ミニ・レビュー
UKグループ史上初めて全米チャート初登場1位を獲得した、ボーイズ・アイドル系グループのデビュー作。もともと人気オーディション番組にソロでエントリーしていたメンバーの集合体だけに歌の実力は保証付き。加えてブリット・アワード最優秀楽曲賞に輝いた曲ほか、どれも良くできたシングル向け佳曲揃い。
ガイドコメント
イギリスの5人組グループ、ワン・ダイレクションのデビュー・アルバム。UKチャート1位を獲得した1stシングル「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」ほか、ポップなサウンドとキャッチーなメロディが満載の一枚となっている。
収録曲
01WHAT MAKES YOU BEAUTIFUL
英人気オーディション番組出身の5人組によるデビュー・シングル。快活なギターが弾ける陽気なポップ・ロックに乗せ、ありのままの君が美しいんだと歌う。“ナ〜ナナ…”のコーラスも楽しい。UKチャートを初登場で制したビッグ・ヒットだ。ラミ・ヤコブが制作参加。
02GOTTA BE YOU
ウエストライフほかボーイズ・ユニット作品で知られるスティーヴ・マック制作による2ndシングル。君じゃなきゃダメなんだ……もう一度恋をやり直そうという願いを、ストリングスが効いた穏やかなメロディに乗せて歌う。優しさあふれるミディアム・ポップだ。
03ONE THING
君は僕にとって大事な“何か”を持ってるんだと語る、ラミ・ヤコブ&カール・フォーク制作によるポップ・ロック・チューン。フレッシュなバンド・サウンドとハツラツとしたヴォーカルが、清々しく爽やかな風を運んでくるようだ。リズミカルなクラップも実に楽しげ。
04MORE THAN THIS
時折マルーン5のミッド・バラードかと思わせる瞬間も。メロディアスなポップで綴るのは、“僕ならもっと君を愛せるのに”という復縁の願い。あいつの腕に抱かれたって……という恨み節が、ギターとともに切なく響く。制作はブライアン・ロウリングとポール・ミーハン。
05UP ALL NIGHT
マット・スクワイア制作による1stアルバムのタイトル・チューン。爽快なティーン・ポップ風サウンドに乗せて、オールナイトで盛り上がろうと弾けるパーティ・ソング。もちろん、一番の狙いは“運命の彼女を見つける”ことだ。
06I WISH
あいつとダンスを踊ってキスをする君を見るたびに、“あいつが僕だったらいいのに”と悔しさをにじませる男の心情を歌う。ズタボロな心を癒すように、優しいバンド・サウンドが展開していく。ラミ・ヤコブ制作のミディアム・スローだ。
07TELL ME A LIE
ケリー・クラクソンがライティングに参加した軽快なポップ・ロック。恋の終焉を悟った男が、出ていくのは構わないけど、行き先が“あいつ”のところってことだけは隠して嘘を言ってくれと頼み込む。どことなく泣くのをこらえていそうなヴォーカルが印象的。
08TAKEN
本人たちが曲作りに参加した、トビー・ガッドによるミディアム・スロー。ノスタルジックな趣も感じられるギターをバックに語られるのは、僕の心をもてあそんだ元カノへの決別宣言。それゆえヴォーカルにもやるせなさがたっぷりと漂う。
09I WANT
カイリー・ミノーグ作品で知られるチーム、Biffcoが手掛けた曲で、ライティングはマクフライのトム・フレッチャー。そのためか、ロック・テイストが強いミディアムとなった。君が欲しがるのは愛じゃなくて“モノ”なんだろ……と、物欲激しい女子たちを嘆く。
10EVERYTHING ABOUT YOU
陽気なメロディ・ラインによって彼らの等身大な青春ポップに仕立てたスティーヴ・ロブソン制作曲で、彼ら自身も制作に参加。大人へと成長する過程のほんのり香る甘酸っぱさが魅力の、君なしじゃダメなんだと告げるラヴ・ソングだ。
11SAME MISTAKES
同じ過ちの繰り返しはもうやめよう……壊れかけた二人の関係を修復するには、ひたすらうまくいくように祈るだけじゃダメなんだと諭す歌。適度な湿感のミディアム・ロック調に手掛けたのはスティーヴ・ロブソン。フックのリフレインが印象的だ。
12SAVE YOU TONIGHT
シンガロング仕立てのフックのメロディはレディー・ガガ作品あたりを思わせるが、なるほどレッドワンのプロデュース。スーッと視界が広がるような爽快な展開がすこぶる心地よい。あいつの元にいる君を今夜救いたいと決意するポップ・チューンだ。
13STOLE MY HEART
ブライアン・ロウリング、ポール・ミーハンによるトランス風エレクトロ・ダンサー。とはいえ、EDM過ぎずに、弾けたヴォーカルを活かしたポップな作風としたのは正解。君は僕のハートを盗んだのさと、一目惚れのトキメキをフレッシュに歌っている。
14STAND UP
カイリー・ミノーグ作品で知られるBiffcoらしいポジティヴな展開だが、ギターを効かせてロック寄りの青春ポップ仕立てに。君の心を奪い取るまではどこにもいかないという詞も思春期ならではのグラフィティだ。“オオ、オオオオ”のフックのノリも楽しい。
15MOMENTS
君が出ていってしまう前に、その瞬間に僕の想いを伝えなきゃと焦る気持ちを綴る。ノスタルジックに爪弾かれるギターから心に勇気の火を灯すような希望あふれるコーラスへの展開が肝。エド・シーランも参加した、ジェイク・ゴスリング制作の穏やかなミッドだ。
16ANOTHER WORLD
元気づけるために君を別世界へ連れていくと凛々しく語りかける。ロック色強めのアレンジだが、抜けるような開放感が飛び込むコーラス・パートを聴けば、レディー・ガガ作風を思い起こすはずのレッドワン制作曲だ。伸びやかなヴォーカルが清々しい。
17NA NA NA
マット・スクワイアが用意したのは、“チャチャッ、チャ”というクラップ弾けるリズムと颯爽と駆け抜けるダンサブルなトラック。陽気なポップ・パンクとエレクトロの絶妙配合の下、ケンカしては仲直りの繰り返しの恋人たちを歌う。“ナ・ナ・ナ”のコールが快感。
18I SHOULD HAVE KISSED YOU
“ああ、キスしとけばよかった”と後悔の念に駆られる男子の気持ちを歌った、スティーヴ・ロブソン制作のポップ・ロック。ノリよくクセになる“I shoulda,I shoulda,〜”のリフレインが、青春グラフィティらしさを演出。