ミニ・レビュー
ノラ・ジョーンズ、そして彼女と仲良しの中年男性4人による、カントリー音楽をやるグループの2作目。大半がウィリー・ネルソンらのカヴァー曲で、アメリカののどかな風景をぽっかりと浮き上がらせる。童心に帰り、心底趣味を追求している、と説明したくなる。
ガイドコメント
ノラ・ジョーンズの参加グループとして脚光を浴びたカントリー・バンドが5年以上を経て2枚目のアルバムを発表。各々の出身は米国内でも大きく異なるが、共通する音楽的背景を楽しんでいるさまが素晴らしい。
収録曲
01I WORSHIP YOU
ウィリー・ネルソンのカヴァー・バンドとして結成した、ノラ・ジョーンズ在籍バンドの2ndアルバム『フォー・ザ・グッド・タイムス』の冒頭曲で、スタンリー・ブラザーズの代表曲のカヴァー。伝道的なブルーグラス・スタイルを崩さない、丁寧な演奏が味わい深い。
02REMEMBER ME
夫婦デュオ、ルル・ベル&スコッティ(スコット・ワイズマン)の名曲のカヴァー。ウィリー・ネルソンもカヴァーしたナンバーの、のどかなカントリー・ワルツの雰囲気を踏襲したオーガニックな響きが心地よい。ノラの情熱的な歌声が胸に響く。
03DIESEL SMOKE, DANGEROUS CURVES
50年代に人気を博したドイ・オデールのナンバーで、1967年にはレッド・シンプソンがカヴァーした、トラック野郎御用達の楽曲のカヴァー。リチャード・ジュリアンの無頼な歌い方とノラの柔らかなヴォーカルのコントラストが楽しめる。
04LOVESICK BLUES
1949年にハンク・ウィリアムスが取り上げてヒットした、1920年代に書かれたティン・パン・アレー産のカントリー・クラシックを、ツイン・ヴォーカルという形態でカヴァー。穏やかなフレーズをちりばめた日曜の午後にぴったりの楽曲だ。
05TOMMY ROCKWOOD
ギター担当のメンバー、ジム・カンピロンゴのオリジナル・ギター・インストゥルメンタル。彼の愛器、ユーモラスなフレーズを繰り出すフェンダー・テレキャスターの低音弦が頼もしく響く、楽しいカントリー・ナンバー。
06FIST CITY
60〜70年代を代表する女性カントリー歌手、ロレッタ・リンが1968年に放った楽曲のカヴァー。浮気性の夫について綴った内容の歌をロッキン・カントリー風味に解釈した、サウンドはエネルギッシュで楽しいナンバー。
07PERMANENTLY LONELY
ウィリー・ネルソンがキャリア初期のソングライター時代に書き、歌手、ティミー・ユーロが1963年のアルバムで歌った名曲のカヴァー。ピアノをメインとしたスロウ・テンポかつシンプルな伴奏の、哀愁漂うポップ・ソングだ。
08FPUL OWL ON THE PROWL
1967年の映画『夜の大走査線』の劇中に登場する歌のカヴァー。どこかしみったれた感じ、場末のバーなんかを回想させるカントリー調のメロディを、男女ツイン・ヴォーカルのハーモニーで聴かせている。歌詞もひねくれていて綺麗な言葉が出てこない。
09WIDE OPEN ROAD
ジョニー・キャッシュが1954年末にサン・レコードと契約し、最初にレコーディングしたと言われている楽曲のカヴァー。ウェスタン・スウィングのテイストを取り入れたアレンジがクセになる。歌詞は戻ってこない“君”と会うことを待ち望んでいる男について。
10FOR THE GOOD TIMES
ジャニス・ジョップリンの遺作となったヒット「ミー・アンド・ボビー・マギー」の作者にして、のちにシンガー・ソングライター、俳優としても活躍するクリス・クリストファーソンの作品を、前作に続いて選曲。柔らかく優しいサウンドとヴォーカルに癒される。
11IF YOU'VE GOT THE MONEY I'VE GOT THE TIME
50年代のカントリー黄金期を代表する一人、レフティ・フリゼルのデビュー曲にして、1976年にはウィリー・ネルソンがカヴァーした楽曲のカヴァー。王道のカントリー・ナンバーを、ネルソンがステージで演奏するようにアップ・テンポにアレンジしている。
12JOLENE
オリビア・ニュートン・ジョンのヒットで知られる、1973年発表のドリー・パートンの楽曲のカヴァー。自分の恋人を奪わないで、と友達“ジョリーン”に懇願している。フォーキーなメロディとギターを中心としたシンプルな演奏に、静かな興奮を覚える。
13DELIA'S GONE
2ndアルバム『フォー・ザ・グッド・タイムス』日本盤ボーナス・トラック収録曲。ジョニー・キャッシュの愛唱歌でボブ・ディランもカヴァーした、とある殺人事件を題材にしたフォーク・ソングのカヴァー。悲しい歌詞だが、サウンドは緩やかなカントリー調にアレンジ。