ミニ・レビュー
イギリスのオーディション番組からデビューした男性5人組バンドによるサード・アルバム。端正な顔立ちでスタイルの良い英国男子たちが、懸命に恋をし、女の子にぶつかっていく様子を描いた曲を歌うなんて、ときめかないわけがない。でも、本作では成就することが少ない。心から幸せを祈る。
ガイドコメント
全世界トータル・セールス3,200万枚を超えるボーイズ・グループ、ワン・ダイレクションの通算3作目となるアルバム。3D映画『ワン・ダイレクション THIS IS US』のメイン・トラックとなるシングル「ベスト・ソング・エヴァー」ほかを収録。
収録曲
01BEST SONG EVER
メジャー1stシングル。歯切れ良いメロディとハイテンションなサウンドで心を虜にするロック・ナンバー。ザ・ローリング・ストーンズやザ・フーを彷彿とする王道のコード・ラインは母国イングランドの偉大なロックの影響をうかがわせる。
02STORY OF MY LIFE
ハリー・スタイルズの哀愁あるソロ・パートから始まるフォーク・ポップ・ナンバー。静謐で淡々としたアコースティック・サウンドではあるものの、洗練としたクリアな音像と聡明なハーモニーが、またとない充足感をもたらしてくれる。
03DIANA
今は亡きダイアナ王妃への思いが綴られたポップ・ナンバー。レトロ感のあるロック・サウンドの印象とは裏腹に、“君は僕のことを知らない でも君が泣いているのを感じる”とセンチメンタルな気持ちを伝える歌詞が、じんわりと胸に沁み入る。
04MIDNIGHT MEMORIES
4カウントから始まる正統派ギター・リフに、クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」に通じるダイナミックなリズムが興奮させてくれるロック・ナンバー。エネルギッシュかつパワフルな歌声が1Dらしさ全開で、エモーショナルなサウンドで牽引していく。
05YOU & I
メンバーの大半が20代を迎えた1Dの心の成長を垣間見るバラード・ナンバー。じっくりと恋愛関係を深めようとする大人な歌詞が、味わい深くじんわりと感動を呼ぶ。ゼイン・マリクの伸びやかなファルセット・ヴォイスも絶品だ。
06DON'T FORGET WHERE YOU BELONG
ナイル・ホーランと英バンド、マクフライのメンバーが共同で手がけたロック・バラード。懐の深いサウンドスケープが大自然のような雄大さ印象づける。“いつだって家に飛んで帰れるんだから”と生まれ育った故郷に思いを馳せる歌詞がなんともセンチメンタルだ。
07STRONG
大海原に漂流する船に恋人との愛の行方を重ねた、そのセンシティヴな歌詞が内省的な世界を映し出すミディアム・ナンバー。一人の男の弱さを吐露した歌詞と厚みのあるサウンドは憂いに満ちていて、アダルトな魅力を譲し出している。
08HAPPILY
バンジョーやマンドリンなど民族楽器が鳴らすオリエンタルな響きを配し、ポップな世界に招き入れたアップ・テンポ・ナンバー。生き生きとした張りのあるヴォーカルがなんとも爽快で、1Dの魅力をダイレクトに表現した楽曲だ。
09RIGHT NOW
米バンド、ワン・リパブリックのライアン・テダーが参加したミディアム・ポップ・チューン。これぞライアン節と呼べるドリーミンで美しいサウンドが空間いっぱいに広がる。“今この瞬間 すべてが新鮮なんだ”という歌詞から、絶好調な1Dの心境が伝わってくる。
10LITTLE BLACK DRESS
70年代ロック風のギター・カッティングが王道的で、懐かしくも新しいロック・チューン。意外性あるレトロなサウンドで席巻するも、伸びやかな歌声と上手くシンクロしており、1Dの音楽的フットワークの軽さを感じさせる。
11THROUGH THE DARK
アコースティック・ギターが奏でるハートウォームなストロークが安らぎを与えるカントリー風ポップ・ナンバー。徐々に盛り上がりをみせるサウンドも絶品で、メイン・パートを歌うゼイン・マリクのハイトーン・ヴォイスは鳥肌ものだ。
12SOMETHING GREAT
英バンド、スノウ・パトロールのゲイリー・ライトボディが参加したミディアム・ロック・ナンバー。浮遊感ある神秘的サウンドが北欧的で、広がりあるサウンドスケープを生み出している。ルイ・トムリンソンのヴォーカルと開放感あるコーラスワークが冴える。
13LITTLE WHITE LIES
イントロなしで5人のハーモニーから始まるダンス・ポップ・ナンバー。“もしこの部屋が火事になっても 僕は気づきもしない”と、好きな女の子に心酔するロマンティックな心情を詩的に表現した歌詞が色香を漂わせている。
14BETTER THAN WORDS
浮遊感のあるエレクトロなシンセ音とギターのカッティングが開放的な世界へと誘うロック・ナンバー。ためを効かせたバック・サウンドも、曲間に聴こえる口笛や息を吸い込むヴォイスもどこかルーズで、緩やかな時間の経過を感じることができる。
15WHY DON'T WE GO THERE
縦乗りのリズムとラウドなギター・サウンドがグリーン・デイ的オルタナ・パンクを想起させるアッパー・チューン。スピード感あるエネルギッシュなヴォイスに“夜はまだ始まったばかり”“一緒に行こう ドライブへ”という歌詞にもハイな気分にさせてくれる。
16DOES HE KNOW?
軽快で明るいロック・ビートと揺れる恋心を綴ったウェットな歌詞の対比が楽しいダンス・ポップ・ナンバー。心底で燃え上がるジェラシーを表わす歌声はメロウで爽快感を残す響きだ。開放感があるハーモニーも素敵な響きだ。
17ALIVE
ダイナミックなリズムと歯切れの良いギター・カッティングが80年代風ハードロック的な乾いた音像を生み出しているアッパー・チューン。“後ろを振り返らないで 自分の人生を生きるんだ”という歌詞は、猛進する1Dの生きざまを表わす。
18HALF A HEART
日本の原風景を想起させるような、アコースティックな旋律が切なくも懐かしいラヴ・ソング。“君がいないと心は半分空っぽ 心臓は半分しか脈を打たない”というリリカルな言葉が、深々とした愛情を巧みに表現している。
19ONE WAY OR ANOTHER (TEENAGE KICKS)
英国のチャリティ・イベント“Red Nose Day”の公式ソングとして発表された楽曲は、米バンド、ブロンディのカヴァー・ソング。1Dの楽曲としても新鮮な響きをもたらし、慈愛にあふれたハートウォーミングな歌詞が感動的。
20LITTLE THINGS
アコースティック・ギター一本で演奏される「リトル・シングス」のライヴ・ヴァージョン。メロディの持つ美しさや力強さが滲み出されていて、5人のハーモニーも感度良く響きわたる。観客の大歓声が臨場感にあふれ、ライヴの熱狂がリアルに伝わってくる。
21BEST SONG EVER
ダンス・プロデューサー、Kat Krazyが手がけた「ベスト・ソング・エヴァー」のクラブ・ミックス・ヴァージョン。近未来をイメージするエレクトロなアレンジがスタイリッシュで、空間に飛び交うファニーなシンセ・トーンが楽曲の世界に上手く溶け込んでいる。