ミニ・レビュー
双子の母親にもなったセレブ歌手、3年強の間を空けて、レコード会社を移籍してのアルバム。トリッキー・スチュワートほか、数々の制作陣を雇い、総花的現代ダンス・サウンドにどこかラティーノ的残り香を持つ歌を乗せる。レディー・ガガが曲を提供しているのも話題。
ガイドコメント
ユニバーサル移籍第1弾となるアルバム。80年代後半に一世を風靡した情熱的なダンス「ランバダ」をサンプリングし、客演にピットブル、制作にレッドワンを迎えた「オン・ザ・フロア」を筆頭に、フロア・キラー満載。“J.Lo”がシーンを再燃させる。
収録曲
01ON THE FLOOR
キューバ系アメリカンMC、ピットブルの武骨なフロウを噛ましたダンスフロア・チューン。レディー・ガガ仕事で著名なレッドワンが配したのは、世界的にヒットしたカオマ「ランバダ」。その情熱的な旋律とJ.Loの艶やかさが融合したゴージャスなパーティ・ソングだ。
02GOOD HIT
トリッキー・ステュワート&ザ・ドリーム制作のクラブ・エレクトロ。クランクやサウスの要素を多分に含んだ粘着質系のヒップホップ・トラックをバックに、“(私を彼女にしたら)大当たりの女よ”と誘惑。J.Loだからこその説得力がある、最高のセレブ宣言ソングだ。
03I'M INTO YOU
リル・ウェインとJ.Loが互いに夢中だと掛け合う愛の告白ソング。カリビアンっぽくもある“ナナ、ナナナナ”や“エーイ”のフレーズを組み込みんだ、ラテン調エレクトロに仕立てたのはスターゲイト。陽気でセクシーな色合いはJ.Loにマッチしている。
04(WHAT IS) LOVE?
ラヴ・アフェアで浮き名を流してきたセレブのJ.Loが“愛って何?”と問いかける。恋愛ゲームはもうこりごりという想いの歌唱が伝わるのは、実際の経験からか? リアーナなどを手掛けた新進のDマイルによる、微かな哀愁が漂う旋律が耳を引くクラブ・ミッド。
05RUN THE WORLD
トリッキー・ステュワート&ザ・ドリームによるエレクトロなシンセ・サウンドを敷いたミディアムR&B。私と一緒なら絶対に損はしないし、世界を駆け巡ることだってできるとアピールするJ.Loに逆らう術はなし。爽涼としたカリビアンな雰囲気も魅力。
06PAPI
攻撃的に迫るビートにラテンな色彩を重ねたトラックは、レディー・ガガ作品でもおなじみのレッドワン。あなたの大切な人のためにボディを動かしてと高らかに呼びかける。エレクトロ・ハウスのスリリングなアレンジが妖艶度も上昇させる。
07UNTIL IT BEATS NO MORE
消えかかっていた私をあなたが救ってくれたと感謝し、永遠の愛を誓うラヴ・ソング。私は生きてる、呼吸もしてる、信じてるし……恋もしてると畳み掛けるフックは、生命力にあふれている。レディオ制作のミディアム・トラック。
08ONE LOVE
Dマイル制作のエスニックなトラックが特色のエレクトロ・ミッド。私にとって人生最高の唯一の愛ってあるのかしらと自問する、J.Loの本音ともとれる詞にドキリ。陽気だが切なくもあるメロディが、愛に迷う彼女自身を投影しているよう。
09INVADING MY MIND
制作はレッドワン、レディー・ガガ、ビートジーク&ジミー・ジョーカーの面々との共作。攻撃性やダンサブルな要素を融合させたクラブ・アップだ。心が襲われるどうしようもない感情を、J.Loがホットに歌い上げている。
10VILLAIN
熱く悩ましいヴォーカルで魅了する失恋ソング。復縁を迫る相手に対し、真冬より冷たい態度で“私が悪者”と自虐的に突き放す。哀愁漂う旋律の上で“ラヴ”を繰り返すブリッジが胸を切り刻む、トリッキー・ステュワート&ザ・ドリーム制作のエレクトロ・クラブ・ミッド。
11STARTING OVER
興奮を煽るクラップが先導するネイト“デンジャ”ヒルズ制作の軽やかな4つ打ちアップ。制作陣にJ.Loの名前はないが、嘘や秘密を抱えた彼とのやり直しが効かなくなるという詞は、私生活を示唆するかのよう。失恋を拒む歌だが、案外晴れやかな歌唱も意味深だ。
12HYPNOTICO
ジミー・ジョーカー制作、レディー・ガガらレッドワン陣営も参加のクラブ・ダンサー。哀愁漂うラテン・マイナー調の旋律とうねるボトムはなるほどガガ風の曲調だが、そこはポップとラテンの融合の先駆者らしく堂々たる佇まいだ。酔わせてアゲると誘うフロア・キラー。
13EVERYBODY'S GIRL
セレブにしか解からない苦悩、カメラのフラッシュやごった返す人波……。そんなみんなに愛される名声ある女の子を愛せる? と挑発するラヴ・ゲーム・ストーリー。マイク・カレン&オリジーによるユーロ・ポップ風ダンサーだ。
14CHARGE ME UP
ユーロ・ポップとシンセ・ハウスを巧みに融合させたレッドワン、ビート・ジーク&ジミー・ジョーカー制作曲。レディー・ガガ「ジューダス」あたりの作風だが、アーバンなラテン的色彩を加えてJ.Loオリジナルへと昇華。満タンにして! とねだるフロア・ダンサーだ。
15TAKE CARE
リアーナ「ルード・ボーイ」を巧みに敷いたトリッキー・ステュワート制作のバウンシーなナンバー。繰り返すフレーズを多用して中毒性の高いフックを構築。デバージ「アイ・ライク・イット」の定番ネタの引用も絶妙な、キュートな直球ラヴ・ソングだ。
16ON THE FLOOR (VEN A BAILAR)
日本でも89年にブレイクした世界的ヒット「ランバダ」をサンプリングしたダンスフロア・チューンのスペイン語版。元来ラテン的な側面があるJ.Loだけに、楽曲の情熱度も原曲よりさらに上昇。ピットブルもしっかりとスパニッシュなフロウで援護している。
17ON THE FLOOR
CCWことカジミア・ワレイによる、89年のヒット「ランバダ」サンプリング曲のリミックス・ヴァージョン。オリジナルがすでにアガるパーティ・チューンなだけに、高揚感を削がずに底上げするテクノ・ハウス風の演出で盛り上げている。