ミニ・レビュー
当セットはシューマン自身のみならず、彼が補筆・編曲で協力したクララやヘンゼルトの作品も収めた好企画。世界初録音もいくつか含む。ヴィノクールは制作に当たり、既出の出版譜の検討から、さらには自ら補筆完成まで携わった。たとえば有名なピアノ協奏曲のもととなった「幻想曲」は、自筆譜から校訂。それゆえ、流通しているEulenburg社のスコアとは異なる箇所が多々ある。演奏はどれもシューマンの語法とムードの双方を大切にしていて好感度大。パターン楽句が多用されつつも、シューマンらしい香気がむせ返るニ短調の協奏曲断章など、ファンにはたまらない。★
ガイドコメント
シューマン作曲の完成品、未完の作品の復元版、さらに他人の作品の編曲版など、世界初録音5曲を含むシューマン生誕200年にふさわしいアルバム。シューマン研究家でもあるヴィノクールの優れた演奏が華を添えている。
収録曲
シューマン:
[Disc 1]
01幻想曲イ短調
02序奏とアベッグによる主題
03ピアノ協奏曲ヘ長調 (補筆およびオーケストレーション:レフ・ヴィノクール)
04ピアノ協奏曲断章イ短調 (クララ・ヴィーク/シューマン補筆)
05ピアノ協奏曲断章ニ短調 (補筆・完成:ヨーゼフ・デ・ベーンホウェル)
[Disc 2]
01ピアノ協奏曲へ短調op.16 (ヘンゼルト/シューマン編)
02ピアノ協奏曲イ短調op.54
[Disc 3]
01コンツェルトシュトゥック ヘ長調op.86 (ピアノと管弦楽のための演奏会用ヴァージョン)
02序奏とアレグロ・アパッショナート ト長調op.92
03序奏と協奏的アレグロ ニ短調op.134
演奏
レフ・ヴィノクール(P) ヨハネス・ヴィルトナー指揮 ウィーン放送交響楽団