ミニ・レビュー
トム・ヨークの『ジ・イレイザー』に端を発する“スーパー・グループ”による初作だが、何より耳を惹くのは、レディオヘッドでも見え隠れしていたポリリズム志向。トム・ヨーク、けっこうなアフリカ音楽ファンと見た。ダブ的な音像を含め、このチームならではのリズムへの希求/着想が新鮮。★
ガイドコメント
レディオヘッドのトム・ヨーク、そのプロデューサーも務めるナイジェル・ゴドリッチ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーらによるバンドの2013年2月リリースの1stアルバム。配信シングル「Default」を含む全9曲を収める。
収録曲
01BEFORE YOUR VERY EYES...
レディオヘッドのトム・ヨークを中心に、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーらによって結成されたバンドのデビュー・アルバムの冒頭曲。トライバルなパーカッションと凝ったベース・ラインにうなること必至の、緊張感のある一曲だ。
02DEFAULT
デヴィッド・バーンと共演経験を持つパーカッショニスト、マウロ・レフォスコによる一筋縄ではいかないリズムに心を奪われる。トムのひょうひょうとしたヴォーカルが紡ぐ、繊細なメロディが美しいエレクトロ・ナンバーだ。
03INGENUE
トムのひょうひょうとしていながらも繊細さを湛えたヴォーカルが魅惑的。マイナー・コードの旋律ではあるが、どこか希望を見出せるような明るさがほんのりある。複雑な音世界だが眠りにつく前のように心地よいのが不思議。
04DROPPED
抽象的な歌詞のラヴ・ソング。中盤でコーラスがヴォーカルに重なると、4つ打ちのリズムも鳴り、急に道が開けたようにパッと明るくはっきりとした音世界が広がる。トライバルなリズムがスピリチュアルな雰囲気を醸し出している。
05UNLESS
“どうでもいい”“愚にもつかない”などの言葉をちりばめた歌詞と頼りなげなヴォーカルが鬱々としているが、どこか幻想的な、ダブ・ステップ・フィーリングを持ったナンバー。中盤でコーラスがどんどん重なってくると、壮大な展開に。
06STUCK TOGETHER PIECES
クールで淡々としたヴォーカルと、デヴィッド・バーンと共演経験を持つパーカッショニスト、マウロ・レフォスコによる躍動感あふれるリズムの対比が双方を際立たせている。緊張感に満ち満ちたナンバーに仕上がっている。
07JUDGE JURY AND EXECUTIONER
エコーがかったコーラスのファンタジックな響きが、繊細でたゆたうようなヴォーカルと絶妙にマッチしたダブ・チューン。タイトルからもわかるとおり、政治的な言葉をちりばめた、緊迫した雰囲気の歌詞が展開されている。
08REVERSE RUNNING
憂鬱な気分にぴったりのメロディではあるものの、どこか希望の光を感じさせる伸びやかなヴォーカルが妙に心地よいダブ・ナンバー。ハエの飛ぶ音を再現したような電子音が緊迫した歌詞をよりいっそう際立たせている。
09AMOK
アルバム・タイトルと同タイトルの楽曲。パーカッショニスト、マウロ・レフォスコが複雑なリズムを刻むダブステップ・ナンバーで、不協和音を奏でるエコーがかったコーラスも少し不気味。人々の“不安”な気持ちの状態をみごとに表現している。