ミニ・レビュー
「REASON」「また明日」「with you」「翔」などのヒット・シングルを含む11枚目のアルバム。寺岡呼人、蔦谷好位置に加え、アレンジャーとして前山田健一(ヒャダイン)が参加。現代的なポップ感覚を加えることで、新しい“ゆず像”を描き出すことに成功している。サイケデリックなアートワークも秀逸。
ガイドコメント
前作『2-NI-』以来約2年3ヵ月ぶりとなる、2013年5月1日リリースの11thアルバム。「翔」「with you」「また明日」「REASON」といったシングルや「ユーキャン」CMソングでも話題の配信限定「イロトリドリ」などを含む充実作。
収録曲
01REASON
アニメ『HUNTER×HUNTER』TVシリーズ&劇場版テーマ・ソング。北川、岩沢の二人に加え前山田健一も制作に参加しており、エレクトロなサウンドも取り入れたパッチワーク風の楽曲に。3人の個性が交わり雄大なスケールを構築している。
02LAND
ジャパンゲートウェイ「Mellsavon」のCMソングに起用されたドリーミーなナンバー。ストリングスやホーンも絡む蔦谷好位置のファンタジックなサウンドと、震災をイメージさせる言葉も並んだシリアスな歌詞との対比が美しく響く。
03イロトリドリ
配信限定シングルとして発表されたユーキャンのCMソング。セリフにも似た二人の掛け合いとともに、ユーモアがたっぷりと詰め込まれた言葉遊びのような歌詞を歌い上げる。ファニーなテイストで統一しつつ、中盤でサラッと泣かせにかかる構成がニクい。
04砂漠のメリーゴーランド
北川悠仁が作詞曲を手がけ、ゆずの二人によるセルフ・プロデュースで制作されたシリアスなナンバー。象徴的なタイトルのもとフォーク・テイストを押し出した影のあるサウンドを構築し、旅立ってしまった大切な人への想いをエモーショナルに歌い上げる。
05with you
バッハの「プレリュード」を想起させる荘厳なチェロのメロディを全編にわたって取り入れた日本生命CMソング。大切な人との出会いと夢に向かう決意を綴った歌詞は、どこか二人のことを表わしているよう。岩沢のハイトーンが心地よく響くサビの開放感は秀逸。
06ゼラニウム
北川自らが奏でるピアノを中心に据えた感動的なバラード。愛情や友情といった花言葉を持つゼラニウムをモチーフに、先に旅立ってしまったあなたへの切ない想いを搾り出すように歌い上げる。ファルセットを用いたサビが胸に刺さる。
07Interlude“OHANASHI”
アルバム『LAND』の中盤に配されたインタールード。“北川亜門”が脚本を手がけた寸劇で、猿使い(北川)とお猿さん(岩沢)のショーの合間に交わされる会話が展開。“この後用事あるんすよ”と猿が言い放つシュールな情景がユニーク。
08LOVE&PEACH
2011年にリリースされた配信限定シングル。どこまでもキャッチーでおバカなノリを追求したパーティ・チューンで、ラップのような歌唱やアイドル・ソング風の決めなど、ゆずならではの遊び心が満載。下世話な合いの手もライヴにピッタリだ。
09流れ星キラリ (ゆずバージョン)
『劇場版 HUNTER×HUNTER』キャストからなるスペシャル・ユニットへ提供した楽曲のセルフ・カヴァー。北川・岩沢の共作による流れ星をモチーフにした歌詞をはじめ、曲の持つスケール感をより引き立てるアレンジが見事。
10また明日
心地よくドライヴするバンド・サウンドにハーモニカが絶妙な彩りを添える寺岡呼人印のアレンジが魅力のTBS系ドラマ『浪花少年探偵団』主題歌。子供の頃を思わせる“また明日”というセンチメンタルなフレーズが胸に沁みる。
11翔
フジテレビ系で放送の『世界体操 東京 2011』テーマ・ソングに起用されたポップ・チューン。心温まる弾き語りによるオープニングからバンド・サウンドへと流れ込む正統派といえるアレンジゆえ、メロディの素晴らしさが際立って耳に残る。
12灯影
朝川朋之のハープの音色が切なくも温かく響くファンタジックなバラード。“去り行くあなたの 送り火と遠い日々”など、大切な人との別れを綴っているが、無理に前向きな物語にはせず、ただただ悲しさを表現した言葉が深みを出している。
13ムーンライトパレード
支離滅裂な夢をそのまま歌にしたかのような遊び心満載の展開がユニーク。サーカス風のフレーズを随所に取り入れており、ファンタジックな雰囲気に拍車をかけている。夢から覚めるように現実に引き戻されるラストも巧みだ。