ミニ・レビュー
全米デビュー盤でのクールさを継承しつつ、詞にリアルさが加わった7枚目。たえとば自身作詞「This Is Who I Am」は、ビジュアルを含めた自己改革を思わす前置きを綴ったあと、“これは私のCHANGE”と歌う。この踏絵的な楽曲を頭に置いたことで流れに緊張感が生まれ、その分ヴォーカルの表情がダイレクトに伝わる。
ガイドコメント
BoA初のセルフ・プロデュースによる、2010年2月発表の7thアルバム。挑発的なダンス・チューン、自身のリアルな感情を綴った楽曲、コラボレーション曲など、これまでにない新しい彼女を感じさせる渾身の一枚となっている。
収録曲
01This Is Who I Am
“どう見えてる? 私の姿”と問いかけ、この先本当の私を見せるわと語る。マエストロ・Tの美麗なストリングス・アレンジを背景に、ヒット曲「Listen to my heart」「VALENTI」のフックを詞に盛り込んだ、ドラマティックな小品だ。
02EASY
これまでの固定観念や無責任は捨てて、現実社会を自力で歩こうと諭す、若者へのメッセージ・ソング。“それって簡単なこと”を繰り返す、怠惰でルーズなヴォーカルが新鮮。Gakushiによる未来的なアレンジが効いたエレクトロ・ポップだ。
03BUMP BUMP! (feat.VERBAL (m-flo))
客演のVERBAL制作による29thシングル。照りのあるファンキーなサックスを大胆に配したハイテンションなアップで、変哲ない日常も一瞬で輝くから頑張ろうと女子へメッセージを綴る。クールを装うVERBALを尻目に弾けるBoAがキュート。
04LAZER
VERBAL制作によるスペーシーなクラブ・チューン。8ビット・ゲーム音風のポップな効果音を詰め込んだごった煮アレンジをバックに、男を焦らしながら落とす“レーザー”ビームな目を持つ小悪魔的なレディをクールに演じている。
05interlude#1
7thアルバム『IDENTITY』収録のインタールード・パート1。ドアへ近づいてくる足音とドアをバタンと閉める効果音からなる約10秒弱のスキットで、次曲「is this love」へといざなう役割を担っている。
06is this love
誰にも言えない事情を抱えた二人のラヴ・アフェアを歌った、川口大輔制作によるノスタルジックなミディアム・バラード。アダルトな雰囲気も板に付いてきたBoAがつぶやく“これは愛なの?”の自問に、ドキリとさせられる曲だ。
07まもりたい〜White Wishes〜
Wii用ゲーム『テイルズ オブ グレイセス』テーマ・ソングとなった30thシングル。R&B調の切ないラヴ・ソングで、信じる強さを描いた詞はゲームの内容ともリンクしており、離れていても君を“まもりたい”という想いが伝わってくる。
08interlude#2
7thアルバム『IDENTITY』収録のインタールード・パート2。セレブの窮屈な恋愛事情を歌った次曲「ネコラブ」へ続く、約5秒弱のスキットで、カメラのシャッターの音をコンパクトに挿入し、センセーショナルな演出を施している。
09ネコラブ
バレないように身体を丸めてこそこそと逃げるお忍び恋愛を“ネコラブ”とユニークに表現した、コメディ・タッチの曲。有名人の宿命なら受け止めてやるというくだりは、過去の経験から? とも思わせる開き直りが痛快だ。ソウル・ポップス風のコーラスが妙味。
10THE END そして and... (album ver.)
終わりを告げるような雨音から幕を開けるメランコリックなミッド。美麗な鍵盤と泣きのギターをバックに、忘れなきゃと思うほど悲しみが募る辛い心情を語る。艶やかだが憂いに満ちた歌唱で、苦しみに喘ぐ女心を好演。オーディオテクニカCM曲のアルバム版。
11Possibility (duet with 三浦大知)
Nao'ymt制作による、三浦大知を迎えてのデュエット。なぜさよならを言わなきゃならない……と、愛が途絶える寸前の最後の“可能性”に賭けたい男女の切ない機微を綴る。刻々と終焉へ向かうような、諦観を描写するヴォーカルが切ない。
12Fallin'
エフェクト・ヴォイスを駆使したハウス調ナンバー。泣き尽くして失恋を乗り越え、“思い出”に感謝して前を向く晴れやかな心模様を綴る。Gakushiによる「ギヴ・ミー・アップ」を想起させる鍵盤ループが、巧みなアクセントになっている。
13my all
川口大輔の美麗なメロディが胸に染みるスロー・バラード。「ID; Peace B」からのBoAのこれまでの苦悩とこれからの希望をしたためたライフ・ストーリー風で、“君となら歩いていける”というメッセージをファンに優しく語りかけているようだ。