ミニ・レビュー
マイケルが生前レコーディングしていた未発表新曲ばかり10曲をまとめた9年ぶりのアルバム。エイコンや50セントとのデュエット曲や、レニー・クラヴィッツが作曲プロデュースを手掛け、デイヴ・グロールがドラムで参加した話題曲など、マイケルの遺志を継いで仕上げた各楽曲の高い完成度はさすが。
ガイドコメント
厳選した少数のコラボレーション相手とともに、ニュージャージーの友人宅、ラスヴェガスのスタジオなど、各地で継続的に作曲活動とレコーディングを行なっていたマイケル・ジャクソンの音源をまとめたアルバム。エイコン、50セントらを迎えた楽曲も収録。
収録曲
01HOLD MY HAND
『MICHAEL』からの1stシングルに選ばれたエイコンとの共演作。元来2008年発表予定だったが、未完成版がネット上にリークされ正式発表が中断となっていた。エイコン独特のアーシーな感性が降り注がれたホープフルなミディアム・チューンだ。
02HOLLYWOOD TONIGHT
スリリングでドラマティックな映画音楽を想わせるエキサイティングなナンバー。テディ・ライリーとセロン“ネフU”フィームスターが制作参加。NJS的グルーヴと直線的なビートで、ショウビズの闇を歌う。ブリッジの冷淡なナレーションは甥のタリル・ジャクソン。
03KEEP YOUR HEAD UP
トリッキー・ステュワートとアンジェリクソンとの共作によるファンタジックなメロウ・チューン。どん底の時に“さあ、顔を上げて”と励ましてくれるメッセージ・ソングだ。多幸感あふれるバック・コーラスとともに上昇するクライマックスは絶品。
04(I LIKE) THE WAY YOU LOVE ME
2004年発表の『アルティメット・コレクション』に収録のデモを練り上げた、こぼれ落ちるような美しいメロディが白眉のミッド。微笑ましい至福の愛の歌で、マイケルのピュアな気持ちが存分に感じ取れる。セロン“ネフU”フィームスターとの共作。
05MONSTER
2010年版「スリラー」といえるテディ・ライリーとアンジェリクソンとの共作。スターの座と引き替えに失うハリウッドの恐怖がテーマのエンタテインメントな曲だ。重々しくグルーヴィなビートとコーラスの抜けの良さが快感。野放図な50セントのラップも効果的。
06BEST OF JOY
2009年O2アリーナ公演のため滞在したロンドンで仕上げようと計画された曲。非常に美しい声で優しく寄り添うように歌う。“僕たちは永遠”と語るマイケルは、ピュアな心そのものだ。セロン“ネフU”フィームスターとブラッド・ブクサーとの共同制作。
07BREAKING NEWS
マイケルの日常を伝えるメディアをユニークに描いた、ニュージャージーの自宅録音の2007年作。NJS風のシンセとシリアスなムードのストリングスが映えるセンセーショナルなダンサーだ。プロデュースはテディー・ライリーとアンジェリクソンとの共作。
08(I CAN'T MAKE IT) ANOTHER DAY
『インヴィンシブル』期にデモ録音したレニー・クラヴィッツとのコラボ。レニー風サウンドにマイケルのシャウトが飛び交うロックだが、2008年に流出騒ぎへ発展。君がいないと生きていられないという愛の歌だ。ドラムにフー・ファイターズのデイヴ・グロールが参加。
09BEHIND THE MASK
YMO『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』収録曲のMJ版で、ジョン・マクレーンとの制作。当初は『スリラー』収録予定だった。レトロフューチャーなシンセ・コードのリフレインが漂流感を与える宇宙的ロックで、YMO演奏音源も使用。シャニースがコーラス参加。
10MUCH TOO SOON
『スリラー』期に書かれた美しいメロディ・ラインが白眉のシンプルなバラード。“早く大人になりすぎたのかも”という哀切な歌唱が、普通の環境で育ってこなかった寂しさを物語るようだ。少年時代の憧憬を懐かしむようなトミー・モーガンのハーモニカも適役。