ミニ・レビュー
バルバドス出身の人気シンガー、リアーナの5作目。制作者はザ・ランナーズ他、いろいろ。ギザギザした質感を持つ自分の歌声をきっぱりとデジタル経由サウンドにのせるさまは胸がすく。魅力的なキャラクターと歌いたいという強い気持ちが、見事に仁王立ちしているのだ。
ガイドコメント
“21世紀のスーパー・ディーヴァ”と呼ばれるシンガー、リアーナの5枚目となるアルバム。シングル「オンリー・ガール(イン・ザ・ワールド)」を含む全11曲を収録。ドレイク、ニッキー・ミナージュ、エミネムをフィーチャーしたナンバーも。
収録曲
01S & M
挑発的な“ナナナナ、カモン”のフックが耳に残るスターゲイト&サンディ・ヴィー制作のクラブ・エレクトロ。テーマが“SM”だけあって、PVは11ヵ国で放映禁止になるなど話題となった。チェーンとムチにムラムラすると叫ぶ、禁断の愛へのいざないだ。
02WHAT'S MY NAME
5thアルバム『ラウド』からの2ndシングルとなったスターゲイト制作のクラブ・ポップ。レゲエ・フレイヴァの“オー、ナナ”のフレーズは、レゲトン“出身”のリアーナによく似合う。序盤でドレイクが口説くが、その後はリアーナが終始熱を上げている。
03CHEERS (DRINK TO THAT)
“イェイイェ! イェイイェ!”の掛け声が印象的なアヴリル・ラヴィーン「アイム・ウィズ・ユー」をバックに配した、ザ・ランナーズ制作曲。週末に乾杯して、呑んで忘れようという曲だが、アヴリルのハイテンションに対してリアーナの歌唱は意外と低めのチル・モードだ。
04FADING
すれ違った二人の愛の終焉を告げるポロウ・ダ・ドン制作のR&B。ファンタジックな雰囲気で幕開けするが、ファルセットを駆使して歌われるのは“あなたが消えてゆく”と繰り返される決別の言葉。瑞々しくもおぼろげなサウンドが戻せない時の切なさを伝える。
05ONLY GIRL (IN THE WORLD)
5thアルバム『ラウド』からの1stシングル・カット。スターゲイト&サンディ・ヴィー制作のフロアライクな4つ打ちで展開する、世界で私だけのものになりなさいと告げるメイク・ラヴ・ソングだ。高圧と小悪魔を行き来するリアーナのヴォーカルに魅了される。
06CALIFORNIA KING BED
ザ・ランナーズのプロデュースによるミディアム・スロー・ナンバー。すぐ近く隣にいた愛する人が遠くに感じる心境を綴ったロッカ・バラードで、西海岸を想起させるカラッとしながらも侘びしい雰囲気のサウンドが全編に漂う。
07MAN DOWN
マイナーなレゲエ調ビートとウェスタンなムードで展開する哀愁のラガ・チューン。巻き舌で歌う“ラン バン バン バン……”とバックに微かに流れる緊迫したサイレンが伝えるのは、“男を撃った”という衝撃的な独白だ。プロデュースはシャム。
08RAINING MEN
ニッキー・ミナージュを迎えたメル&マス制作のサウス・フレイヴァの“ゴキゲンビート”トラック。男なんて雨のように降ってくるから困らないと、リアーナとニッキーともに選び放題の“買い手市場”を気取る。男にとってはタジタジのコンビだ。
09COMPLICATED
愛するって複雑というため息が聞こえてきそうな男女の仲について歌った4つ打ちダンサー。愛してるのにうんざり……とにかくもどかしさから解放してという祈りにも似た叫びを伸びやかなヴォーカルで披露する。制作はトリッキー・ステュワート&エスター・ディーン。
10SKIN
サウンズのプロデュースによる濃密なナンバー。不穏とも甘美ともいえる雰囲気に支配されながら歌われるメイク・ラヴァーで、裸のあなたを見せてと誘うジリジリとした展開に思わず息を呑む。終盤のギターのいななきは、恍惚そのものだ。
11LOVE THE WAY YOU LIE (PART2)
ドメスティック・ヴァイオレンスをテーマにしたエミネムのシングル・ヒットの客演返しとなる続編。DVとなるとどうしてもクリス・ブラウンとの一件を思い出すが、ここでは互いを傷つけ責め合う偏屈な愛情を歌う。アレックス・ダ・キッド制作のシリアスなミッド。
12ONLY GIRL (IN THE WORLD)
5thアルバム『ラウド』の1stシングルのリミックス。UKダンス・ポップ・プロジェクト、ビンボ・ジョーンズのリー・ダガーとマーク・ジャクソン・バロウズが、フューチャーディスコ感を増したエレクトロハウス・ダンサーに仕立てた。声量の圧巻ぶりは変わらず。
13ONLY GIRL (IN THE WORLD)
『ラウド』からの1stカットで9曲目の全米No.1ヒットを記録したシングル曲のリミックス。カナダ人DJのCCWことカジミア・レイによるユーロビート色を意識したデジタル感の強いハウスで、フィルター・ハウスの要素も効果的に組み込んで機密性を高めている。