突き付ける。女はいつだって気付いている、というメッセージにドキリとさせられる。
11ポーカーフェイス
骨太なベースとビートに重点を置いた快活なロック・ナンバー。傷つかないための“ポーカーフェイス”は生きる術でもあるけれど、“貴方の前では可愛くありたい”という乙女心を見せるところがなんとも愛らしい。
12いつの日も
流麗なストリングスを敷いたトラックに、繊細さと力強さを兼ね備えた歌唱をのせる切ないラヴ・バラード。たとえ離れる日がきても、大切な人と出会えたことを胸に刻んで生きていきたいと綴る。フジテレビ系『エチカの鏡〜』エンディング曲の3rdシングル。
13サラリーマンの唄
上司の話に付き合わされるサラリーマンをモチーフにした、シンプルな弾き語りナンバー。“何にも言えない自分が一番 いやんなるね〜。”というフレーズは、サラリーマンに限らず思ったことを言いにくい現代人の心を表わしているようだ。