ミニ・レビュー
衝撃の『ひこうき雲』(73年)から数えて多様と充実の36作目。前年度に発表されたシングル「ダンスのように抱き寄せたい」「バトンリレー」をはじめ、映画やCMなどに提供した作品が多いこともあり、各楽曲が独自の魅力をアピールする一方、アルバム全体も洒落た統一感がある。
ガイドコメント
約2年ぶりとなる36枚目のアルバム。「ダンスのように抱き寄せたい」「バトンリレー」などのシングルや、コーセーCM起用曲、ニンテンドー3DSソフト『レイトン教授』エンディング・テーマ「Mysterious Flower」などを含む、全11曲。
収録曲
01ひとつの恋が終るとき
タイトルどおり別れを選択した恋人同士の風景と女性側の心情を綴ったセンチメンタルなポップ・ソング。ただ感傷に浸るだけではなく、“強くなる”という歌詞とともに前へ進む心境を描いた、ストーリー性のある楽曲に仕上がっている。
02Mysterious Flower (Album Version)
レゲエ調のリズムと切なくも優しいメロディが意外(?)にもマッチした、ニンテンドー3DS専用ソフト『レイトン教授と奇跡の仮面』エンディング・テーマ。スティールパンの涼し気な音色とホーン隊の陽気なサウンドがトッピングされた、夏にぴったりのナンバーだ。
03I Love You
哀愁漂うピアノの音色がタイトルの切なさを象徴しているポップ・ナンバー。周囲に「ひどい奴」と言われる男。でも、私は信じている……。“限りなく まぎれもなく あなただけ”と自分自身に言い聞かせるかのようなリフレインが印象的だ。
04今すぐレイチェル
夢見心地でありながら狂気を感じさせる童話タッチの歌詞が興味深く、さまざまな想像力を働かせてしまうポップ・ナンバー。緊張感のあるマイナー・コードの旋律によって、いっそうストーリーに躍動感を与える仕上がりとなった。
05夏は過ぎてゆき
失恋してしまった女性の心情を切々と綴った歌詞を柔らかいストリングスの音色が包む、ハートウォーミングなナンバー。心がすれ違ってしまったことに後悔しながらも、失ってしまった愛は取り戻せないということを客観的に理解している大人の女性像が浮かび上がる。
06太陽と黒いバラ
未練たっぷりな女の胸のうちを綴ったラヴ・ソング。ジメジメとした感じがまったくしないのは、ラテン調の軽快なリズムとホーン隊のゴージャスな音色による陽気なサウンドのなせるわざ。歌詞は決して前向きではないのだが、涙を拭いて前に進んでいく力強さが垣間見える。
07コインの裏側
ひとりで高速道路を走りながら別れを決めた恋人のことを想う、ユーミン真骨頂のラヴ・ソング。最も気持ちが高ぶるサビの部分で、胸の鼓動に呼応するかのようにトランペットの音色を取り入れるなど、完成度の高い名曲だ。
08夢を忘れたDreamer
幸せをつかもうと頑張るすべての女性たちへ向けた応援歌。“うんざりしそうな 毎日のなかに でもときどき キラリよぎる流星を見る”など、日々の生活にお疲れ気味の人こそホロリときてしまうであろう、癒し効果抜群の歌詞がちりばめられている。
09GIRL a go go
幸せをつかもうと頑張るすべての女性たちへ向けた応援歌。アルバム『Road Show』収録曲では「夢を忘れたDreamer」も同様の応援歌だが、それよりもストレートな“チャレンジ”“精悍な戦士”など、ポジティヴなワードをちりばめたパワフルなナンバーとなった。
10バトンリレー (Album Version)
我が子へ向けた親からのメッセージ・ソング。子を持つ親の普遍的な気持ちをリレーにたとえて綴った歌詞は、シンプルにまとめてあるが聴けば聴くほど奥深い。哀愁漂うエヴァーグリーンなサウンドがよりいっそう感動を呼ぶ。
11ダンスのように抱き寄せたい (Album Version)
好きな人と過ごす日々をダンスにたとえて、永遠に踊っていたいと願うラヴ・ソング。時が流れて関係性が変わっていくことや、老いについての不安などを間接的にみごとに表現しながら、それでも“ずっと踊ろう あなたと”と綴る健気な一曲だ。