ガイドコメント
2年間の活動休止期間を経て送る、絢香の復活作となるアルバム。自身のレーベル“A stAtion”を立ち上げての初セルフ・プロデュースで、ミュージシャンとして人間として見つけた大切なものが詰め込まれている。第2章の“はじまり”となる注目作。
収録曲
01はじまりのとき
美しいピアノの響きで幕を開ける、ドラマティックなミディアム・ナンバー。穏やかに進む前半から、ストリングスをまとって一気に視界が開けるサビへの展開が秀逸。“泣いた昨日”も“逃げ出した昨日”も明日につながっていくんだ、と力強く歌い上げる。
02Hello
エレクトロ風のフェード・インから一転、切り裂くようなドラムロールをきっかけにロック調の力強いサウンドで突き進むナンバー。いつのまにか夢を失い色褪せてしまった日常から一歩踏み出し、“とびきりのHello”とともに新たな物語の始まりを綴る。
03アカイソラ
幼い頃に見た、空を包む“赤い空”の情景を切り取ったミディアム・チューン。弾むビートとエレクトリックピアノの比較的ポップな音色を用いながらも、絶妙なコードワークと淡々とした歌声が生み出す空気感はどこか切ない。
04The beginning
3rdオリジナル・アルバム『The beginning』のタイトル・ナンバーはゆったりとしたテンポと情感たっぷりの歌声で聴かせる絢香の真骨頂ともいうべきバラード。多重コーラスやストリングスを巧みに用いて豊かなアンサンブルを構築している。
05HIKARI
傷付け合って何かを得るのではなく、一瞬でもいいからプライドを捨てることができれば何かが変わるはず……絢香の込めた強いメッセージを感じるナンバー。パーカッションによる民族調のテイストやフランス語の台詞を用いた多国籍感はそのメッセージゆえか。
06空よお願い
“空にのぼったあなた”への想いを切々と綴った感動的なバラード。ピアノと歌のみで構築されたサウンド、複雑な構成を持たないメロディとすべてにおいて最小限の編成ながら、圧倒的な歌唱力と歌詞が持つどこまでもまっすぐな想いに心を打たれる。
07繋がる心
アコーディオンをアクセントに、アコースティックなテイストに仕上げたカントリー調のサウンドが新鮮かつハートウォームなポップ・チューン。なにげない日常でも君のことを想い続ける心でまっすぐな道を作り出すんだ、という歌詞も胸に沁みる。
08THIS IS THE TIME
ステーヴィー・ワンダーを彷彿とさせるような、ファンクのテイストを感じさせるグルーヴィなサウンドが魅力的なナンバー。一度しかない今を逃すことのないように、立ち止まることなく歩き続けるんだ、という芯の強いヴォーカルも見事。
09そこまで歩いていくよ
クボタの企業CMソングに起用された感動的なミディアム・バラード。“悲しみのない世界にはきっと喜びもないはず”だから、臆病にならず前を向いて歩いていこうと優しく背中を押してくれる。要所で用いられるピアノのメロディにも心を掴まれる。
10笑顔のキャンバス
“今日はなんて素晴らしいんだ”の一言にすべてが集約された、どこまでもポップでポジティヴなナンバー。“Sha la la la……”の希望に満ちたメロディは、シンプルでありふれたものだとしても、いつの間にか笑顔にさせてくれる。
11Magic Mind
イーヴンキックのビートでグイグイと進む疾走感のあるナンバー。打ち込みを主体としたベースに、いくつものコーラス、そしてしっかりとした温度を感じるストリングが重なる。絢香にとって新境地といえる世界だが、さすがの歌声は揺るぎない。
12キミへ
“さよならの時 泣かないと決めていた”という歌い出しが印象に残るポップ・ナンバー。“思い描いた今日に心からありがとう”など、活動休止を余儀なくされた彼女の想いと再び歌うことのできる喜びが詰まった歌詞は感動的だ。
13やさしい蒼
ピアノとストリングス、そして唯一無二の歌声で綴られるバラード。落ち込み、塞ぎ込んでしまう心を覆う“ブルー”と、そんなときに見上げて元気を与えてくれる空の“蒼”の対比が見事だ。森永製菓「森永ココア」CMソング。