ミニ・レビュー
2007年デビュー、マレーシアと豪州の血を引く在LAシンガーの、日本マーケットに向けてのアルバム。全曲カヴァーで、多くの曲は日本曲であるのがポイント。中には本人が英語詞を手がけていたりもし、「上を向いて歩こう」と「Missing」は日本語で歌う。しなやかな、潤いある歌唱が前面に出ている。
ガイドコメント
LA在住の女性R&Bシンガーによる邦楽ヒット・ナンバーを中心とした英語カヴァー・アルバム。時代を超えて愛されるJ-POPの名曲が英語で歌われることにより、新たな趣を伴って胸に響いてくる。
収録曲
01BABY I LOVE U
TEEの2ndシングルのカヴァー。ハートウォームな肌あたりのミディアム・スローによる大切な人へ送るラヴ・ソングで、時折見せる悲しげな表情が浮かぶ声色が胸をグッと締め付ける。“ベイビー・アイラブユー”のリフレインがどこまでも切ない、2011年の人気曲。
02SUNSHINE GIRL
蒼井優出演の資生堂「ANESSA」CM曲として話題となったmoumoonの7thシングルのカヴァー。夏の陽射しをいっぱいに受けた陽気で開放感全開のサマー・チューンで、ラガホーンがさらなる高揚感を演出。LA在住のシェネルにピッタリのラッキー・ソングだ。
03FOR YOU
ジャパニーズ・レゲエ・シンガー、leccaの2009年発表のシングルのカヴァー。大切な人への想いを綴ったラヴ・ソングを、陽気で幸福感に満ちたレゲエのリズムで描写。健康的な美貌のシェネルのイメージも功を奏して、ラヴリーなナンバーとなった。
04SO SICK
Ne-Yoのヒットのカヴァー。原曲は切なさがどこまでも募る曲調だが、ここではシェネルのメリハリの効いたヴォーカルを強調した推進力の高いビートに添うアレンジとなっている。哀愁よりもパッションを押し出したプロデュースは、ZANEとEIGOによるもの。
05SAKURA
切なく響く“さくらひらひら〜”のフックで知られる、いきものがかりのメジャー・デビュー・シングルのカヴァー。メロディアスで非常に日本的な曲調だが、エレクトロをアクセントにしたR&B仕様とすることでシェネルの歌唱力が活きる作風へと変化させている。
06EVERYTHING
フジテレビ系ドラマ『やまとなでしこ』主題歌としてビッグ・ヒットとなったMISIAの2000年発表の7thシングルのカヴァー。壮大なムードのバラードをゆったりとした穏やかなレゲエ・テイストの曲調へと変貌させ、ハッピーな雰囲気を多めに配分したアレンジに。
07ガラス越しに消えた夏
大沢誉志幸プロデュースによる86年リリースの鈴木雅之ソロ・シングルのカヴァー。心にチクリと刺さる切ない想い出を振り返る淡い失恋ソングを、バックビートによるレゲエ調を加味したトラックで綴る。終盤では情熱的な歌唱もみせる、スウィートで爽やかなナンバーだ。
08MISSING
久保田利伸の人気バラードの英詞カヴァー。プロデュース・ユニット、メジャー・ミュージックのザ・ラット・パック名義時代の制作で、ややビートを効かせるもヴォーカルの陰影を強調したシンプルなアレンジに。ソウルフルでメロウな佇まいは損なわない名カヴァーだ。
09SAVING ALL MY LOVE FOR YOU
世界的なトップ・シンガー、ホイットニー・ヒューストンの85年リリースのデビュー・アルバム『ホイットニー・ヒューストン』の2ndシングルがオリジナル。エレガントな質感を持った大人の色気がたっぷりと漂うヴォーカルが魅力のラヴ・バラードとなった。
10LOVIN' YOU
原曲はミニー・リパートンによるスタンダードなラヴ・ソング。原曲の聴きどころはなんといってもコーラス・パート終わりのホイッスル・ヴォイスだが、シェネルもしっかりと綺麗なファルセットを披露。対照的にラストは恋焦がれるようなスキャットで愛を伝えている。
11WITHOUT YOU
山下達郎の曲にデビー・ギブソンが英詞をつけてヒットしたTBS系ドラマ『男について』テーマ曲のカヴァー。山下は後に「さよなら夏の日」として発表している。綺麗な夕空を眺める風景が浮かぶような美しいメロディにしっかりと応えた、ハートフルな歌唱がグッとくる。
12上を向いて歩こう
「スキヤキ」として知られる、米・ビルボード週間1位、年間でも10位を記録(1963年)した坂本九の世界的名曲。シェネルは英詞ではなく原曲の日本語詞のまま歌っているが、静かながらも情感を込めた歌唱は見事。深遠な夜空を想起させるシンプルなカヴァーだ。
13MISSING
オリジナルは久保田利伸の86年発表の1stアルバム『SHAKE IT PARADISE』収録曲。英詞版とは異なり、ほんのわずかに日本語に不慣れかと思える箇所もあるが、それは“あら捜し”のレヴェル。巧みなフェイクで自らのものにする姿は素晴らしい。