ミニ・レビュー
2年半ぶり、通算5枚目のソロ・アルバム。プロデュースにデンジャー・マウスことブライアン・バートンを迎え、ポップ/ダーク、軽やか/ヘヴィの間をさまようような音作りを展開する。先行シングル「ハッピー・ピルズ〜幸せの特効薬」も収録。ノラ自身によるギターやキーボード類の響きも聴き逃せない。
ガイドコメント
デビュー10年目を迎えた歌姫、ノラ・ジョーンズの5thアルバム。“グラミー”プロデューサーの鬼才、デンジャー・マウスを迎え、心の内をさらけ出すノラの新たな一面を見せた。せつなく、鋭く、強く、美しく……愛し傷つく心を歌う会心作だ。
収録曲
01GOOD MORNING
デンジャー・マウスのプロデュースによる5thアルバム『リトル・ブロークン・ハーツ』の冒頭曲。日本語で「おはよう」のタイトルを冠しているが、爽快ではつらつとしたナンバーでは決してない。物憂げなヴォーカルで綴られる歌は、別れを予期させる切ない内容だ。
02SAY GOODBYE
ウーリッツァーの軽快な音色と乾いたドラムの音色が心地よい、ノラとブライアン・バートン(=デンジャー・マウス)のふたりのみで演奏したシンプルなロック・チューン。“あなたを必要としてない”と恋人に告げる、ドライな歌い方がぴったりの別れの歌だ。
03LITTLE BROKEN HEARTS
関係が壊れてしまった直後の恋人の心境を描いたフォーキーなロック・チューン。ささやくように歌うヴォーカルと淡々とリズムを刻むギター&ベースのざらざらとした質感の音色が、憂いを帯びたメロディを際立たせている。
04SHE'S 22
自分と別れた後のかつての恋人の彼女について綴った、痛々しささえ感じさせる失恋の歌。シンセサイザーやオルガンなども使っているが、ほとんどはノラ本人のギターの弾き語りに近いようなシンプルな演奏のバラードだ。
05TAKE IT BACK
美しくも悲しい旋律を奏でるピアノを基にした、失ったもの、壊れてしまったものについて綴った、しっとりとしたロック・チューン。どうしようもなく切ない歌詞と演奏だが、ラストまでには高揚感が増していく不思議な楽曲だ。
06AFTER THE FALL
別れた恋人との日々を回想しながら、別れた恋人に語りかけるような倦怠感に満ちた歌詞だが、サウンドは憂いを帯びたつつも少しの爽やかさを感じさせる。気だるい空気が充満した絶望の果てに、少しの光が見えるような希望の歌だ。
074 BROKEN HEARTS
優しいドラミングが心地よい、オーガニックなサウンドに癒されるナンバー。ノラの乾いた歌声が妙にセクシーに響く。一度は心が通じ合った相手との関係が壊れてしまったことの悲しさと切なさを淡々と歌っており、その淡々とした歌い方が余計に涙を誘う。
08TRAVELIN' ON
穏やかなチェロの響きが柔らかなメロディを切なくさせる、フォーキーなポップ・ソング。“永遠に特別な存在”の“あなた”から離れ“旅”をする女性のストーリーだ。ささやくように歌うノラのヴォーカルは清涼感と悲壮感に満ちている。
09OUT ON THE ROAD
いなたさも漂うカントリー調のサウンドに乾いたノラの歌声がよく似合う、躍動感あふれるナンバー。あてもなく旅をする、自由きままな歌詞が心地よい。アルバム『リトル・ブロークン・ハーツ』中ではもっとも明るいナンバーかもしれない。
10HAPPY PILLS
恋人と別れて綺麗サッパリ! 苦しみや悲しみを乗り越えて身軽になった女の歌。どこかファニーな軽快なポップ・サウンドが、歌の主人公の未来を明るく照らしているようだ。心の浄化作用もありそうなハッピー・ソングに仕上がっている。
11MIRIAM
かつての恋人を奪い去った女性の名前を冠した、ホラー(!)なナンバー。彼女の名前をかわいいと言い、“ひどい仕打ちをしたと分かってるはず”と、穏やかに紡がれたメロディの上で、諭すような冷静すぎる歌声で淡々と歌う……。
12ALL A DREAM
ざらざらとした粗い質感のパーカッションやギターの音色が牧歌的な雰囲気を醸し出す、フォーキーで気だるいロック・チューン。恋人と別れたことをもやもやと悩み続ける女性の行き場のない心情がリアルに綴られている。
13I DON'T WANNA HEAR ANOTHER SOUND
5thアルバム『リトル・ブロークン・ハーツ』の日本盤ボーナス・トラック。音のひとつひとつが憂いを帯びている、テンポは速いのに倦怠感に満ちた不思議なナンバー。歌詞は失恋のどん底で、絶望のふちに立たされている。