ミニ・レビュー
約2年ぶりのフル・アルバムとなる5作目。重めのトラックに乗せるすさまじいまでのフロウが印象的な「基準」に始まり、阿部真央をフィーチャーした「微炭酸シンドローム」、さらにシングル曲まで、どこを切ってもKREVAらしさが詰まっている。攻撃的な姿勢を保ち続けるリリックにも注目だ。
ガイドコメント
KREVAの2年ぶり、通算5作目となるフル・アルバム。シングル「挑め」「C'mon,Let's go」「KILA KILA」など、全12曲を収録。イケイケの作品になったと語る自信作で、最新型のKREVAが堪能できる。
収録曲
01基準
ホンモノを選ぶ眼や価値判断を持てとハードなビートとともに迫る攻撃性高めのトラック。2分強だが、“全然違う〜”以降の高速ラップや「マカー GB-mix」「国民的行事」といった自身の曲を組み込んで、ホンモノの基準を誇示するKREVAらしい上目線ソングだ。
02挑め
信念貫き常に頂点へ挑めと煽るアグレッシヴな14thシングル。なった者でしか解らない勝者の孤独と誇りを勇んでフロウするが、サラッと“ALWAYS 何丁目にも夕日が輝く”“東京事変より能動的”などと遊びを組み込む余裕がKREVAらしい。
03KILA KILA
MAJOR MUSIC制作参加の16thシングル。逆境をはねのけ輝かしい未来へ突き進めという励ましを抑揚ある“キラキラ”のフックに包含。チープなシンセやヴォイス・エフェクトを駆使したトラックとは対照的な、力強く快活なメッセージ・ソングだ。
04蜃気楼 (feat.三浦大知)
意中の女性を追いかけては消える蜃気楼にたとえたメランコリックなナンバー。KREVAによる煙たく寂れたロック風ヴァースと三浦大知が哀切な歌唱をみせるR&Bダンサー風フックとのシンクロが見事だ。トラック制作はMAJOR MUSIC。
05呪文
身に染み込んで離れないパーティ・ライクな自分がふたたび目覚める様子を綴った曲。脳内に浮かんだ意識を示した“アイムフレッシュアイムドオプ……”以下のエフェクト使いフレーズは、まさに呪文のよう。暗闇を漂うようなムードのドープなトラックが印象的だ。
06runnin' runnin'
まどろみに包まれるようなジャジィなマイナー調クラブ風トラックの海を、肩の力を抜いたKREVAのフロウが泳いでいく。濃厚ながらも心地よく染みわたる陰りのあるサウンドに乗せ、日々の苦悩や憂鬱から抜け出せない心境を語るムーディなナンバーだ。
07HOT SUMMER DAYS
メロウなグルーヴに支配されたサマー・ナイト・クルージン・アンセムといったところか。夏特有の気だるさをしっかりと具現したナヨナヨ加減のフロウが、じんわりと肌に張り付いていくようだ。頭よりも身体に訴える密着感もたまらない。
08微炭酸シンドローム (feat.阿部真央)
盟友・熊井吾郎のトラックに阿部真央を迎えた、黄昏モードのメロウ・ヒップホップ。阿部真央の甘く妖しげな誘いにドギマギする男子=KREVAという構図が楽しい。甘酸っぱさとほろ苦さを多分に含んだ、淡い大人のナンバーだ。
09パーティーはIZUKO?
MAJOR MUSICの手腕が光るクラブ・ファンク風。イヴリン“シャンペン”キング「ラヴ・カム・ダウン」あたりのダンクラ/ディスコな太いボトムに乗せ、自分で動かなきゃ何も変わらねぇ!と煽る。やるべきことをパーティと置き換えたリリック・センスも美味。
10C'mon、Let's go
15thシングル。目指すゴールが同じなら個々はそれぞれのベストを尽くせばOKとKREVA流「最高のチーム論」を説く。オートチューン&ヴォコーダーとシンセを大胆に採り入れ、ソリッドで変則的なビートが展開するステッパーズ系の上機嫌ラガ・ポップ風だ。
11EGAO
重苦しさや心細さから解き放つのは君の笑顔だけと語る、シンプルなメッセージ・ソング。澄明な鍵盤と心拍にも似た刻々としたビートが溶け合ったトラック上で、ゆりかごのような穏やかな時間が漂う。エフェクト使いのフロウや電子的なアクセントもどこか空間的な装いだ。
12探究心
完璧に近づいてもまた高みを望む探求心が生まれる……向上心の高いKREVAらしい思考が強く表われた16thシングル。メロウなソウルとフュージョン的なムードが全体に漂う、シルキーでスムースなトラックが印象的だ。