ミニ・レビュー
並々ならぬ日本びいきで、2011年6月の来日時にも東北太平洋沖地震に関して日本に対する想いを涙ながらに語ったレディー・ガガの3作目。彼女らしい派手できらびやかなエレクトロ・ダンス・ミュージックではあるが、詞に目を転ずると、表面からは窺い知れないディープなメッセージが見えてくる。★
ガイドコメント
セクシーに過激に魅了するポップ・アイコン、レディー・ガガの約1年半ぶりとなる3枚目のアルバム。全米No.1シングルとなった「ボーン・ディス・ウェイ」をはじめ、第2章開幕にふさわしい、さらに進化を遂げたガガのアートの世界を堪能できる。
収録曲
01MARRY THE NIGHT
フェルナンド・ギャリベイとの共作によるクラブ・エレクトロ。“夜と結ばれる”と宣言する歌だが、奇特な目で見られようが闇の世界で突っ走るわという決意にも似た気概を感じる。夜の摩天楼を疾走するように痛快だ。
02BORN THIS WAY
今生きている自分を愛して突き進め! と声を大にするエレクトロ・ダンサー。ヤッパ“シニア”ローアセンとフェルナンド・ギャリベイとの共作で、マドンナ「エクスプレス・ユアセルフ」似な曲調は物議も醸したが、ガガの歌唱はそんな些細なことはどこ吹く風と力強い。
03GOVERNMENT HOOKER
マイナーなユーロ・エレクトロ風のサウンドが背徳感を生み出すポール・ブレア(DJホワイト・シャドウ)との共作曲。神妙なオペラ風のイントロから堕落していくような展開が印象的。カネを払うなら売女にもなるという強烈なアイロニー・ソングだ。
04JUDAS
抑揚の激しい“ジューダス、ジューダ、アー、アス”のフックがクセになるクラブ・エレクトロ・ダンサー。人間の二面性を美徳のイエスと悪魔のジューダスとし、私はその悪魔に恋しちゃったのと語る。レッドワンとの共作によるセンセーショナルなナンバーだ。
05AMERICANO
スパニッシュやヒスパニック風情が漂うノスタルジックな旋律が特色のユーロ・ポップ。“捕まえないで、法のギリギリを生きている”のフレーズは、さまざまな問題を抱えるアメリカの苦悩を物語る。ガガの歌唱もバワフルだがどこか虚しさを帯びている。
06HAIR
髪のように自由でありたいと願う自己解放ソング。私は変人じゃなくて戦い続けているだけというくだりは、まさにガガの本音の吐露か。サックス音を加えたAOR的なドラムが効いたヴァースとバキバキしたエレクトロなブリッジを巧みに組み込んだ、レッドワンとの共作曲。
07SCHEI゚E
ファルコ「ロック・ミー・アマデウス」を意識したようなドイツ語ラップ・パートが魅力のクラブ・エレクトロ。ヨーロッパの洒脱なエッセンスとUSコンテンポラリーを行き来する展開は、レッドワンが大きく手を貸している。
08BLOODY MARY
まどろみが漂うファンタジーな演出は、タイトルと同名のカクテルで陶酔していくかのよう。這うような硬質なビートが幻想的な世界を助長する。“流血のメアリー”を引用するも、真のテーマはやはり“愛”だ。ポール・ブレアとの共作曲。
09BAD KIDS
ヤッパ・ローアセン、フェルナンド・ギャリベイ、ポール・ブレアとの共作によるユーロ・ポップ。軽蔑してきた世間へ“あたしはワルガキ”と開き直る。ただ“それでも生き残る”と叫ぶのがガガらしい。型にはめられて苦悩する若者へ拳をかざせと煽るメッセージ・ソングだ。
10HIGHWAY UNICORN (ROAD TO LOVE)
孤独なものだけが愛の勝負に勝てると、自身をユニコーンの後を追うポニーに見立てて叱咤激励する。“今夜こそ強くなれる”というフレーズは、自分に言い聞かせるような強い決意だ。レッドワンらとの共作による、清々しさが広がるコーラスが印象的なエレクトロ・ポップ。
11HEAVY METAL LOVER
フェルナンド・ギャリベイとの共作によるクールなクラブ・エレクトロ。ヴォイス・エフェクトを駆使したテクノ風のアクセントが、禁断の世界を演出する。妖艶な大人の遊びをヘヴィー・メタルとしたセンスは、ガガならではだ。
12ELECTRIC CHAPEL
“ドゥー、ドゥドゥ……”のフックが耳に残る、ポール・ブレアとの共作によるクラブ風ロック・チューン。硬質なギターに煽られるように、ガガの歌唱もハードだ。純粋な愛を“汚れた愛し方”で……それを誓い合うのが、エレクトリック・チャペルだ。
13ユー・アンド・アイ- YOワ AND I -
ロバート・ジョン“マット”ラングとの共作によるスタジアム・ロック風ナンバー。クイーン「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を拝借し、ブライアン・メイがギター参加など、クイーンへの愛に満ちあふれている。美しいコーラス・ワークも、当然意識してのもの。
14THE EDGE OF GLORY
鼓動にも似た音から幕を開ける、フェルナンド・ギャリベイとの共作曲。ロック・テイストのクラブ・チューンだが、高鳴るサックスやポジティヴなビートが広がりを感じさせる。栄光の崖っぷちにいるとは、ショウビズの酸いも甘いも知ったガガらしい描写だ。
15BORN THIS WAY
「Android au」CMでも話題の2ndアルバムの先行シングルのリミックス。デイヴィッド・ヨストとドイツ人プロデューサーのヨッヘン・ナーフによるもので、爆発的な高揚感を持つ原曲に対して陰影を帯びたマイナー調のヨーロッパ的なアレンジ演出をしている。
16BORN THIS WAY
過去にはt.A.T.u.作品も手掛けたグエナLGのプロダクションによる、2ndアルバムの先行シングルのリミックス。リミキサーはジュリアン・キャレットで、“ボーン・ディス・ウェイ”のリフレインが印象的なテクノ・トランス色を強調したアレンジとなっている。