ミニ・レビュー
RADWIMPSの7枚目のアルバム。人生は“○×ゲーム”のように答えが二択で絞られることって少ないし、神は、神頼みをする時たまに登場するぐらいで、罰を与えるほど私たちにとって近しい存在ではないんじゃないか。言葉の連なりによって、最後に信じられるのは自分という存在だと気づかされる。
ガイドコメント
前作『絶体絶命』より約2年9ヵ月ぶり、2013年12月11日リリースの7thアルバム。言葉とサウンドにますます磨きがかかり、バンドとして脂の乗ったRADWIMPSによる、進化と深化を遂げた一枚となっている。
収録曲
01いえない
ゆるやかな風が吹き抜けるような穏やかなバンド・サウンドのなかで送り出す愛のメッセージ。僕への情熱が冷めていくのを味わうくらいなら、今君が死んでもかまわないというヒネた感情が彼ららしい。葛藤から別れへ……その推移をサラリと歌うのも秀逸。
02実況中継
「DADA」をもっとズルズルと引きずったような、駄々っ子口調で滑っていくサビが強烈。天空から高みの見物で人間の所業を神様と仏様が実況・解説する設定だが、いつのまにか神と仏が喧嘩し始めて……。息も吐かせぬリズムで展開するシニカルなアッパー・ロックだ。
03アイアンバイブル
鍵盤の跳ねた軽快なリズムと明るいバンド・サウンドで展開するポップ・チューン。ジャズっぽいところもあり、ラグタイムな感じもうかがえる。汚れた今に住む者から、次世代は愛すべき世界にしてほしいと託すメッセージ・ソングだ。
04リユニオン
フォーキーなギターをバックにした“ダララッタ〜”というゆるラップ調のリズムで描く、友達へのメッセージ。友達の意味なんか知らないとうそぶくあたりが彼ららしいが、その熱意や想いは優しい曲質とは対照的に強固なものだ。
05DARMA GRAND PRIX
グルーヴィなギターが先導するファンキーな展開が身体を揺らすアッパー・ロック。人生を賞レースにたとえて、この世は“だるまさんが転んだ”のように最後まで残った者が勝者なのかと問う。混沌から脱出するべく、サウンドもハイテンションで駆け抜ける。
06五月の蝿
刺激的な言葉選びと衝撃的な結末で話題となった16thシングル。畳みかけるような“僕は君を許さない”のリフレインや終盤の娘から母への叱責が強烈。愛憎は紙一重ということを、生々しく描き出すロック・チューンだ。
07最後の晩餐
グローバルな視点よりもミクロな日常を育てたい……混沌な世の中だからこそ当たり前や身近を大事にしたいと語る。フォーキーな曲風で展開するメッセージ・ソングだが、とっくに終わってると言い放つラストが彼らの真骨頂だ。
08夕霧
アルバム『×と○と罪と』に収録された、約1分40秒のインストゥルメンタル・トラック。穏やかな鍵盤とぬくもりある木琴が、タイトルのような美しい自然の原風景を醸し出す。ホッと一息ついた夕暮れ時の印象を強く残す。
09ブレス
たおやかにゆるやかに流れる鍵盤に寄り添って語られるのは、失恋の哀しみに暮れた彼女への愛のメッセージ。触れたら壊れそうで、触れなきゃ崩れそうな彼女をそっと包み込む無垢な歌唱は、どこまでもロマンティックで優しい。
10パーフェクトベイビー
軽快なレゲエ風のバックビートを走らせた陽気なサウンドに乗せ、僕の大切な君=“パーフェクトベイビー”について歌う。独り言のようなつらつらとしたヴォーカル・ワークが、このさりげない多幸なムードにフィットしている。
11ドリーマーズ・ハイ
温かみのあるリズミカルなギター・リフに背中を押されるように、さまざまな夢の形について語り出す。颯爽と駆け抜けるロック・サウンドだが、テーマは平和で愛にあふれた世界の希求。シンプルだが奥深いコンシャスな15thシングル。
12会心の一撃
キリキリと鳴り出すギターとアッパー・ビートとともに、“〜的”という言葉を繰り出す。さまざまな価値観、別の視点で考えれば未来も変わって見える……求める世界や未来は、時に背中合わせだと一気に歌い尽くす。性急なギター・リフの勢いに乗せられる青春ロック曲。
13Tummy
タイトルは“おなか”の幼児語“ぽんぽん”の意。愛する人のおなかから誕生した子へ、新しい世界への歓迎と胎内で過ごせたことへのちょっとした嫉妬を吐露。レゲエ調ビートやスティールパンによるのどかで暖色のムードが、安らぎと微笑み、隠しきれない喜びを伝える。
14ラストバージン
永遠の愛を二人の会話から描いた16thシングル。“最初で最後”の君に、あなたの当たり前の日常になりたいと言われて至極の愛を感じるラヴ・ソングだ。過不足ないシンプルなサウンドと優しく撫でるような歌唱が、実に温かく胸に響く。ウェディング・ソングにも最適。
15針と棘
音数が少ないゆったりとした鍵盤や繊細な歌唱&ファルセットが幻想的な空間を創り出す、ポスト・モダン/エレクトロニカ的なアプローチも見せる雄大な曲。人を傷つけてばかりのあなたに、言葉の針と心の棘を抜いて、奥底に潜む本来の優しさを見せてほしいと語りかける。