ミニ・レビュー
通算5作目。バキバキのリズムにラウドなギターやスクラッチ、サンプラーなどを幾重にも重ねたサウンド、スクリーモとデス声を巧みに配置したヴォーカル・アレンジからは“重鎮”としての風格を感じさせる。ストリングス・アレンジをオーウェン・パレットが手がけるなど、異色のコラボも注目だ。
ガイドコメント
前作『ア・サウザンド・サンズ』以来約1年10ヵ月ぶりとなる通算5作目。先行1stシングル「バーン・イット・ダウン」をはじめ、原点となるラウドなミクスチャー・ロックを再構築した新たなロック像を提言。マイク・シノダのラップ炸裂曲なども収録。
収録曲
01LOST IN THE ECHO
5thアルバム『リヴィング・シングス』の冒頭を飾る、同アルバムからの2枚目のシングル。ギターは全面に出すことはなく、それでもラウドな音圧でグングン引き込むサウンドで、否定されても揺るがない、と宣言する新たなリンキンの所信表明たる一曲。
02IN MY REMAINS
実験的でノイジーなイントロから、打ち込みのビートと美しいメロディで幕を開けるミディアム・アップ。大きなリズムのもと、静と動のギャップを派手に出したサウンドにのせて、悲壮なメッセージをがなるチェスターのヴォーカルが映える。
03BURN IT DOWN
『リヴィング・シングス』からの1stシングル。「イン・マイ・リメインズ」のコード進行を引き取り、そこからきっちりと別の物語へと展開していくアレンジが秀逸。マイク・シノダのキレのあるラップも健在で、体の芯に響くキラー・チューンだ。
04LIES GREED MISERY
マイク・シノダのラップで幕を開ける、ミリタリーシューティングゲーム『メダル オブ オナー ウォーファイター』テーマ・ソング。音数少なめの前半から、“限界に達したらこんな音がするんだ”とチェスターのシャウトが炸裂するサビへとなだれ込むアレンジが楽しい。
05I'LL BE GONE
大きくとったリズムにのせて、ダイナミクスに富んだアレンジを聴かせるナンバー。各セクションごとに大きなクレッシェンドがついたような構成に体を突き動かされる。“教えてくれ 教えてくれ”と懇願するように歌うチェスターの姿が印象的だ。
06CASTLE OF GLASS
ダークでシリアスなテイストで全体を覆うアップ・テンポのナンバー。チェスターの独白のようなヴォーカルからはじまり、“ガラスの城”という象徴的な舞台装置を上手く利用して物語を綴る。焦燥感に襲われるようなサウンド・メイクが独特だ。
07VICTIMIZED
ドラムが激しく暴れ、チェスターがシャウトをかますデスメタルのようなパートとドラムンベース風の高速ビートでかき回すパートが交互に登場するハードなナンバー。わずか2分弱の短い作品ながら、与えるインパクトは強烈だ。
08ROADS UNTRAVELED
ピアノを中心に据えたミディアム・スロー・ナンバー。ピアノがひっぱる世界観は荒廃した風景で、愛を失った苦痛を嘆く君の心情を描くが、ラストでは“友達が必要なら僕の隣が空いてるよ”と温かく締める。おもちゃ箱のような効果音が不思議なアクセント。
09SKIN TO BONE
ドラムンベース風のハードなビートで展開するナンバー。そのリズムとは裏腹に、メロディはしなやかに、そして切なく伸びていく。“皮は骨に、そして鋼鉄はサビに”という印象的なフレーズのリフレインが退廃的な空気を作り上げている。
10UNTIL IT BREAKS
ヒップホップのエッセンスを色濃く詰め込んだナンバー。象徴的な言葉を多く散りばめた物語を、ディレイを効かせたヴォーカルで矢継ぎ早に語る。一転、教会音楽のような荘厳な雰囲気へと展開していく後半の展開もユニークだ。
11TINFOIL
5thアルバム『リヴィング・シングス』の後半に配された1分程度のインストゥルメンタル。無機質なビートとシンプルなピアノのフレーズが紡ぎ出すのは、神経症的に美しい音世界。予感に満ちたような、暗示めいた雰囲気を構築する。
12POWERLESS
ティム・バートンが制作を手がけた映画『リンカーン/秘密の書』エンディング・テーマ。ゆったりとしたピアノをアレンジの中心に据えた、ドラマティックなミディアム・ナンバーだ。“僕は無力だった”と、やりきれない想いをエモーショナルに歌いきる。
13WHAT I'VE DONE
『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』収録のナンバーのライヴ・ヴァージョン。不穏なピアノのフレーズをバックに、シンプルなバンド・アレンジでメロディを際立たせる。オーディエンスの歌声に煽られるように、熱を帯びるチェスターの歌声に心を掴まれる。