ミニ・レビュー
「恋するフォーチュンクッキー」をはじめとする大ヒット・シングル、そして書き下ろし曲からなる2枚組の5作目。王道のアイドル・ポップといった佳曲、好曲が続く。初期メンバーの卒業が続いたりと世代交代が進む中、アイドル・シーンのトップとしての自負が瑞々しく息づいている。
ガイドコメント
2014年1月22日リリースの5thアルバム。「真夏のSounds good !」「ギンガムチェック」「UZA」「永遠プレッシャー」「So long !」「さよならクロール」「恋するフォーチュンクッキー」など、ヒット曲満載の全25曲を収録。
収録曲
[Disc 1]
01恋するフォーチュンクッキー
第5回AKB48選抜総選挙によって指原莉乃がセンターを務めた32枚目のシングル。ディスコ/ソウル歌謡ど真ん中といった作りのポップ・チューンで、“知らぬ間にリズムに合わせ”て動き出してしまうようなキャッチーなサウンド&メロディが魅力。
02LOVE修行
石井亮輔が作曲を手がけた4つ打ちで突き進むディスコ・ポップ・チューン。恋に落ちることで訪れる試練とそれを乗り越えていく強い想いを描いており、語感のいいタイトルのフレーズはさすが秋元康。野中“まさ”雄一のファンキーなアレンジも効いている。
03さよならクロール
31stシングルは渡辺和紀のペンによるアッパーかつちょっぴり切ないテッパンのサマー・チューン。夏、海、恋と直球な舞台装置をふんだんに取り入れつつ、“うまく泳げない”ことを中心とした胸キュンなストーリーに引き込まれる。
04強い花
研究生による3拍子のワルツ調のナンバー。中世ヨーロッパの舞踏会を思わせるサウンドをバックに紡がれるのは、まるで童話のような花売りの少女の物語。いくら苦しくても萎れた花は売らない、信念を貫く少女に研究生たちの想いが重なるよう。
05あの日の風鈴
総勢171人からなる“ウェイティングガールズ”名義でのミディアム・バラード。夏休みに訪れる“田舎のおじいちゃん家”を舞台にした物語にピッタリの、素朴なサウンドが心に染みる。風鈴の音色を呼び水に、フラッシュバックする豊かな風景が目に浮かぶようだ。
06永遠プレッシャー
“29thシングル選抜じゃんけん大会”上位16名によるUHA味覚糖「ぷっちょ×AKB48」CMソング。キュートなテイストのアップ・チューンだが、“理想の彼女”へのプレッシャーを綴った歌詞は、センターを勝ち取った島崎遥香の胸の内を描いているようだ。
07青空カフェ
AKBグループ研究生選抜の16人による正統派アイドル・ポップ。クラスメイトにばれないように、回り道をしながら青空の下で飲む缶コーヒー。“青空カフェ”を舞台にした甘酸っぱい恋物語にピッタリのフレッシュな歌唱が清清しい。
08UZA
アサヒ飲料「WONDA モーニングショット」CMソングの28thシングルは、バッキバキのプログレッシヴ・ハウス・サウンドでまとめたダンス・チューン。“ウザい”を文字ったタイトルのとおり、じれったい愛を壊す強気な言葉が並ぶ。
09君のために僕は…
“君のために僕は死ねる”という強烈なサビが印象的なアップ・チューン。宮島律子のシリアスなメロディに、大切な人への究極の愛を描いた秋元康の歌詞、そして野中“まさ”雄一のスリリングなアレンジがピッタリとハマって独自の世界を作り出している。
10私たちのReason
アニソンへの提供も多い俊龍の手による高BPMのドラマティックなポップ・チューン。“なぜ好きになったの?”“なぜ私だったの?”と、恋に落ちたがゆえのいくつもの“なぜ”と不安を抱えつつ、胸が躍る不安定な心情を描いた歌詞を表現しきる歌唱が秀逸。
11So long !
メンバーが出演する日本テレビ系ドラマの主題歌となった30枚目のシングル。学校を舞台に、数々の思い出と別れを描いた王道ともいえる桜ソング。ほぼア・カペラで歌う“ラララ……”のフレーズ、そこから美しいコーラスとともに迎えるラストは感動的だ。
12ギンガムチェック
“いい曲だなあ… AKBっぽいね”のキャッチフレーズのとおり、爽やかさにちょっぴり切なさを潜ませた、AKBの王道といえるアップ・テンポのサマー・チューン。ギンガムチェックの柄を、恋に迷う心情に見立てた“秋元康節”も健在だ。
13真夏のSounds good!
「Everyday、カチューシャ」と同じく井上ヨシマサが作/編曲を手がけたサマー・チューン。真夏のビーチを舞台に、“次のステップ”へ進む二人のキラキラとした恋物語が展開。一度聴いたら耳を掴まれるキャッチーなサビの破壊力は抜群だ。
14大人への道
研究生19名による感動的なバラード。別れを告げる駅のホームを舞台に、長く険しい“大人への道”を大きな希望とともに生きていくんだ、と決意する。複雑なコーラス・ワークなどは用いず、ユニゾンのメロディだけというまっすぐなアレンジと歌唱が胸に刺さる。
[Disc 2]
01スマイル神隠し
研究生たちからなるユニット、“てんとうむしChu!”による大江戸温泉物語CMソング。不思議な単語の取り合わせによる意味深なタイトルは、想いを寄せる彼の目を惹くためのキュートないたずら。爽やかなサウンドとともに、甘酸っぱい恋物語が胸に迫る。
02他人行儀なSunset beach
渡辺美優紀、多田愛佳ら4人による歌唱で、「ハート型ウイルス」を思わせるエレキ・ギターを中心とした歌謡曲ベースのナンバー。江ノ島や湘南を舞台にした切ないラヴ・ストーリーを描いた歌詞の世界もサウンドにピッタリで、秋元康お得意の世界観だ。
03ハステとワステ
川栄李奈をセンターに据えた“BKA48”によるナンバー。歌詞にもあるが、タイトルは川栄による“Haste makes waste(急がば回れ)”の衝撃的な誤訳から。キュートなサウンドに乗せ歌われる“バカ”エピソードの数々に笑わされる。
04わたし リーフ
入山杏奈、川栄李奈、加藤玲奈、松井珠理奈によるエレクトロ・ポップ・チューン。恋や将来を考えゆらゆらと漂う自らの心境を“リーフ”にたとえ、悩みながらも“どこへだっていける”んだと前向きに捉える。4つ打ちのビートを軸に、浮遊感のあるサウンドが心地よい。
05Stoicな美学
4つ打ちで進むビートに、隠し味程度にアジアン・テイストなアクセントを施した 渡辺麻友、市川美織ら参加のポップ・チューン。ソファで眠る君にキスをせずに部屋を出て行く“Stoicな美学”を描いたちょっぴり大人な歌詞を歌い上げる。
06ぽんこつブルース
テレビ東京系ドラマ『マジすか学園3』オープニング・テーマで、作品の世界観にもぴったりと合うCKB「タイガー&ドラゴン」的なハードボイルドで色気ムンムンなナンバー。ベタでダサカッコいいアレンジで、巻き舌やタメを利かせたヴォーカルも楽しい。
07イチニノサン
緊張感あふれるピアノのリフで幕を開けるアップ・テンポなナンバー。真夏のビーチを舞台に情熱的な恋を描いた歌詞は、ちょっぴりラテンのテイストを含んだサウンドにピッタリ。セクシーかつ挑発的な歌唱にドキドキさせられる。
08共犯者
吉富小百合が作曲を手がけた大島チームKのナンバー。快晴のベンチに座り“雨が降っても槍が降っても君への想いは変わらない”と言った直後、どしゃ降りの雨。行きがかり上、席を離れるわけにはいかず……という特殊なシチュエーションがユニーク。
09動機
テレビ東京系ドラマ『マジすか学園3』エンディング・テーマは、主役を務めた島崎遥香のソロ・ナンバー。ピアノを中心にした重ためのバラードで、若き二人の駆け落ちを描いた歌詞の世界観も含めて70年代な雰囲気満載。悲しげな歌声もたまらない。
10悲しき近距離恋愛
カラフルなサウンドに乗せてクラスメイトへの恋を描いた、梅田チームBによるピュアなラヴ・ソング。好きなのに言い出せないまま、近づいてくるタイムリミット。“遠くにいるなら楽だった”という、“近距離”ならではの悩みが切なく響く。
11夢の河
前田敦子の卒業ソングで、1期生を中心とした10人が歌い上げる感動的なバラード。AKBの未来を象徴するような渡辺麻友、松井珠理奈の参加も印象的で、それぞれの噛み締めるような歌唱、そしてラストの“夢が叶ったら迎えに来るよ”というフレーズが胸に響く。