ガイドコメント
前作『エピソード』以来約1年8ヵ月ぶり、2013年5月1日リリースの3rdアルバム。「フィルム」「夢の外へ」「知らない」といったシングルに加え、第一生命CMソング「生まれ変わり」や、NHKアニメ主題歌「ある車掌」ほか、全12曲を収録。
収録曲
01化物
イントロのリフが印象的なアップ・テンポのポップ・チューン。理想と現実とのギャップにもがく姿を綴っているが、“何気ない日々は何気ないまま ゆっくり僕らを殺す”など、レコーディング直後に倒れたというエピソードを透かすとドキッとする言葉が並ぶ。
02ワークソング
ストリングスを配したドラマティックでムーディなアレンジとゆったりとしたメロディとは対照的に、伊藤大地のドラムが全編にわたって早いテンポでリズムを刻むナンバー。“働け”というぶっきらぼうな言葉とともにしっかりと希望を与えてくれる。
03夢の外へ
資生堂「ANESSA」CMソングに起用された3rdシングルは、高田漣のペダルスティールが効いた爽快なサマー・チューン。夢の中にあるものを現実に連れてこようというメッセージに忍ばせた“僕は真ん中をゆく”という意思表明にシビれる。
04フィルム
映画『キツツキと雨』主題歌となった2ndシングル。映画や写真を映す“フィルム(=虚構)”をモチーフに、“どうせなら目の前の景色を作れ”と優しく告げるハートウォームなナンバー。重みを含む歌詞も、ハンドクラップとともにサラッと歌う姿が彼らしい。
05ツアー
タイトルのとおり“旅”をテーマにしたミディアム・ナンバー。ほぼ3ピース(+スティールパン)というシンプルなアレンジながら、息の合った繊細なアンサンブルで温かいサウンドを構築。煙草や車といった細かなモチーフがストーリーに厚みを持たせている。
06スカート
ギターのアルペジオを中心に構成されたシンプルで温かみのある音色が魅力のナンバー。つかの間の休日、まどろみのなかで大切なあなたと迎える朝の日差し……“何もない日々”の幸福さを綴った生活の匂いに満ちた言葉が、確かな手触りを持って響く。
07生まれ変わり
第一生命のCMソングに起用されたミディアム・バラード。親子をテーマにした物語を、サイトウジュン(YSIG)や辻村豪文(キセル)、オラリー(片想い)ら盟友をコーラスに迎え、ゴスペル風のアレンジで歌い上げる感動的なラストは圧巻。
08パロディ
映画『ぱいかじ南海作戦』主題歌のポップ・チューン。ホーンを交えたどこかとぼけたようなサウンドに乗せ、過ぎていく日々をパロディにしてしまえるような“ラララ〜”のメロディを、ceroのメンバーらとともに歌う笑顔をくれるナンバーだ。
09季節
ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、神谷洵平(赤い靴)とのトリオによるミディアム・ナンバー。牧歌的な風景を綴った歌詞は心地よく、アコースティックなサウンドながらどんどん熱気を帯びるアウトロをはじめ、3人の親密な演奏も楽しい。
10レコードノイズ
思い出を心の中にあるレコードにたとえたアコースティックなナンバー。風景や感情を表わす単語を並べるサビは、野村卓史のフェンダー・ローズも作用してファンタジックな響きに。心の奥底を旅するような、不思議な感覚に導いてくれる。
11知らない
“星野源節”ともいえるメロディが印象的な4thシングル。“二度と逢えなくても”“絶望”といった死をテーマにした重い言葉が並ぶものの温かな響きを持つのは、その先にも物語は続くから。避けられぬ別れを肯定的に受け止める姿勢は感動的。
12ある車掌
NHKアニメ『おじゃる丸』長編スペシャル版のエンディング曲。『銀河鉄道の夜』をモチーフにした作品に合わせ、空を走る電車の“ある車掌”を主人公に据えた物語が進む。そこから人生へと膨らむストーリーテラーっぷりはさすがのひと言。