ミニ・レビュー
ご存知レディー・ガガの通算3作目。例によってエレクトロニックなスタイルではあるが、曲によっては多分にワールド・ミュージック的なメロディを取り入れていて、それが絶妙。また人権平等という観点からのメッセージ性を内包した曲も収録されていて、聴くだけでなく、歌詞に目を通すのも一興だ。★
ガイドコメント
世界を席巻するポップ・アイコン、“モンスター”ことレディー・ガガの、前作『ボーン・ディス・ウェイ』以来約2年半ぶりとなる4枚目のアルバム。リード・シングル「アプローズ」ほかを収録。
収録曲
01AURA
西部劇風の荒涼な雰囲気の下で「彼女を殺してトランクに入れた」という凄惨なフレーズで幕開け。ゼッドによるエスニックな旋律を走らせたエキゾチックなEDMで、謎めいたポップスターに会いたい?と問いかける。自らを信じることが最高のアートと言い切る姿が痛快。
02VENUS
仏プログレ・ディスコ・デュオ、ゾンビ・ゾンビによるサン・ラ「ロケット・ナンバー・9」のカヴァーを拝借。ベッドルームで新次元へ飛び立つのよと誘う、ガガらしい解釈のメイクラヴァーだ。アバあたりの彩色で描く、コズミックなディスコ・チューン。
03G.U.Y.
ゼッドとの共作によるファットなボトムがジリジリと這うシンセ・ハウス。女性上位を気取らなくても愛を支配できるのよと、メイクラヴを通して真実の愛のあり方を説く。絶頂の瞬間をとらえた風の“NEIN ZEDD!”の叫びが強烈な余韻をもたらす。
04SEXXX DREAMS
タイトルどおり昨夜あなたと“している”夢を見たのとベッドに誘う赤裸々なナンバー。物憂げながらも美しい旋律が、享楽的な快楽の儚さや虚しさを伝えるよう。最後に、こんな話をするのは酒のせいかしらと恥じるところが面白い。制作はDJホワイト・シャドウ。
05JEWELS N' DRUGS
ドラッグを、愛をちょうだいと、ねっとりしたヴォーカルでねだるガガの周りに、ワルなMCが群がる。T.I.はギャングスタを、トゥー・ショートは成熟なフロウを、トゥイスタは得意の高速ラップを披露。ストリート感満ちたダーティなヒップホップだ。
06MANICURE
クラップが走り、リズム&ブルースちらつくロッキンなサウンドに見合う、やさぐれた歌唱が印象的。女を飾るマニキュアは、男(Man)に癒されたい(Cured)印でもある。男は私のクスリで、癒しなのと言い切る、依存性の愛を欲する女性を描く。
07DO WHAT U WANT
“好きにすれば”と言い放つアンチ・ソング。ゴシップ記事の対象にはなってあげるけど心は渡さないといえば、R・ケリーは君の体をオレの好きにすると通常運転のエロ発言。ミッドR&B寄りだが、ロッキンなシャウトが効いた『アートポップ』からのシングル第2弾。
08ARTPOP
アルバムのタイトル曲。音楽という心を解き放つ存在がアートポップなんだと、ガガ流の信念を説く。アートという抽象的な概念に寄せてか、浮遊と気だるさを感じるムードが全編を支配する。激しくはないが、強い意志が伝わるナンバーだ。
09SWINE
“あんたはただのブタ野郎だ!”とさげすみ連呼する、ガガのシャウトが強烈。DJホワイト・シャドウによるバキバキのエレクトロ・ポップとともに、サディスティックな一面が露見する。下世話でアイロニーたっぷりのナンバーだ。
10DONATELLA
ゼッドによるエレクトロ・ダンス・トラックの後押しを受けて叫ばれるタイトル・コールは、有名ブランドのヴェルサーチのオーナーの名前。世界の流行を作り上げるデザイナーを褒め殺すようにも聞こえる、ガガならではのアイロニーがたっぷり。
11FASHION!
ジョルジョ・トゥインフォート、デヴィッド・ゲッタ、ウィル・アイ・アムが名を連ねるセレブリティな4つ打ちダンス・ポップ。世界の頂点にいる気分だわ! とシーンのリーダーとしての自負を見せる。洒脱さを優先したか、サウンドに詞世界ほどのギラギラ感はなし。
12MARY JANE HOLLAND
うねりのあるメロディで展開するミディアム・エレクトロ・ポップ。オランダのメアリー・ジェーンを紹介するというリリックだが、これはドラッグの暗喩か? レトロ・フューチャーなサウンドによるスペーシーなファンキー・ディスコだ。
13DOPE
過ちを懺悔するような粛々とした、ズシリと重い雰囲気に包まれたピアノ・バラード。クスリ以上にあなたが必要なのと、ハイな生活で大切なものを失った自身への後悔を語っていく。自身への怒りと嘆きを絞り出したような歌唱はまさにドープ。制作はリック・ルービン。
14GYPSY
ノスタルジックなピアノ・バラード風イントロから一気に開放的なアッパー・ハウスへと展開する、カントリー色も見え隠れするダンス・チューン。初期ガガ風のサウンドには盟友レッドワンが力を貸している。私は世界に故郷を持つ放浪者と、自身の境地をホットに叫ぶ。
15APPLAUSE
DJホワイト・シャドウ制作による、アルバム『アートポップ』の先行シングル。称賛こそが、喝采を浴びることこそが生き甲斐と、苦難を経てつかんだ自身の今の達成感を誇示する。80年代ニュー・ウェイヴ風フレーズも垣間見えるキャッチーなハイテンション・ポップだ。
16APPLAUSE
アルバム『アートポップ』のほとんどの楽曲に参画した、DJホワイト・シャドウによる先行シングル第1弾のリミックス。ゆったりと感じさせる導入からEDMを強調したデジタルなトラックへ。それでもガガのヴォーカルの存在感には圧倒される。
17APPLAUSE
ファンファーレのようなイントロで幕を開ける、アルバム『アートポップ』からの先行シングル第1弾の“ヴァイスロイ”リミックス。チキチキと刻むビートと陽気なレゲエのリズムが重なって、躁鬱を往来するようで面白い。新鮮なアプローチのトラックだ。
18APPLAUSE
オーストラリアのエレクトロ・ポップ・デュオ、エンパイア・オブ・ザ・サンによるリミックス。アルバム『アートポップ』からの第1弾先行シングルとなった原曲はハイテンションだが、ここでは彼ららしいキャッチーでサイケなアレンジとなっている。