ガイドコメント
前作『サック・イット・アンド・シー』以来約2年ぶりとなる、2013年9月リリースの5枚目のアルバム。これまで長年手腕を発揮してきたシミアン・モバイル・ディスコのジェームス・フォードとのタッグで制作。常に進化を続ける彼らに注目だ。
収録曲
01DO I WANNA KNOW?
淡々としたスロー・ビートを奏でながら存在感を表わすロック・ナンバー。ブルージィで渋めのフレーズを奏でるあたり、バンド初期の面影はなく、劇的な進化を示している。アレックス・ターナーの飄々としたヴォーカルも色気を感じる。
02R U MINE?
アルバムから先行リリースされたロック・ナンバー。ミックスが異なっておりサウンドの厚みが一層強調された印象だ。ハードかつ気だるさを漂わせるサウンドは70年代ハード・ロックを継承しているようで、どこか懐かしくもある。
03ONE FOR THE ROAD
“ONE FOR THE ROAD”という印象的なコーラスで始まるナンバー。R&B風のくたびれたビートとラップ調のメロディが楽曲をクールさを与えている。間奏で聴けるギター・ソロもロック創世記のギターヒーローが時空を超えて弾いているかのようだ。
04ARABELLA
地を這うような重厚なベース・ラインの間を埋めつくす奇妙なギター・トーンが絡みついたロック・ナンバー。クライマックスに向かい徐々にボルテージを上げるサウンドも実に聴きごたえがある。ディストーションの効いたギター・ソロも奇をてらわず王道のプレイで魅せる。
05I WANT IT ALL
リズミカルなドラムが高揚感をもたらすロック・ナンバー。マーク・ボランの魂が乗り移ったかような横乗りブギー・サウンドがたまらなく心地良い。あくまでストイックなプレイを選択するのは、ラジカルな方向より一体感あるダイナミズムをバンドが求めるせいか。
06NO.1 PARTY ANTHEM
アレックス・ターナーの叙情的で才気あるヴォーカルが堪能できるバラード・ナンバー。切なさいっぱいのメロディが空間一面を覆い、最後までじっくり聴かせてくれる。アコースティックなアレンジも温かく、優しさに満ちている。
07MAD SOUNDS
スローなテンポの中にまどろっこしさを落としていくナンバー。アレックス・ターナーと英国の音楽プロデューサー、アラン・スミスの共作によって起こされた化学変化は絶大で、彼らのキャリアの中でもとりわけ異彩を放つ楽曲に。
08FIRESIDE
ラテン風メロディが異国情緒を漂わす哀愁いっぱいのナンバー。マット・ヘルダースの刻むドラム・ビートと底辺を支えるニック・オマリーが生み出すグルーヴを軸とした音像深いサウンドは、メランコリックな情景であるばかりに物悲しい。
09WHY'D YOU ONLY CALL ME WHEN YOU'RE HIGH?
往年のアークティック・モンキーズらしさが突如として姿を現すロック・チューン。ヒップホップ調の悪びれたリズムと創造性に富んだメロディもふてぶてしく、天邪鬼と言わんばかりのバンド・サウンドがここで本領を発揮している。
10SNAP OUT OF IT
淡々と奏でられるマージー・ビートにオールディーズ寄りの世界観を想起させるロック・ナンバー。コーラスによる巧みな演出はアメリカン・ミュージカルのような軽やかな佇まいで、派手さはないもののアダルトな魅力で惹きつけていく。
11KNEE SOCKS
R&B調のリズムに乗るスタイリッシュなサウンドが胸に迫るなロック・ナンバー。デリケートな演奏で紡がれていく音色が、その表情を変化させていくのがスリリングで楽しい。サイケなギター・フレーズとエフェクティヴなコーラスが絶妙なアクセントを加えている。
12I WANNA BE YOURS
イギリスのパンク詩人、ジョン・クーパー・クラークが歌詞を手がけたミディアム・バラード。アシッド・フォーク調の叙情的なサウンドに“君の掃除機になって君の埃の中で息したい”とロマンティックながら独特な言い回しで歌われたラヴ・ソングだ。
132013
アルバム『AM』のボーナス・トラック。オールディーズ・ロック・スタイルに傾倒している彼らだが、この曲も例外ない。ストレートなロック・ビートに、泣きのギター・ソロすらもロックの方程式に添うような確かな効果を生み出している。