ガイドコメント
オリジナルとしては前作『Human After All〜原点回帰』以来約8年ぶりとなる、2013年5月22日リリースの4thアルバム。結成20周年となる2013年に送る、コロムビア・レコード移籍第1弾となる注目作だ。
収録曲
01GIVE LIFE BACK TO MUSIC
ナイル・ロジャースがギターで参加したフューチャリスティックなディスコ・ブギー。ディスコ・クラシックス定番のファンキーなグルーヴにヴォコーダーを重ねながら、ずっと大切にしてきた音楽で今の音楽に命を再び吹き込むんだと歌う、温故知新の提言だ。
02THE GAME OF LOVE
フュージョンっぽい緩やかなメロディ・ラインで語られる恋の顛末。恋のゲーム……これも一つの恋の形なのかもしれないと、離れていってしまった恋人へ残した“ずっといてほしかっただけ”という言葉が痛切に胸に刺さる。たそがれたヴォコーダーが実に切ない。
03GIORGIO BY MORODER
電子楽器を駆使してディスコ・ミュージックの発展を促した作曲家、ジョルジオ・モロダーのナレーションを導入したエレクトロ・チューン。シンセで未来のサウンドを得ようとしたジョルジオの人生譚を、ファンキーなエレクトロとオーケストラを融合させて壮大に描写する。
04WITHIN
チリー・ゴンザレスの抒情的で物憂げなピアノとアンニュイで虚無的なヴォコーダーが、一面にやるせなさを漂わせる。僕が誰なのか教えてくれないか……自分自身の存在意義やアイデンティティに悩む心の葛藤を、見事に描き切ったミディアム・エレクトロだ。
05INSTANT CRUSH
ザ・ストロークスのヴォーカル、ジュリアン・カサブランカスを迎えたメランコリックなフューチャー・ポップ風。人間関係の難しさを意図したような意味深な詞世界を、ジュリアンがファルセットを駆使して物語る。メロディに内包されるロッキンな影が印象的だ。
06LOSE YOURSELF TO DANCE
ナイル・ロジャースのギター、ロボット二人のヴォコーダーをバックに、ファレル・ウィリアムスが“我を忘れて踊り狂え!”と歌う。分厚いベースにジョン・ロビンソン・ジュニアとオマー・ハキムの凄腕二人の生ドラムが加わった、シンプルなダンス・グルーヴが魅力。
07TOUCH
カーペンターズの名カヴァー「愛のプレリュード」の作詞で知られるポール・ウィリアムズをヴォーカルにフィーチャー。250トラック分の音を詰め込んだ狂気さは、プログレ的な音像にも表われている。触れ合いを通じて愛を抽象的に語る、8分超のエキセントリックな曲。
08GET LUCKY
4作目『ランダム・アクセス・メモリーズ』からの1stシングル。ナイル・ロジャースがシックで名を馳せた当時のディスコを、ロボット二人が近未来へ送り込むというコンセプトが白眉。“オールナイトで楽しいことしようぜ”と華麗に歌うファレル・ウィリアムスも好演。
09BEYOND
冒頭に壮大なオーケストラ・サウンドを配した、コスミックなフューチャー・ポップ。ポール・ウィリアムズによる、夢の向こう側へ続く魂の旅には愛が不可欠なんだというピュアな詞世界を、心の声にも思えるヴォコーダーで表現。心を洗うような普遍性に満ちた一曲だ。
10MOTHERBOARD
オーケストラをバックに擁したインストゥルメンタル。優雅で神秘的なサウンドスケープで展開されるが、後半より生命体の誕生を思わせるダイナミックな音像へと移り変わる。プリミティヴなリズムを有したプログレ風味のトラックだ。
11FRAGMENTS OF TIME
大ヒット作『ディスカバリー』収録の「フェイス・トゥ・フェイス」以来となるトッド・エドワーズとの共演。トロピカルな楽園的ムードのギターやペダル・スティールをちらちらと挟み込みながら君と一緒に永遠のパラダイスを目指そうと語る、陽気なミディアム・ポップだ。
12DOIN' IT RIGHT
フューチャリスティックなヴォコーダーと天真爛漫としたパンダ・ベアー(アニマル・コレクティヴ)のヴォーカルが素晴らしい融和を披露してくれる。肩の力を抜いたリラックス・モードのエレクトロで、“ちゃんとやってればみんな踊り出すはずさ”と歌う。
13CONTACT
冒頭から挿入されるのは、アポロ17号に乗って月へ到着したユージーン・サーナン船長の音声。フレンチ・ハウス界を代表する盟友、DJファルコンをモジュラー・シンセに迎え、オマー・ハキムの生ドラムも激動するエクセントリックなナンバーだ。
14HORIZON
4作目『ランダム・アクセス・メモリーズ』日本盤のボーナス・トラックとして収録されたインストゥルメンタル・トラック。“水平線”から昇る朝日の陽光に照らされた景色とその緩やかな時間の流れを神々しく映し出す。希望が満ちるエンディングだ。