ミニ・レビュー
オープニングからその音のまぶしさが感動的すぎて、完全復活のファンファーレがずっと鳴り続いているかのよう。約13年ぶり、通算8枚目のオリジナル・アルバムには“遺書”というタイトルが付けられたが、それほどの自信作なのだろう。メンバーそれぞれの閃きに満ちた、躍動性あふれる一枚だ。★
ガイドコメント
『LUNACY』から約13年5ヵ月ぶり、2013年12月11日リリースのアルバム。「Rouge」「The End of the Dream」「Thoughts」「乱」といったシングルを含む、全11曲を収録。過去と未来をつなぐ渾身の一枚だ。
収録曲
01Anthem of Light
一筋の光が差し込んでくるようなシンセ音に始まり、そこからポジティヴなエネルギーが爆発するドラマティックなナンバー。“君と行こう さあ届けよう 掛け替えのない その想いを”と届けられる歌詞は、長い間復活待ち続けたファンへ向けられたラヴ・ソングだ。
02Rouge
ロカビリーを彷彿とさせるギター・リフに始まり、そこから重たくうねるグルーヴが絡まるアッパー・チューン。2012年12月リリースの両A面16thシングルは、楽器隊が暴れまくるサウンドの真ん中で、クールでセクシーな歌声が強烈な存在感をもたらす。
03The End of the Dream
両A面となった16thシングルの一曲。“The End of the Dream 終わらない この夢に”と高らかに歌い、高密度のサウンドで攻めるロック・ナンバーは、バンド然とした佇まいも感じ、再始動後のさらなる進化をうかがわせる。
04MARIA
切ない歌詞とメロディが印象に残るミディアム・ナンバー。奏でられる音の一つ一つにストーリーがあり、プレイヤーとしての円熟を感じることができる。シンフォニックで荘厳な輝きを放つサウンドは、LUNA SEAのパブリック・イメージを象徴している。
05Glowing
LUNA SEAとしては新感覚の響きがあるブルージィなロック・ナンバー。けだるいテンポの中でマグマのように煮えたぎるグルーヴの波状が、圧倒的な熱量で心の奥に注ぎこまれていく。タメが効いた音がカッコ良く、百戦錬磨のライヴ・バンドの余裕を感じさる。
06乱
テレビ朝日系ドラマ『都市伝説の女』オープニング・テーマ起用の18thシングル。シングル・ヴァージョンとは異なり、激しいドラミングから始まるイントロを追加。キャッチーでメロディ・センスが光るポップ・チューンだ。
07absorb
幻想的なオルゴール音から始まるかと思えば、目が覚めるような変拍子の骨太なグルーヴで襲いかかってくる。壮大なテーマで描かれた歌詞とそれに誘導されるグルーヴの渦は、聴けば聴くほどにその圧倒的な存在感の中に支配されていく。
08Metamorphosis
バンド初期を彷彿とさせるアップ・テンポなナンバー。スラッシュ・メタルばりのヘヴィなリフ、高速ドラミング、終盤のヴォーカルのシャウトなど聴きどころ満載。プログレ調の複雑な展開にしても、一筋縄ではいかないバンドの特徴が表われている。
09銀ノ月
儚い詞世界と強い哀愁が漂うサウンドで彩られた、バンドの真骨頂ともいえるミディアム・バラード。この5人でしか表現しえない緊張感と解放感のバランスが実に絶妙で、奇跡的とすら感じてしまう。間奏で聴くことができるヴァイオリン・フレーズは泣ける。
10Thoughts
2013年8月発表の17thシングル。90年代リスナーにはどこか懐かしい雰囲気を感じるが、アップグレードされたサウンドには新たな発見があり、バンドの過去と今が凝縮されたロック・チューンだ。シューゲイザーを匂わせるギター・サウンドが良いスパイスに。
11Grace
淡々としたトーンから徐々に熱を帯びていくセンシティヴな歌声とサウンドに、胸が締めつけらるほどの感動が味わえる圧巻のバラード。“見つけられたよ 探してた 空を”と締めくくられる歌詞の先には、確かな希望を感じることができる。