ミニ・レビュー
NHK朝ドラ『ごちそうさん』の主題歌「雨のち晴レルヤ」などタイアップ8曲を含む内容ではあるが、楽曲が商業的になることはなく、むしろサウンド面で果敢に新たな扉を開こうとトライする姿勢が窺える。前山田健一との邂逅も痛快だし、全編で進化するフォークを提示してみせた12枚目のアルバム。
ガイドコメント
2014年2月19日リリースの12thアルバム。NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲「友 〜旅立ちの時〜」、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』主題歌「雨のち晴レルヤ」ほか「守ってあげたい」「表裏一体」「ヒカレ」など、話題曲が満載。
収録曲
01ヒカレ
“懐か新しい”をテーマにした41枚目のシングル。輝くために未来へ行こうというポジティヴな詞とストリングスの華麗な音色が冴える壮大なサウンドが絶妙にマッチ。中盤のハーモニーも開放感があって心地よい。日本生命CMソング第3弾。
02雨のち晴レルヤ
NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』主題歌としても多くの人に親しまれた39thシングル。童謡のようなどこか懐かしいメロディは、思わず口ずさみたくなる。「遠き山に日は落ちて」のメロディの一部を間奏に取り入れたポップ・ソングだ。
03よろこびのうた
蔦谷好位置との共同プロデュースによる、心温まるミディアム・チューン。素朴なアコースティック・ギターと優しいストリングスの音色に癒され、二人の美しいハーモニーに心が浄化されるようだ。フジテレビ系ドラマ『僕のいた時間』挿入歌。
04ユートピア
前山田健一との共同プロデュースによるにぎやかなナンバー。祭囃子のようなイントロにはじまり、ヴォコーダーのような変声を使ったEDM風な部分に変化。さらに民俗音楽を取り入れた4つ打ちへと展開する曲調がユーモラスだ。
05表裏一体
『HUNTER×HUNTER』の劇場版とTVアニメ、それぞれの主題歌に起用された40thシングル。前山田健一との共同プロデュースによる爽快なメロディのポップ・チューンで、光か闇か、愛か憎しみか、二つの重なる未来について歌っている。
06素顔のままで
フジテレビ系ドラマ『僕のいた時間』イメージ・ソングとなった、蔦谷好位置との共同プロデュースによる穏やかなミディアム・ポップ・チューン。サビの力強いコーラスに感動を覚える、ありのままで良いというメッセージが詰まった一曲だ。
07幸せの定義
岩沢厚治が詞曲を手がけた、のどかなメロディが心地よいフォーキーなナンバー。音の出ていないテレビを見るのが好き、という何気ない日常のなかのちょっとした幸せのようなエピソードを多数盛り込んだ歌詞に癒される。
08Ultra Lover Soul
玉屋2060%(Wienners)との共同アレンジによるナンバー。彼らがデビュー前に路上ライヴをやっていた伊勢佐木町をテーマに、大人の色香漂うストーリーを展開。恋に生きたい男の子の欲望と苦悩の先にあるオチも秀逸だ。
09レトロフューチャー
フォーキーなポップ・サウンドを基軸としているゆずには珍しい、スペイシーな4つ打ちのロック・チューン。ヴォコーダーを使ったバキバキのヴォーカルにシビれる、エモーショナルなミクスチャー・ロックを展開している。
10Interlude〜Old New World〜
アルバム『新世界』の後半に差し込まれたインタールード。ミクスチャー・ロックを全面に押し出した前曲「レトロフューチャー」のメロディはそのままに、ハープやストリングスを取り入れた優雅なインスト・トラックだ。ゴシックな雰囲気が漂う。
11ひだまり
前向きでスッキリとした歌詞と思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディが心地よい。いつまでも色褪せないポップ・ソングに仕上がっている。映画『銀の匙 Silver Spoon』主題歌および本人出演の「ヨコハマタイヤ」CMソング。
12所沢
元気いっぱいの二人のハーモニーが心底楽しそうな、フォーキーで朗らかなポップ・チューン。特定の誰かに何か言いたくても言えない状況をつらつらと綴った詞がユニークだ。まったく意味なく付けたというタイトルや路上時代の青臭さが印象的。
13守ってあげたい
映画『すべては君に逢えたから』主題歌に起用された39thシングル。ゴージャスなストリングスの音色とゆずの二人+大勢のコーラスで歌われるゴスペル風の壮大な展開は感動的。情感を込めた二人のハーモニーもエモーショナルなバラードだ。
14四間道路
アコースティック・ギターの弾き語りとシンプルなピアノ演奏に早口のように聞こえる音数の少ないメロディを乗せた、フォーキーで切ないナンバー。どこか懐かしさを感じるハーモニカの音色も切なさに拍車をかける。
15友〜旅立ちの時〜
NHK『みんなのうた』に起用された38枚目のシングル。ピアノを基軸としたアコースティックなサウンドに乗せて、友情の美しさをストレートに歌っている。穏やかで熱意あふれる二人のヴォーカルに胸を打たれるナンバーだ。