ガイドコメント
EDMシーンの孤高のサウンドクリエイターによる1stアルバム。ラガ、ヒップホップ、ドラムンベースなどの要素を緻密に構築。「トライ・イット・アウト」のほか、ファットマン・スクープやチャンス・ザ・ラッパーら多くのゲストを迎えた新機軸な一枚。
収録曲
01ALL IS FAIR IN LOVE AND BROSTEP
航空管制官と操縦士との会話を随所に差し込みながら展開するブロステップ。ラガ・ツインズを起用して、ラガの下半身に響く太さといい意味での“緩さ”を硬質でソリッドなトラックに注入。あらためてブロステップ路線へ回帰したという意味で重要な一曲だ。
02RECESS
アルバム・タイトルを冠したリード曲。レゲトン・ビートをかましながら、ファットマン・スクープの暑苦しくも感じる煽情的なフロウで興奮を高めていく。ヒップホップ・ミーツ・ブロステップ的なキラー・チューンだ。キル・ザ・ノイズ、マイケル・アンジェラコスも客演。
03STRANGER
メロディアスなヴォーカル・ラインにトランス風、金切り声にも似た金属的な高音、スクリュー風演出による野生的なサウンドなどが次々と接触するブロステップ・ナンバー。音の色彩感が変化していく展開は、異邦人(=ストレンジャー)として世界を旅していくかのようだ。
04TRY IT OUT
アルヴィン・リスクをフィーチャーした、アルバム『リセス』の先行シングル。スクリレックスらしい暴発的なレーザー・サウンドを駆使したダブステップ/ブロステップ・ナンバーで、スクリューやエフェクト・ヴォーカルとともに近未来的なダンス・ミュージックを構築。
05COAST IS CLEAR
シカゴ出身の新世代ラッパー、チャンス・ザ・ラッパーを迎えた、ダブステップ寄りのダンス・チューン。ドラムンベースと90年代以降のジャズっぽいダンス・トラックを絡めた、スクリレックスとしては新機軸となるサウンドといえる。
06DIRTY VIBE
BIGBANGのG-DRAGON、2NE1のCLというK-POP勢を招いたトラップ風のトラックで、プロデューサーのディプロの影響が強くうかがえるフューチャリスティックR&B的なアプローチが新鮮。ニッキー・ミナージュ作風にも似たワイルドな楽曲だ。
07RAGGA BOMB
「オール・イズ・フェア・イン・ラヴ・アンド・ブロステップ」同様にラガ・ツインズを起用したラガ色を強調したダブステップ。野太く粗っぽいヴォーカルが硬質なエレクトロ・サウンドと交差を繰り返しながら、興奮を高めていく。
08DOOMPY POOMP
タイトルからも、拍子抜けするような滑稽なビートや効果音などからも、ちょっと天然系で愛らしさすら感じさせるトラック。冒頭からのっぺりとしたスクリュー・ヴォイスで、“ブロステップの雄”らしい面影は皆無。その意味でスクリレックスの幅広さを感じる一曲だ。
09FUCK THAT
エレクトロなヒップホップとニューウェイヴをミックスさせたような80年代マナーのビートで展開するダーク・テイストのナンバー。従来の明快なブロステップ路線とは異質な、マニアックでアヴァンギャルドなアプローチが印象的だ。
10EASE MY MIND
スウェーデンのエレクトロ・ポップ・バンド、ニキ・アンド・ザ・ドーヴをフィーチャーしたブロステップ・ナンバー。哀しみを携えたようなマリン・ダールストロムのヴォーカルとそれに寄り添うメロディアスな美旋律が、激しいビートに侵食されながら恍惚を生む。
11FIRE AWAY
静寂と幻想を醸し出すチルアウト・ダブステップ(=チルステップ)で演出するスクリレックスの新境地。ソウルフルな白人シンガー、キッド・ハーブーンのヴォーカルをカットアップしながらメロディアスなアンビエント空間を創出している。